恋の終わりと、始まり 19
「アキラが好きなの?」
「へ……っ?」
何言ってるの? この人。
ポカンとしてる私の視界が明るくなった。
側で、先程脱ぎ捨てたジャージを拾い上げ "史郎じゃなくてアキラかよ" とブツブツ言ってるイケメンは、えらく不機嫌だ。
そしてまた、チョコレートは受け取ってもらえなかった。
おい! おいおいおい!!!
やっとわかったカラクリ。
ジャージを着てない彼は。
男で。
史郎なんだ。
「ちょっと待ったー」
今まさに。
袖を通そうとしてる赤いジャージを引っ張った。
オネエに変身されてたまるかー。
「ち……、違うよ。史郎が好き」
「ぶ……っ。ふふっ…」
あ、あれ?
咄嗟に口走ってしまった名前。しかも呼び捨て。ここは史郎さんと呼ぶべきところだ。けれど、出てこなかった。最近、どうも歳のせいか頭の回転が鈍い。
「いきなり呼び捨てかよ。まぁ、いいけど」
笑い転げてるイケメンを目の当たりにして、呼び捨てでもいいや。と開き直るのも、歳のせいかもしれない。
何でもありだな。オバサンに近づくと。
てか、おい、笑いすぎだろ。
いつまでも笑ってる史郎は放置して、もう一度原稿に目を通した。本当によく描けている。
「先生? こんな短時間でよく描けましたね」
「あ、それ? 今までわざと遅く描いてたから」
「はぁぁぁぁ?」
今、わざとって言ったよね?
これまでの残業も。
会社に泊まらなきゃいけないほど忙しかったことも。
全部、全部、アキラ先生が遅かったせいなのにー!
おのれーーー。
「提出が遅いと凪沙が何度も来てくれるだろ? 土日にここへ来るように言ってたのも俺の作戦」
笑ったせいで目尻に溜まった涙を拭いながら「彼氏に会わせたくなかったから」なんて可愛いことを言われたら、怒る気も失せた。どころか、キュンと胸が高鳴ってる。
うーん。重症かもな、私。




