第3話
第3話です。
ぜひご一読ください!!
「これ見て。」
あいは貴重品を扱う手つきで、俺に差し出した。
「これは、手紙?」
「そうだよ。読んで。」
「分かった。」
俺は1文ずつ隅々まで読む。
拝啓、大好きな妹あいへ。
元気ー?
私はとても元気だよ!
だって、2年間の就職活動がやっと終わりを迎えたから!
つまり、就職先が決まったということです!
めっちゃ嬉しくて、飛び跳ねて喜んだよー。
会社に就職したらまた手紙を送るから読んでね!
体調に気をつけて、よく寝ること!
妹のことが大好きなお姉ちゃんより。
俺は読み終えると、あいのお姉さんは明るい人なんだなと想像する。
今度、挨拶をしにいこう。
「次、これ読んでくれる?これはお姉ちゃんが就職して、すぐくれた手紙。」
「あぁ、分かった。」
拝啓、あいへ。
今からあなたが読む話は、本当の話。
私を信じてほしい。
そして、他言しないこと。
もし誰かに伝えるなら、本当に大切な人にだけ。
この約束は絶対守って。
私さ、今日から就職で会社に行ったの。
それで、会社について今日から社会人だー!って喜んでたの。
で、会社の中に入った。
そしたら、同僚になる人達が先に着いてたんだ。
それで、その人たち様子がおかしいの。
なんか、みんな一挙一動、全く同じなの。
そんなのおかしいなって思うじゃん。
で、上司のAIに聞いたんだよね。
「なぜ、全員同じ表情、格好、行動をしているのですか?」って。
そしたら、別室に連れていかれてね。
何されるんだろ怖いなーって恐怖と戦ってたの。
そしたら、「君にはまだ説明していませんでしたね。」って言われたの。
で、説明が始まったの。
「疑問の答えは、チップ制度を導入しているからです。新入社員には、我が社が開発したチップを体に埋め込む。すると、我々に匹敵する頭脳、仕事に無駄である感情を喪失、仕事から逃げれないように位置情報、無駄な喋りをすることで非効率的な時間を過ごさせないために録音機能を搭載しています。チップが効果を発揮するのは埋めてから30分後です。」
そう言われて、嘘だと思えたら良かったんだけど、本当だって実感する根拠が数多くある。
だから、怖くなって、立ちくらみがしてしゃがみこんだの。
そしたら、上司が、「体調を崩すとは軟弱。やはりニンゲンはこんなものか。まぁ、今日は休養を取りなさい。」
で、チップを埋められる前に帰ろうとしたの。
そしたら、「待ちなさい、チップは埋めてから帰宅しなさい。」
ってAIに言われて。
逃げる術がないから埋められたの。
だから、あと2分くらいで、もう私はー。
最後に一言。
大好きだよあい。私はずっとあなたの味方。
あいの事が大好きなお姉ちゃんより
俺は読み終えると、膝から崩れ落ちた。
情報量が多くて頭がパンクしそうだ。
すると、あいが手を差し伸べてくれた。
膝が震えながら、助けを得て、何とか立ち上がる。
「最後の一通があるの。読む?」
あいは、俺に読んで欲しいのだろう。
ではないと、全通読んでとかいう無理難題を課さないだろう。
だから、絶対読みきる。
「あぁ、読む。」
拝啓、妹へ。
同僚や上司が、新入社員の私に分かりやすく説明をしてくださいます。
妹を我社に誘うようにと言われています。
一緒に働きませんか?
給料が高く、年収は一千万を優に超えます。
休暇を申請することも可能です。
そして、私と働くことができます。
唯一のデメリットは、ニンゲンと接触できなくなることです。
ただ、それだけです。
よいお返事を待っております。
あいの姉より。
全てを読み終えた俺の目からは、涙がこぼれおちる。
あいの方を見ると下を向いて肩を震わせていた。
あいのお姉さんは人間ではなく、AIとなったのだろう。
ただの無機質な機械と化してしまったのだろう。
自由を奪われたのだろう。
そう容易に推察できてしまう。
そして確証を得る。
「あい、人間なんだな。AIじゃないよな。」
手紙には、チップを埋められると、人間と接触ができなくなると書かれていた。
だが、あいは俺に毎日抱きついてくる。
それが何よりの証拠だ。
あいは一瞬、不安げに瞳を揺らしたが、すぐに自信を持った目に変わる。
「バレたか。じゃあ、隠しても仕方がないね。けいじくんの推察通り、私は人間だよ。」
「なんで、嘘の告白をー」
そこまで言いかけて、ふとある考えが浮かんだ。
あいは俺を守ろうとしてくれていたのだろう。
あいのお姉さんのような状態にならないように、助けてくれたのだろう。
「ありがとう、あい。」
口からこぼれた、言葉が紡がれる。
「うん。」
そう言ったあいは目を一等星のように光らせていた。そして、星が目から溢れていた。
翌日
俺は今日、就職活動テロリズムを行う。
覚悟は決まっている。
昨夜、悩みに悩み抜いて決めたことだ。
これ以上、 犠牲者を出してはいけない。
あいが俺を救ってくれたように、俺も誰かを救う。
強い決意を抱いた俺はリビングへ向かう。
「おはよう。」
「おはよう。」
毎朝お決まりの会話を終える。
そして、いつもと違う会話をする。
「今日の晩飯は俺が作るよ。」
あいが驚いた表情を浮かべる。
「え、うん。分かった。お願いするね。じゃあ、オムライス食べたい。」
「分かった。楽しみに待っててくれ。」
俺はこの安息地に必ず帰ってくる。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
ドアを優しく開く。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!




