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一人残されたリゼリアは、あてもなくブラブラと人の波に身を任せバザーを眺めることも無く歩き続けていた。
「どーせ買うお金も無いし……」
退屈しのぎに出かけたバザーが更なる憂鬱を呼び、既に帰りたい気持ちが込み上げつつあった……。
「あら? もしかしなくてもそこに居るのはリゼリアではなくてぇ?」
わざとらしい甲高い声色がリゼリアのこめかみにカチンとくるものがあったが、リゼリアは努めて冷静に振り返り笑顔で応えた。
「あらあら、サマサ。おはよう!」
これまたわざとらしく甲高い声で応えたリゼリア。二人の間にだけ妙な緊張感が漂っていた。
サマサとリゼリアは同い年であり、幼い頃から家が近所なのもあり顔はよく知っていた。
しかし二人は仲が悪かった。本人同士の相性の問題もあるが、一番の理由は家系にあった。
リゼリアの祖母はこの街で有名な白魔道士で、寺院による有料蘇生を生業としていた。
一方サマサの家系は代々黒魔道士を生業にしており、ある日ダンジョンで力尽きたサマサの父親が寺院に運ばれたところ、所持金の少なさから蘇生を断られた経緯があったのだ。
それからというもの、サマサの家は寺院を恨み、それがサマサへと受け継がれているのだ。ただし、それは寺院を継いでいないリゼリアにとっては迷惑以外の何物でも無い行為。
「フン! 白いウジ虫共が地下一階を這いずり回っているのは此処らでは有名よ! 鬱陶しいったらありゃしないわね!!」
「何だって!?」
リゼリアが一歩踏み出し詰め寄ろうとするが、サマサの両脇に居た戦士とシーフがサマサを庇うように前へと出た。
「相変わらず口と威勢だけはいっちょまえだこと! 悔しければ私達の稼ぎ場である地下三階まで来てみなさいよ!? ま、アンタ等には一生掛かっても無理でしょうけどね! キャハハハ……!」
言いたいことを一方的に言い放ち、サマサはクルリと踵を返し去って行く。リゼリアはその背中を追うことは出来ず、唯々握り拳を作るのみであった。
「白魔道士だけで地下三階なんか無理よ……」
パーティの編成上戦闘面に置いては絶大なハンデを背負うことになるのは承知の上。それでも気心の知れた仲間で戦うダンジョンは、裏切りの臭いも企みの微臭も漂うこと無く、目の前の命に集中できる素晴らしさがあった。
リゼリアは、誰一人欠けること無く、今の四人で更なる地下を目指したかった…………。
集合場所に集まると、フランシスが買ったばかりのダーツを見せびらかし試し投げをして見せた。しかしそれは酔っ払いのお尻に刺さり、フユハが慌てて酔っ払いのお尻に回復魔法を掛けた。リゼリアはその光景を見て笑い、地下二階への進出を決めたのだった。




