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閑話 勇者ボレアス

 

 勇者ボレアスは新大陸でも北方の地の出身だった。

 新大陸の北は荒れた地が多く、山による隆起も激しいため生きていくには厳しい地だ。ボレアスも幼い時分には餓えにより死にかけたこともあった。しかし彼は生き延びた。生えている雑草の草を食べ、海水を蒸発させ水分を取った。

 彼にとって幸運だったのは生まれた地が海に程近い村だった事と、ボレアスに火属性の魔法の適正があり、水分を取ることが出来たことだろう。


 浜付近は海から魔物が上がってくるため危険な場所だった。

 ボレアスの両親はどちらも村の守り手として勇敢に戦い、魔物との戦いで命を落としたのだ。


 村の人々はボレアスの両親が健在だったころは、戦いに出る両親の代わりによく面倒を見てくれたが、両親が死んだ後は手のひらを返すように冷たかった。


 そんな肩身の狭い思いをしながらも、ボレアスは村を訪れた冒険者からお古の武器を貰い、武器屋に頼み込んで小さくなった砥石をもらった。

 そうして手に入れた武器を大事に扱いながら魔物を狩り続けた。


 ある日ボレアスがいつも狩場としている浜から村に帰ると、村は魔物の群れに襲われていた。両親が亡くなった後村で新しく雇った守り手が戦っているが、20を越える魔物の前に押しきられるのも時間の問題だった。

 村を遠目に眺めつつボレアスの内で悪魔が囁く。


(村人達が死んだって別にいいんじゃないか…?)


 そんな考えがよぎるがかぶりを振る。


(父さんと母さんの守りたかったものだろ!俺が見捨ててどうするんだ!)


 そう思ったときにはもう走り出していた。そしてボレアスの活躍により村は守られ、彼は後からやって来た部隊に引き抜かれた。


 その後も目覚ましい活躍を遂げた彼は北方の勇者と呼ばれるまでになったのだ。





「夢か…」


 ありし日の追憶から覚醒したボレアス。彼が今寝泊まりしているのはある港町だ。最近ここに出入りをしている魔族が居ると言う噂があるのだ。そして彼の仲間の一人である占い師も間違いないと言っていた。

 噂自体は以前からあるものだったし、今まで問題が起きたこともない。しかしボレアスの勘が何かが起きると告げている。

 だから彼は他のパーティーメンバーが反対してもこの街から動くつもりはなかった。


 そんな彼に狂気の爪が刻一刻と忍び寄っていた…。

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