古代精霊リーンとレイラの頼み事
リジェさんについていった先に居たのは姫様よりも小さい女の子でした。彼女はこちらに気付くと今まで座っていた木の椅子から立ち上がりこちらに走ってきました。座っていた椅子は、その少女が立ち上がるとシュルシュルと縮んで木の枝に変わったので元々そういうものなのでしょう。
「リジェ!一人は暇なのじゃ!遊んでたも!」
「リーン様、暇なのはわかりましたが今はお客様がいらしてます。少し落ち着きましょう」
走ってきた少女はそのままの勢いでリジェさんに突撃しましたがリジェさんはそれを優しく受け止めて諭しています。あぁ…姫様も以前はよくああやって走ってきてそれを受け止めたものです…。お願いしたら昔みたいにやってくれるでしょうか?
「これはすまぬ。ようこそお客人。んー?お主見覚えが…いやこれは知識か…わかった!お主レイラじゃな!」
古代精霊、リーン様はリジェさんに言われこちらに挨拶をして、私を見て何かを考えるように目を閉じました。少し瞑目したあと自己紹介をする前の私の名前を告げました。
「はい。古代精霊のリーン様ですね。移り木をされてからお会いするのは始めてですね。貴女がラッツ様と言う名前だった頃に少し関わりがありましたので」
「そうなのか!しかしすまんの、名前はわかるのじゃがどんな付き合いをしていたかまでは妾の記憶には残っていないようじゃ」
だから初めましてじゃな!そういってにこやかに笑うリーン様。これが本当に元ラッツ様なのでしょうか…
ラッツ様と言えばどうしようもないほどの色ボケ爺として魔大陸では有名で、森に女性が入れば率先して口説きに行く。都合の悪いことは全部ボケたふりをする。仕事は全くやらずに補佐官に丸投げ。極めつけは代表戦争をすっぽかす。などが上げられますね。
ラッツ様が仕事をしないせいで補佐官と言う役職が出来たそうですし、代表戦争の際はかなり揉めたようです。
そんなラッツ様の生まれ変わりであるところのリーン様。そもそも性別から変わってしまっていますし、別人として考えた方が良い気がしてきました。
彼女に私との思い出が残っていなかったのは幸いでしょう。ラッツ様がしつこく絡んできたので、精霊としての体を消し飛ばしてしまいましたし。
「いえいえ、問題ありませんよ。そこまで親しい間柄ではありませんでしたから。それでは改めまして挨拶させていただきます。わたくしヴァンプロード家のルージェ・ヴァンプロード様にお仕えするレイラと申します。本日は主であるルージェ様が獣王領に行った際に発病してしまい、その治療に古代精霊様の枝が必要と言うことで足を運んだ次第でございます」
挨拶と同時に用件もお伝えするとリーン様は少し困ったかのように笑いました。
「そうなのか…妾の宿っている木なのじゃがな、今枝は二本ある。しかしじゃな、先触れで知らせてきたこちらに向かっている治療希望者が二人居るのじゃ。次の枝が生えるのは恐らく半年後じゃろう。だから半年待ってもらうことは出来んかの?その病気は直ぐに死ぬようなものではないし症状を抑えるだけであれば他の精霊の枝でもそれなりの効果はある」
半年、それは当主会議に出ることが出来ないことを意味します。元々はユリウス様を当主として任じるための会議なので、姫様の為に延期と言うのは不可能でしょう。
「今は急ぎの用事がありますのでそこを何とか、と言うわけには行きませんか?」
何とか順番を譲ってもらえないかとリーン様にお願いしますが彼女は首を振るだけでした。
「皆苦しんでおる。誰かを特別扱いは妾には出来ぬよ。だから残りの二人に直接交渉しておくれ。3日もすれば着くじゃろう」
本当にリーン様は素晴らしい方のようです。その公正明大さが今回は私達には悪い方向に進んでしまっていますが今後がとても楽しみです。
「わかりました。ではしばらくの間精霊の森でお世話になります」
私が精霊の森に滞在することを伝えると、先程までの毅然とした態度から一転してリーン様は私に頼み事をしてきました。
「そ、それでじゃな…滞在中だけでも構わんから妾と遊んでくれぬか?一応偉いのでな…他の精霊達は遊び相手にはなってくれぬのじゃ」
年相応なお願いをするリーン様はとても可愛らしく、私はそのお願いを受けたのでした。




