5-2
「死ねオラァァァァ!!」
狂人的と言わんばかりの罵声で敵を殴るように斬り捨てるアイシア。彼女が振り回すその曲刀には、ギルドの象徴である太陽の装飾が施されていた。
「おーい。俺の分残してくれよー」
最前を歩くアイシアが全てを処理してしまうため、後ろの二人の出番は無い。
「トドメじゃオラァァ!!!!」
上位悪魔の首を大胆に切断し、血を払うと、落とされた宝箱には見向きもせず、再び歩き出した。
「開けようぜ?」
「なりません」
曲刀を鞘にしまうと、いつものお堅い彼女が姿を現した。
「冗談だよ。ったく、つまんねーな。ねぇ、メイデア?」
「わわわわっ、わたしはっ、わたしぃは、局長と居るだけでででででででで──」
一人赤くなり、俯いたまま壊れるメイデア。彼女はオズワルドと話そうとする度こうなる困ったさんである。
「おっ! ドラゴンはっ……けーん!!」
片角が折れたばかりの生傷の絶えない赤龍が岩陰から姿を現した。アイシアが先陣を切り注意を引くと、オズワルドがドラゴンの前足を殴り付ける!
ドラゴンの爪が剥がれ、痛みで大きくバランスを崩す。頭が地面へと近付くと、その隙を狙っていたアイシアは、一振りでその首を斬り落とした。
「……アイシア。君は秘書官として慎みというものが無いのかねぇ?」
「なりません。局長の御身に万が一があれば、私は中央より厳しい処分を受けますでしょう」
「はいはい、優秀な秘書官を派遣されて幸せですよー……っと」
人の出入りの気配が無い地下深くを歩き始めた三人。闇が色濃くなり、魔脈の乱れからか視界は著しく悪く、それは手を伸ばすと指が見えなくなるほどであった。
「ここには深闇空間は無かった筈だ……」
「どうやら今回の変動は地層が変化するほどに厄介なヤツみたいだな」
「原因を探るためにより下層へと行く必要があるみたいです。不本意ですが……」
三人は激しく鼓動する魔脈の傍を歩いた。普段ならば転移呪文で下層へと向かうのだが、魔脈が変動した今、転移先の様子が分からない以上、転移呪文は使えず、歩いて行くしか手段が無い。三人はただひたすらに下へと歩き続けた。
「……コイツはすげぇな」
そして三人は、地下七階にて此度の変動期を齎した原因に直面した。
魔力を大きく含んだ鉱石が岩肌より露出し、ただならぬオーラを放っていた。
「魔鉱石……」
メイデアはポツリと漏らした。
何らかの原因でごく一部の部分に魔力が集中して形成される鉱石。それが魔鉱石である。魔力をたんまりと溜め込んだ魔鉱石は、魔脈の流れを変え、時に変動を齎す。そしてその魔鉱石は、武器や防具として身に付ければ、魔力の補助を得られる優れ物でもあった。
「どれどれ、さっさと取って、元に戻しちまうぞ……」
オズワルドが魔鉱石に手を伸ばした──
「おっと、待ちな!」
オズワルドの手が意表を突かれピクリと止まり、三人が振り返ると、お宝を目の前にして、若かりし頃のエネルギーに満ち満ちた眼をしたエルとフェリーが居た。




