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閑話 襲撃の魔族

 ユリウスは新大陸のとある港町で活動していた。今ここには魔族との和平を結ぶことに協力的な人間が集まって大規模な話し合いが行われていた。

 その内容は和平が締結されたとき、誰の功績とするかのものが主だった。ここに集まっている人間はユリウスと同じように平和を望んでいるものだけ…では当然ない。

 魔族と取引が行いたいもの。こちらが勝ち馬と見てそれに便乗しているだけのもの。最初こそ志を同じくした人間のみの集まりだったが、規模が大きくなれば全てが同一の思想を抱くことは出来ない。

 それでもユリウスはまずは和平の締結が優先事項と割りきり活動している。ルージェ付きの侍従であるレイラから不穏な連絡を受けてはいるものの、ユリウスが新大陸で活動していることそれ事態が危険を孕んだものだ。今さら多少懸念事項が増えたところで活動を自粛するつもりはなかった。


 それに今日は今まで同じ町にいながら接触することの叶わなかった勇者ボレアスもこの集まりに参加しているのだ。ユリウスとしはこのチャンスは逃したくない。

 勇者が和平に協力してくれると宣言すれば大国はともかくとして、勇者に救われたこともある小国はまず賛成してくれることだろう。



 今日開いたパーティーには魔大陸から持参した食べ物を使った料理も出してもらっている。当然見知らぬ食材を受け付けない人も居るため、全ての料理ではなく半分ほどではあるが。


 そんな会場の中で一組異質な集団が居る。

 傷だらけの鎧に周囲の楽しげな雰囲気とは相容れない剣呑な雰囲気を醸し出している。

 その一団の中、一際目立つのが身長が2メートルにも達しようかという大男だ。泰然としてはいるが気を抜いている様子は見られない。彼こそが勇者ボレアスとそのパーティーメンバーだろう。


 ユリウスは他に近づくものもいない彼らに声をかけた。今日の最大の目的は彼らに協力を仰ぐことなのだから近付かない訳にもいかなかった。


「初めまして。勇者ボレアス殿とご一行の方でお間違いでしょうか?」


 如何に賛同者が多いとは言えここは人間の住む新大陸だ。そんな場所で自分の青白い肌を見られれば揉め事になるのは明らか。だから普段ユリウスはフードを被っている。しかしこの場でフードを外さず彼らに近付くのは疚しいことがあると言っているようなものだ。だからユリウスはフードを外して彼らに声をかけた。


「…!魔族か!」


 彼らの放つ気配が一層険しいものになった。しかしユリウスは両手を上げ敵対の意思は無いことをアピールしつつ近付くのを止めはしない。


「はい。ヴァンプロード家当主、ラルクの息子、ユリウスと申します。落ち着いてください。こちらに争うつもりはありません」


 敵意がないことは伝わったのだろう。彼らは警戒を緩めてはいないが、武器からは手を離してくれた。


「それで魔族が我らに何用だ?」


 ボレアスが代表として問いかけてくる。


「今日の集まりが何であるかはご存知でしょう?私は人間と魔族が手を取り合って生きていくことを望んでいます。その為にボレアス殿にも協力していただきたいのです」


「ふざけるな!」


 用件を伝えると怒鳴り出したのはボレアスの仲間の中でも一番若い女性だ。


「私の村は魔物にやられて無くなったんだぞ!それを!協力!?私達はお前なんかに協力なんてしない!」


 故郷のことを思い出したのだろう、涙目でユリウスに向かって喚き散らす女性。しかしそれを制止したのはボレアスだった。


「リィカ。落ち着け。それに勝手に俺達の総意として話をするんじゃない」


「でもボレアス様!…わかりました…」


「すまない。彼女はまだ心の傷が癒えてないんだ。感情的になってしまうがいいこなんだ。出来れば寛大な心で接して欲しい」


 リィカと呼ばれた女性を止めた後、彼女は他のメンバーに連れられこの場を離れていった。彼女の一方的な物言いを謝罪するボレアス。しかしと告げて彼は否定の言葉を口にする。


「彼女の言い分ももっともなことだ。我々は誰でも何かしら魔物や魔族の被害に遭っている。それで前線に出たこともない貴族を味方につけたからと言って、我々も協力するというわけにはいかんな」


 先程からの彼らの物言いにユリウスは疑問があった。もしかしたら認識の違いがあるのではないかと


「先程から我々魔族と魔物を同一視されているようですが誤解がありませんか?魔物は我々魔族にとっても邪魔な存在。知性なき獣です。それを魔族と一緒にされては話し合う処では無いように思うのですが」


 ユリウスがそう告げると彼らは驚きの視線でユリウスの事を見つめていた。


「なんだと…?魔物は魔族が命令を出して我々を襲っているのではないのか?今は別行動をしているが預言者をしている仲間がそのように言っていたのだが…」


「それは完全に誤解ですね。そもそも魔物を使役しているのであれば海の魔物と一緒に新大陸を襲えばひとたまりもないでしょう?我々も海の魔物には苦戦しているため陸路を迂回しながら新大陸に来ているのです」


 ユリウスの話を聞いて、ボレアスの仲間の内二人が膝をついた。

 彼らの信じていたものが魔族と話し合いの場ができたことにより崩れてしまったのだ。

長くなったので一度切ります。

次回更新は金曜日予定です。

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