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5-7

「なんだゴブリンか……」


 リゼリアの緊張感が弱まった。しかしそれは油断であり過信でもあった。


「──ゴブッ!!」



 ゴブリンが身を屈め、素早い小走りでリゼリアの真横から脇腹へと爪を薙いだ!


「早い!?」


 リゼリアは間一髪それを躱すが、緩んだ緊張感はそう直ぐには戻らない。二匹目が死角からリゼリアへ向かって爪を振り上げるもリゼリアの意識は目の前のゴブリンだけに注がれていた。


「リゼリア!!」


 フランシスがダーツを身構えるが、リゼリアと重なり、思わず投げるのを躊躇ってしまった。


 ──バコンッ!!


 何やら鈍い音がした。


「ゴブッフェェッ!!」


 首が横に270°回転したゴブリンがきりもみ回転で弾かれ、地面へ転がった。


「危なかったです……」


 それはマニエルだった。エルから貰った銀色の(トレイ)を思い切りゴブリンの頭部へと打ち込み、衝撃でゴブリンは完全に沈黙した。


「ゴブッ!? ゴブッ!?」


 相方を失ったゴブリンは困惑した。何故ならばこの場に置いてお世辞にも似つかわしいとは言い難い姿のバニーガールが、突如として一撃の下に相方を気絶させたのだから……。


「ありがとうマニエル!」


 リゼリアがポケットへと手を伸ばし折りたたみ式ナイフ、所謂バタフライナイフを取り出した!


「ちょっとなにそれ!? 羨ましい!!」


 疑問と本音が入り混じるフランシスに、リゼリアは一言「私の前払いよ!」とだけ答えた。


 リゼリアは、自分でも驚くくらいに鼓動が高鳴るのを感じながら、その実、頭の中は冷窟に吹く風のように冷ややかになりつつあった。


 髪がふわりと風で浮き、先に仕掛けたのはゴブリン。怒りに任せ爪を振り下ろし、リゼリアはナイフの先が届く程度の距離だけ身を躱した。


 爪がすれ違う。今までの杖による戦闘距離よりも更に近い完全な近距離。リゼリアの放ったナイフの一閃は、ゴブリンの首に巻かれたマフラーの少し上の皮を微かに捉えただけだった。


「ああっ!」


 フランシスが悔しそうに声を荒げた。しかしリゼリアは距離を取り、ゴブリンの様子をジッと眺めだした。


「これで良いわ……」


 リゼリアの頬から僅かに血が垂れた。やはり近距離戦闘に馴れていないリゼリアでは、ゴブリンの爪すら躱しきれていなかったのだ。


 ゴブリンも僅かに染み出た血が、マフラーを少し滲ませた。


「ゴブゥ……?」


 ゴブリンが爪を尖らせる……が、次第に引き攣るような痙攣がゴブリンの体を蝕み始めた。


「ゴ、ゴブッ……! ゴブ…………ッ」


 そのままゴブリンは地面に倒れ、口から泡を吐いてやがて息も出来ずに絶命した。


「神経毒が塗ってあるから、擦っただけでも終わりよ……」


「おお……!」


 三人はそのリゼリアの様子から、ただならぬ何かを感じ取った。


「大丈夫?」


 マニエルがリゼリアの頬を覗き込むが、既にゴブリンから受けた傷は無かったかのように消えていた。


「私の常在スキル『癒しの風』で、少しのダメージならば直ぐに治ります」


 フユハが静かに告げた。その落ち着き払った佇まいはクラスチェンジが成せる業なのか、まるで別人のようなフユハに、三人は頼もしさを感じたのだった。


「今まで杖でボコボコしてたのに、なんか私達成長したんじゃない!?」


 フランシスがその()()を提唱した。そして四人は一様に頷き、自らの成長に喜びを感じたのである。


 ポケットの中で万が一に備えていたフェリーは「まだ一階なんだけどなぁ」と思いながらも、未来を担う探索者達の成長に、何とも言えない嬉しさが込み上げてきた。

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[一言] 成長してるううう!!!!(感涙)
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