恋の終わりと、始まり 18
いや……、待て待て待て。
百歩譲って仮に女。だとしよう。でもね、世の中には友チョコという便利で都合のいい渡し方もあるんだよ。
少女漫画を描いてるくせに知らないのか?! って、そうじゃなくて、アナタ、生物学的構造は男。ですよね。と言ってやりたい。
こうなったら直談判だ。
「昨日は一瞬だったけど男でしたよね?」
「何が言いたいのよ」
相変わらずアキラ先生の目が怖い。私が男の部分を強調して言ったからだろう。
「何がって。それはつまり……。
今日はお礼に来たわけじゃなく、返事をしに来たと言うか……。
バレンタインに乗っかってみようと思ったと言うか……」
「へぇ〜。返事ねぇ」
途端アキラ先生はニヤリと笑い「はい、これ」と、しどろもどろになってる私へ、大きめの封筒を突きつけてきた。
それは見慣れた封筒。いつもくれる封筒。おそらくネームが入ってるはず。
封筒を受け取るとアキラ先生はその場で赤いジャージの上だけを脱ぎだした。
顕になった "笑姜焼き定食" と書いてある生姜焼き定食のイラストがプリントされてるTシャツに目が点。
だってね、お肉に口が付いてて、綺麗な歯並びの真っ白い歯がきらっと光ってるんだもん。
作るほうも買うほうも、どうかしてる。ダサい以外、コメントのしようがない。
黙ってるけどね。笑えないけどね。ってこんなダサいTシャツどこで買ったんだろ?
目に毒なそれをチラ見して、私は封筒の中身を確認した。
「えっ! 今月分、全部できてるじゃないですか」
毎月ギリギリじゃないと書き終わらなかったのに。全ページ完璧。その仕上がりに目を見張る。
「俺が本気出したらこんなもんだ」
聞きなれない低い声が聞こえ、顔を上げると、近づいてきた先生の顔が私の顔へ影を作った。
ちっ……近いっっ!!
突然、男へ変身ですかー!!!
何だこのギャップ萌。心臓に悪い。
「やればできるんですね。見直しましたよ」
あくまで冷静に。ハハハと笑ってごまかす。
「だろ? で? 返事。しにきたんだよな?」
すると、私の座ってるソファーの背もたれに手を付いて、アキラ先生は妖しく微笑んだ。
うっ……、昨日と同じように閉じ込められた。
綺麗な顔が近づくにつれ、私の心臓は高速で鳴っていく。
恥ずかしくて。持ってきたチョコレートを再びアキラ先生の胸元に押し付けた。
「私もアキラ先生が、す……、好きです。だから、これ……っ」
この歳で真面目に告白してる。しかもバレンタインに。相当イタイな、私。




