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5-8

 岩壁の隙間からは、一際冷たい風が吹き出しており、その間際では染み出る水が凍り付き、時折大きな塊となっていた。


「冷たい氷の傍に生える【氷結草】の球根とやらが、今回のターゲットらしいんだけれど……」


 冷窟の入口間際をくまなく探すが、それらしい物は見当たらず、四人は更に奥を目指すことにした。


「この風はダンジョン自体から吹いているのですか?」


「それもあるけれど、地下二階の奥が外に繋がっているのも大きいね。この辺は実は標高が高いんだよ」


 四人が奥を目指すと、岩壁の隙間にキラキラと光沢のある金属片を発見した。


「ん?」


 リゼリアが注意深く観察しようと近付いた。


 しかしそれは思ってもみない動きで四人を出迎えた──!


「シュゥゥゥ!!」


 岩壁の隙間から突如金属片が飛び出し、リゼリアの顔面目掛け向かってきた。リゼリアは咄嗟に手でガード。金属片はリゼリアの手に当たり、そのまま地面へと落ちた。


「何これ?」


「気を付けて! ソレ魔物だよ!!」


 伸ばした手はフェリーの声で止まり、バッと、引っ込められた。


 見た目には丸い、メダルのような金属片であったが、それはまるで二枚貝が水中で水を吐き出し、海底を進むような滑らかな動きで、地面をするりと進んで何処かへと消えていった。


「……あれ魔物なの?」


「グリーピングメダルと呼ばれる雑魚敵で、基本は殆ど無害なんだけど、時折気持ち悪い吐息を吐くから気を付けて」


「変なの」


 涼風の冷窟の一階は、妙に物音が少なく、四人の足音だけが響いていた。入口で見掛けたゴブリン以外は好戦的な魔物も居らず、目的の物も無いまま、四人は地下二階へと差し掛かった。


 地下二階は更に風が強くなり、ローブが強く(なび)いた。岩壁の隙間に出来た氷の塊の中に虫や石が見え、その場にある物は手当たり次第に凍り付かされる感じがした。


「ちょっと、この風の中を探すの?」


 気を抜くと小柄なフランシスの体が宙に浮きそうな程に吹いた風は、四人の歩みを遅くさせ、魔物達がエサを狙うには恰好の的となっていた。


 しかし、四人の中で風を気にせず身軽に動ける者が居た。


「私が前を行きますね」


 それはマニエルであった。ローブすら身に着けず、バニーガールのウサ耳が強く靡いてはいたが、本人は風にびくともせずにキビキビと歩いていた。


「さすが肉壁(ポッチャリ)! ふざけた姿の割にやるじゃない!?」


「私も前金で良い物を貰いましたから……」


 マニエルが足下の赤いハイヒールを指差した。


「なにそれ……唯のハイヒールじゃない」


 しかし、フランシスの言う通り、見た目には唯のハイヒールにしか見えなかった。


 だが、そのハイヒールには『地形効果半減』『オートマッピング』の効果が付加されており、如何なる悪地形でも難無く進める優れ物なのであった。


(物で渡した前金に差があるなんて、口が裂けても言えないや……)


 フランシスとマニエルの会話を聞いたフェリーは、ポケットの中でちょっとした罪悪感を感じたが、物置と化したエルの家から四人が使えそうな物を見付けるのはかなりの重労働だった。故に、見付けだした傍から手渡した物の中には優劣が()()あることは感じつつも、まあいいやと、許容していた。


「──ゴブッ!!」

「──ゴブブッ!!」


 風に紛れて四人を襲おうとしていたゴブリン達は次々とマニエルの(トレイ)の錆となり、マニエルの後ろを歩く三人はそれぞれがマニエルの行く末を心配そうに見つめていた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] これぞマニエル無双! [一言] 幻想しいたけワールドでtrpgできたら盛り上がりそうです
[一言] バニーが最強である所に名作感があります、結局勇者の装備よりも強いというオチを以前見た事がありますし、世界の創造者の意思とはそういうものなんでしょう。
2020/10/03 20:51 退会済み
管理
[一言] マニエルがどんどん凄くなってるけど、最早白魔導士ではないなwww
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