7-2
フユハが戦利品をテーブルに広げると、フランシスが我先にと食いついた。
「コレ! コレ頂戴!!」
いかにもクセのある魔女が被っていそうな先の尖った帽子を被り、フランシスは上機嫌でポーズを決めた。
「あの……それ……呪われてます」
「──ふぁっ!?」
慌てて帽子を引っ張るが、まるで頭皮に張り付いたかの如く、外れる気配が無い。
「えっ!? ちょっと! マジ!? マジなの!?」
リゼリアとマニエルが帽子の先を掴んで引っ張る。
「いでででで!! もげる!! もげるー!!!!」
二人が手を離すとフランシスは椅子に勢い良く飛び、そのまま地面に落ちた。
「ちょっとフユハ! なんとかしなさいよ!!」
「呪いは直ぐに解けますが、その代わりその帽子は消滅します」
「ちょいタンマ!!」
フランシスは席を立ち、そのまま歩き始めた。
「ちょっとコレ被ったまま散歩してくる。そしたら呪いを解いてちょ」
フランシスが大通りを歩いていると、エルとすれ違った。
「おろ? そんな物被ってるから気が付かなかったが、ちんちくりんじゃねーか」
「誰がちんちくりんよ! やかましいわね!!」
「そう怒るな。それより、それって『呪術師の帽子』じゃねーか?」
「良く分からないまま被ったんだけど、呪いがあるなんて知ってたら被らなかったよ!!」
「まあ、気持ちはわかるよ。見た目だけは格好良いからな、それ」
「で、この帽子は使えるの? 使えないの?」
「【呪文ダメージ二倍】の優秀な装備品だ…………【被呪文ダメージ三倍】のおまけ付きだけどな!」
「──なっ!!」
「もやしっ子には下級呪文すら即死級に早変わりだ! お互いにな!!」
「アホー!!」
──バチーン!!
「いでぇ!!」
往来で平手打ちを受けたエルは目を見開いて頬を押さえた。しかし既にフランシスは走り去っており、エルはやり場のない怒りをぶつける先が見付からなかった。
フユハの戦利品の披露が終わり、それぞれが帰路に着く。フユハは戦利品を換金するために武具屋へと向かった。
「全部で1735G、おまけで1800Gにしとくよ」
「ありがとうございます」
フユハは店を後にし、家へと向かった。
家の前に着くと、玄関先で小さな紐状の物体を見付けた。
「──!」
それは死んだ小さな蛇だった。頭が潰されており、口からは舌が飛び出ている。
「可哀相に……」
その小さな蛇を手に包むと、まだ微かに温かく、血も乾いておらず、どうやら息絶えて間もない様子であった。
「…………」
フユハは一瞬の躊躇いを持ちつつも、その右手を蛇の頭へと乗せた。
祈りを捧げるフユハ。それは天に召された蛇の魂へと問い掛ける祈りだ。
囁くように言葉を紡ぐフユハ。それは詠唱前の清めの言葉である。
詠唱を始めるフユハ。魂の帰還と肉体の復活を遂げるための呪文だ。
そしてフユハは強く念じた!! 死した者の帰還を願う、最後の仕上げである。
「……」
「…………だめ……?」
──カサッ
「──!!」
フユハの手の中で蛇が動いた。
見に手を外すと、そこには舌をチロチロと出し入れして頭を元気に動かす蛇が居た。
「良かったぁ……!」
フユハは胸を撫で下ろし、そっと蛇を逃がしてあげた。蛇が茂みへと入ると小さく手を振り、家の中へと入っていった。
「──ふふ、おかえり。どうだった? 死に心地は……」
茂みの向こう。チャイナドレスの女が小さな蛇を摘まみながら語りかけた。
「まさか蘇生呪文が使えるほどに成長するなんてねぇ……クククク」
小さな蛇はチャイナドレスのスリットへと潜り込み、チャイナドレスの女はそのまま消えるように居なくなった…………。




