恋の終わりと、始まり 20
出会った頃から尊敬してた。
蓮がいたから。ってことを言い訳に、好きにならないよう努力してきた。
仕事に支障が出てはいけないし、何より私のことなんて異性として好きになってくれるなんて、思わなかったから。
こんなに誰かにドキドキしたのも。
こんなに一気に熱を上げたのも。
史郎が始めてだ。と言っても恋愛経験なんて殆どないけれど。
かっこよくて、スタイル抜群で、頭も良くて、ずば抜けた才能の持ち主。
何より素敵な絵を描くアキラ先生のことが大好きだ。オネエだけど……。
この少し甘い雰囲気が心地良いし、一緒にいて楽なのは知り合って長いからだろうな。
そんな一人妄想タイムを満喫していたら。
「アタシ、昨日徹夜で仕事したからもう寝るわ」
オネエがファスナーを上げながら、あくびをしていた。
げっ! いつの間に! ジャージ着てるし。
「待ってください。何でジャージ? てか、これ脱いで」
アキラ先生より史郎のほうが比べるまでもなく断然タイプだ。
脱がせようとファスナーに手をかけようとしたら。
「いやん。下間ちゃんたらー。もぉ、エロなんだから」
「……」
誰かこのオネエぶん殴って。甘い雰囲気がブチ壊し。
「寂しいなら一緒に寝てあげてもいいわよ? 泊まってく?
なら、そうね。腕枕してくれるかしら?」
「……」
「これは明日いただくわね。こんな時間にチョコレートなんて食べたら誰かさんみたいに太っちゃうから」
長い指に紙袋の取っ手を引っ掛けて。寝室へと向かう背中をあ然と見つめた。
ポツンと一人リビングに残されて。
時計を見れば、まだPM7時半。いくら徹夜したと言っても、寝るの早すぎやしませんか?
軽く自分の腕を揉んでみた。
うん、確かに、プニプニしてて寝心地は良さそう。低反発っぽいな!
「……って、違ーーーう!!!」
下間 凪沙 崖っぷちの29歳。
本日めでたく彼氏ができました。
けれどその彼は……。
田中 史郎 イケメンオネエの30歳。
彼がトレードマークのジャージを脱ぐとき……。
それはオネエから男にスイッチが入る瞬間。
はぁ〜、この恋、前途多難です!!!
ーfinー




