束の間の茶会 ~リゼリアの記憶~
彼女が生まれた時、皆が嬉しそうな顔をしていた。
「あのじゃじゃ馬が娘を産むなんてねぇ……」
生まれたばかりのしわくちゃの手を、シスターリースが指で軽く弾いた。
「…………けど、やっぱり親に似て魔力の波動を感じねぇな」
生まれるまで起きていたのか、目の下に見事なクマを作ったエルフが無精髭を撫でて言った。
「手を見ても魔力線が見事に無い。こりゃ脳筋確定だな」
しわくちゃの掌をこねくり回し、無精髭は大きく欠伸をした。
「でも魔道士たる特徴的なつむじもあるから、オイラは案外期待できると思うな」
「おいおい、エルフ族に伝わる手相占いをコケにするってのかい?」
「君こそ、妖精族に伝わるつむじ占いを馬鹿にするってのかい?」
「はいはいケンカしないケンカしない。二人とも石にして放り出すからね?」
「オイラが悪かった」
「俺が悪かった」
大人しくなった二人をケラケラと笑い、シスターリースはしわくちゃの赤子をジッと見つめた。
「どっちに進んでも良いように、残せるものは遺して行かないと……ね」
──しわくちゃが大きくなると、シスターリースは歩くことすら少なくなった。椅子に揺られ、ひたすらにノートに何かを書いている事が多くなった。
「おばあちゃん……」
「ん? なんだい?」
「何を書いているの?」
「愚痴……かな?」
「?」
「いいかいリゼリア。私が死んだらあの二人を頼んだよ。飲んだくれのだらしない二人だから、しっかり見張っていておくれよ?」
「分かった♪」
酔い潰れ、暖炉の前で大の字になって寝ているエルフとフェアリーを横目に、シスターリースは夜遅くまでノートに何かを綴り続けた。




