ティータイム ~白魔道士フユハ~
満月の夜には、必ずあの日の夢を見る。
手を繋ぎながら倒れている両親の下半身は何処にも無く、ただ冷たく死に絶えた二人だけが、血の海と化した部屋の真ん中で彼女を出迎えた。
「──えっ……!?」
呆然と言葉を失うが、漂う鉄の臭いと、足下から伝わる生暖かさ。それは紛れもなくこれが、目の前の惨劇が、背後から差し込む闇が、何もかもが現実であると、無慈悲にも彼女の脳は理解せざるを得なかった。
「──!!」
振り向くと、そこには頬から顎にかけて傷のある、ヒゲが雑に伸びた男が窓から飛び降りようとしているところであった。
飛び降り際の一瞬、こちらを向いただけなので一瞬しか顔は見えなかったが、彼女はその月明かりに照らされた顔を、一生忘れる事は無いだろう。
事件は通り魔の犯行として処理された。犯人は未だ見付からず、手掛かりすら掴めぬまま、フユハは十八を迎えた。
フユハは男を探す為に探索者になった。人捜しにはうってつけだったからだ。誰かを探しても怪しまれず、金を積めば情報が手に入る世界。そして人が突然居なくなっても仕方の無い世界。
ただ、男の捜索は難航した。
パーティを組んでくれる人が居なかった為、先立つ物も何も無い日々が続いた。
そして、男の捜索を諦めかけようとしたある日──
「ねえ? 最近よく見掛けるけど……もしかして、一人なの?」
フユハはリゼリアに声を掛けられた。
「良かったら一緒に組まない? 白魔道士が四人になるけどさ」
消えかけて燻っていた執念の炎は、未だ燻ったまま心の底で煙を吐いている。




