第2話
第2話です。
ぜひ一読ください!!
「ただいま。」
ドアをそっと開けた瞬間、カレーの良い香りが鼻腔をくすぐる。
温められているカレーは、グツグツと味の深みを増している。
俺はいつも帰る時間を報告しない。
だが、いつも、あいは帰宅時間ジャストに料理を完成させてくれている。
「おかえりなさい。おつかれさま。今日はけいじ君が大好きなカレーを作りました。」
あいは誇らしげに笑顔を浮かべる。
「ありがとう。毎日、あいの美味しい手料理が食べられて幸せだな。」
「もちろん。だって、私の名前はあいだから、AIって書けるでしょう?つまり、AIみたいに色んなことができるんだよ。」
俺が褒めると、あいは、いつもよく分からない事を言いだす。
そんな事の理解に時間を割く必要はない。
だから、褒める。
「さすがだな。」
そう答えると同時に、あいが抱きつく。
「充電ターイム!」
あいは毎日、俺に抱きつくとそう言う。
俺との抱擁が元気の源なのかと苦笑する。
「元気回復できた。カレーを食べようか。」
太陽みたいな笑顔で俺の顔を照らすあいは、俺の手を引く。
「いただきます。」
二人で声を合わせ唱える。
スプーンを使い、口の中に流し込む。
「うまい。やっぱり、あいの手料理は世界一だ。」
俺は笑顔を深め伝えた。
「良かった。いつも美味しいって言ってくれるから作りがいがあるよ。」
あいは照れながら言った。
「えへへ、ありがとう。」
そして、あいは真剣な表情で伏し目がちになる。
「ねぇ、会社ってほんとうにいいものなのかな?」
俺は眉をひそめて告げる。
「当たり前だろ。」
だって、優秀な俺の家族全員が会社員なのだから。
正直、羨ましい。
働いている=優秀という方程式が、世論として成り立っている。
だから、近所の人からも羨望の眼差しを向けられているのを、いつも俺は眺めていた。
すると、あいは大きく深呼吸をして俺に言った。
「ねぇ、食後に私の部屋来て。」
あいの指が震えている。
真面目な話をするんだろう。それを察しすぐに返事をする。
「分かった。食べ終わったらすぐ行く。」
あいの部屋の前に着いた。
ドアには、AIと書かれたプレートが吊るされている。
「俺だ。入っていい?」
「うん。」
ドアを優しく開ける。
「ここ座って。」
案内された椅子の上に腰を下ろす。
「どうしたんだ?」
不安げな目をしているあいを落ち着かせるために、できるだけ優しい口調で聞いた。
「うん。えっとね、えっと、」
あいが焦っているのが伝わってくる。
いつも落ち着いてるのに珍しいな。
「ゆっくりで大丈夫だよ。」
そう言うと、あいは
「ありがとう。」
と頬を鮮やかな桜色に染めた。
そして、あいは一息置き、衝撃的すぎる告白をした。
「私、AIなの。」
.......は?
俺の脳が理解を拒む。
「私のこと、人間味がないなって思ったことない?」
そう言われようやく落ち着いてきた。
確かに、思ったことがある。
名前があいでAIと書けること。
顔が整いすぎていること。
いつも落ち着きすぎていること。
ドアプレートにAIと書かれていること。
俺の事を全て知っていること。
気づけなかった。
気づきそうだったのを俺が理解しないように、逃げていたのかもしれない。
「そう、なのか。」
「ーうん。」
二人の間を気まずい沈黙が包み込む。
数分たった。
「ごめんなさい。今まで黙っていて。」
先に、重苦しい雰囲気から救ってくれたのは、あいだった。
突然の告白だが、頭は冴えてきた。
冷静になってきたからこそ、自分の本心がわかる。
どっちでもいい、あいはあいだ。
俺が好きになったのは他でもない、あいなんだから。
大きく深呼吸して、俺も告白をする。
「前さ、就職の話をしただろう?その時に、何かあった時のためとか不自由ない暮らしをしたいって言ったの覚えてるか?」
あいがどんな表情をするのか、恐怖でもだえ、下を向く。
間髪入れずに返事が帰ってくる。
「ー。うん、もちろん。」
だから、俺は話を続ける。
「けどな、本当は褒められたい、それだけなんだ。ずっと褒められない環境で生きていたから。」
「うん。分かってたよ。」
俺はその一言に目を白黒させる。
そして、ゆっくり、ゆっくりと、あいと向き合う。
「いいんだよ。」
あいはそう言うと、柔らかな笑みを浮かべた。
俺も笑みを浮かべた。そして、伝えた。
「あいがAIだとしてもいいんだ。」
「私も、けいじの本心がどうであれいいんだ。」
そう言った俺たちの表情に、もう不安の色はない。
「だって、あいのことが好きだから。」
「だって、けいじのことが好きだから。」
二人の声がかかとを揃えた靴のようにシンクロする。
笑みをよりいっそう深める。
「よりいっそう、仲が深まったところで、俺からの質問いいか?」
「うん。いいよ。」
俺は、長い間、疑問を浮かべ続けていたことを問う。
「なんで、あんなに必死に、就職活動を止めたんだ?そこまで必死になる必要なくないか?」
そう問いをぶつけた途端、あいの表情が曇り始める。
その表情を浮かべさせたくない、そんな思いで俺は言った。
「ごめん。言いたくないなら言わないでいい。大丈夫だ。」
すると、あいは口角を上げた。
「けいじは、本当に性格丸くなったよね。」
空気を、これでもかというほど吸った。
そして、あいは言った。
「隠していた秘密を教えるね。」
そう言うと、あいは鋭い視線を向けた。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
ぜひ今後の展開の考察もして、お楽しみください!




