一組目の治療者と譲れぬ争点
リーン様との遊びは中々大変なものでした。
リーン様が隠れるのを探して捕まえる遊びでは、他の精霊達の気配に紛れてしまい見つけるのは困難な上、見つけても直ぐに木々の中に溶け込んで見失ってしまうのです。
後はリーン様との試合も行いました。森の中の木々には精霊の宿り木があるため、魔法は使用禁止の格闘のみでの戦いでしたが精霊は得てして宿り木が有れば精霊の体を再生出来るため、無謀に突っ込んでくる者が多く、リーン様もその例に漏れずカウンター、クロスカウンター狙いの一撃が主体でした。魔法は使用禁止ですがリーン様とは体格が違いすぎるため、リーン様は樹木を体に纏わせ自分の体のように動かして戦っています。獣人も似たような戦い方ではあるのですが、精霊はダメージを気にせず攻撃してくるので獣人よりも厄介です。
見た目が子供のため攻撃することをためらわないかと言えば嘘になります。しかし魔大陸では見た目と年齢が一致しない種族も居ますし、年齢イコールで強さでもありません。そしてリーン様は古代精霊として精霊達の頂点に居るお方。躊躇すれば敗北する可能性は否定できません。
そう言うわけで顔面に拳を打ち込んだりもするのですが、自分の顔が狙われていても気にせずこちらの顔を狙ってくるのです。これが獣人であれば避けてから反撃等、まずは回避をはじめるのですがリーン様にはそれがありません。
結局リーン様が疲れてしまうまで戦い続けて辛うじて勝利したのですが、かなりギリギリでした。
リーン様に痛みはないのか聞いたところ多少はあるものの動きを阻害するほどではなく、別に回復するから構わないと言う理由で気にしていないそうです。精霊達とは対立したくないと思ったものです。
一人目の要治療者が精霊の森へやってきたのは2日後の事でした。その治療者はなんと人間の貴族で交渉は難航どころか門前払いと言った様子で、リーン様が止めなかったら殺し合いになっていたことは間違いないでしょう。
「こちらは外交官、セレスタッド・フェンテ様のご子息、レイスタッド・フェンテ様だ!何故レイスタッド様が貴様のような物に枝を譲らねばならんのだ!」
そう言って居丈高な態度を崩さないこの男は、そのレイスタッドと言う貴族の護衛を務めているラクトと言うそうです。
「人間の貴族など関係ありません。それを言えばウチの姫様は五大家長の娘ですからただの貴族よりも偉いでしょう」
「貴様!レイスタッド様を愚弄するか!五大家長など代表戦争で暴れるだけの野蛮な輩ではないか!」
「姫様を馬鹿にするおつもりですか?それは私に対する宣戦布告ととってもよろしいですか?貴方達を今ここで八つ裂きにしても良いのですよ?」
「ふん!出来るものならやってみるがいい!このラクト!ただの魔族ごときに負けはせん!」
「お主らいい加減にせぬか!この精霊の森で争うようで有ればどちらにも枝は渡せぬ!」
一触即発の空気の中でリーン様に怒られてしまいました。見た目幼い少女に怒鳴られる大人二人。端から見ればとても滑稽な様子でしょう。しかしここはリーン様の治める土地ですし、リーン様から枝を貰えねばお互い主君を失うことになります。
ラクトと言う男もその辺りは理解しているのでしょう。
「ふん!命拾いしたようだな!ここは引いてやるが枝の順番は譲らん!大人しく待っていることだな!」
そう言ってラクトは自分達の馬車へと戻っていきました。まさか人間とは…彼らから枝を貰うことは出来そうもありませんし殺して奪えば精霊が敵にまわってしまいかねません。仕方なく私は二組目の到着を待つことにしたのでした。




