恋の終わりと、始まり 17
* * *
次の日……。
「はぁー。緊張する」
昨日のアキラ先生からの告白を思い出すと、モヤモヤしてチャイムを押すことができないんだ。
アキラ先生の部屋の玄関前で10分は経ってる。玄関の前でウロウロしてる私は、はっきり言って不審者。通報されてもおかしくないレベル。
昨日はあれから……。
蓮のことを見送ってる私へ「んじゃ、俺も帰るわ」と言い残し、あっさり帰ってしまったアキラ先生。
唖然として、引き止めることも、返事をすることも、文句を言うことも、何もできなかった私。
そりゃそうだろう。
告っといて何のリアクションもしないで帰るか? 普通……。
もっと何かあってもいいよね?
晴れてフリーになった私へ、もっとアピールするとか。どうせなら、あんなことやこんなこととか……。
いやいや我ながら、想像しただけでニヤけるが。
おかげで昨晩は一睡もできず。
自分でもビックリするようなスピードで仕事を終わらせて。初の定時退社は私にとって快挙なんだ。
で、急いで来てみたけれど。
さて……、どうしようか。
「いや、凪沙。女は度胸よ」
自分で自分に活を入れてみる。手に持ってる紙袋の取っ手を握り直した。
ーー♪ピーンポーン♪ーー
やけくそで押したチャイム。
「どーぞー。開いてるわよ〜」
あ……、今日はオネエなのか。ガッカリ。
聞こえてきたアキラ先生の高音。
低い声じゃないそれに、肩を落としながらドアを開けた。
しかし、誰が来たかも確認しないで "どうぞ" って。不用心すぎやしませんかい。
「こんばんは。先生」
ニッコリ笑って見せる。平常心、平常心。ガッツいてはダメよ凪沙。
「あらー、下間ちゃん。どうしたの? 今日は来る日じゃなかったわよね?」
そうきたか……。確かにそう。今日は来る日じゃない。
普段と変わらないアキラ先生の態度。不思議そうに顔を傾けている先生に近づく。
「たまたま早く仕事が終わったので、昨日のお礼に来ました。これ……」
紙袋をすっと差し出した。
「なあに? これ? 差し入れ?」
「チョコレートです。ほら、今日はバレンタインですから」
紙袋を受け取ろうとしていたアキラ先生の手が宙で止まった。
ジロリと睨まれる。
「いらないわ」
「えっ? せっかく買ってきたんですから受け取ってくださいよ。
駅前の有名なお菓子屋さん、知ってます? 並んで買ってきたんですから」
これを買うのに寒い中、30分は並んだんだ。貰ってくれなきゃ報われないよ。
アキラ先生の胸に押し当てて、必死で渡す。
「はぁ……。下間ちゃん、バレンタインの意味わかってる? 女が女に渡してどうするのよ」
呆れた、と顔に書いてあるアキラ先生は「ホント、バカね」と溜息を零した。




