5-3
「そいつは俺達の物だ」
いつでも呪文を放てるぞ、と言わんばかりに、エルが掌を突き出し三人を威嚇した。
「俺達以外に来れる奴が居たぞ。やべ、ちょっと嬉しい」
オズワルドが何故かうずうずと騒ぎ出した。
「局長、あの二人はこの街では有名な、ならず者です」
アイシアは胸ポケットから手帳を開き、要注意人物の項目を開くと、そこにはエルとフェリーの顔写真が貼られていた。
「ねぇ、エル……あの人達って、ギルドのメンバーじゃない?」
「えっ?」
その言葉に、エルの顔が素に戻る。
無愛想そうな、華奢な体をした女侍。地味で目立たない雰囲気の賢者。そして髭がやたら長くて胡散臭そうなモンク。エルは記憶を探るが、どうにもこうにも思い出せなかった。
「すまん、覚えてない」
「あの男、局長。後二人は知らないけど…………」
二人に冷たい視線を送りながら、アイシアが口を開いた。
「ギルド条約第3項、その1。如何なる探索者であっても、地下迷宮内にてギルドの行う作業を妨害してはならない。…………今すぐにお引き取りを」
| 《「……よく覚えてるな」》
オズワルドが小さくぼやいた。
しかし、アイシアの応えに、エルはニヤリと嫌らしく微笑んだ。
「ギルド条約第3項、その15。ギルドのメンバーは地下迷宮内にて手に入れたアイテムの所有権を放棄する。ただし、未発見の物、またはギルド指定の物品はその限りではない。……魔鉱石は対象外の筈だが?」
エルの言葉に、アイシアが口を真一文字に結んだ。
「……自分に都合の良い所だけは覚えてるんだね」
「うっせ」
変動期を齎した魔鉱石は、その発見個数こそは少ないものの、未発見ではなく、また、ギルド指定の物品や危険物扱いでは無いため、本来であれば探索者同士による自由競争が常であり、ギルドが所有権を主張するのはおかしい。と、エルは主張した。
「え? そうなのか!?」
オズワルドがアイシアを見ると、眉をひそめ、無言で深く頷いた。
「…………あー、分かった分かった。魔鉱石はお前らにやろう」
オズワルドは魔鉱石を指で小突いた。
「ただし、俺達はココで調査をしている…………つまり、えーっと……アイシア?」
「ふぅ……」
アイシアが愛想を尽かしたような深いため息を漏らした。が、直ぐに目付きが鋭くなり、刀を抜いて身構えた。
「ギルド条約第3項、その3。地下迷宮ギルドメンバーの探索及び、調査を妨害してはならない。探索者による妨害が認められた場合、戦闘による排除も考慮に入れ、全てはギルドメンバーの一任に委ねられる──です」
「そうそう、それそれ」
オズワルドがエルより悪い顔でニヤリと微笑んだ。
「え? 局長?」
メイデアがオズワルドを見ると、既に戦闘モードへと入っていた。そして、本来であればそれを止めるべき秘書官であるアイシアも、刀を身構えやる気を見せていた。
「すまんメイデア。これはアレだ……治安維持行動だ」
「きょ! きょきょっ! きょくちょーが、そぅ仰るにゃら──」
メイデアは魔道書を手に、戦闘モードへと突入した。
「へへ、あちらさんは力尽くで来いってさ」
「良かったね。馬が合って♪」
「──ああ!!」
エルは詠唱を始め、フェリーは小刀を抜いて瞬く間にこの場に居る人間の視界から消え失せた…………。




