領境での会話と無粋な襲撃者
流石に時間も遅いので精霊の森に入るのは明日と言うことになり、領境で夜を明かすことになりました。
日が上ってから影蜘蛛隊も帰還するという事で、今は近くで食料を探してもらっています。今回は日程が未定の強行軍ですから可能であれば食料は現地調達した方が良いでしょうから。
私は姫様が落ち着いてお休みになられるまで、姫様の様子を看ています。
「姫様、ゆっくりお休みになってくださいね。もう少しで病気も治せますから…」
「はぁ…はぁ…倒れてる場合じゃ無いのに…レイラにはいつも迷惑ばかりかけてゴメンね…」
申し訳なさそうに仰る姫様。私は姫様の手を握りその言葉を否定します。
「迷惑だなんて全く思っていませんよ。姫様が元気になっていただければそれだけで私は嬉しいのですから」
私が手を握ったとき、姫様の体が一瞬強張りました。きっと不安なのでしょう。しかし私の言葉で少し安心したのか手に込めていた力が弱くなりました。
「本当にありがとう…」
そういって姫様の瞼が閉じられました。閉じた目尻には少し涙が溜まっています。その後もしばらくは姫様が安心出来るように手を繋いでいました。
馬車から出るとジャンが焚き火をしていました。竜の領域ですので獣の類いは少ないですが全く居ないわけではありませんし、火を怖れて来ないのであれば好都合でしょう。
「ルージェ様は…そうか、お休みになられたか」
ジャンが座っている向かいに腰かけました。
「はい、影蜘蛛達は…まだ食料の捜索中ですか?随分かかっているようですが」
「我々は別に良いのだがな。この辺りの生き物は肉の固いものが多い。レイラ殿が食べるのに適したものを探しているそうだ」
彼ら影蜘蛛は雑食で大体のものは気にせずに食べてしまいます。ジャンの話では彼らは途中で狩った下級竜を食べたそうです。竜はその強靭な体躯の通り肉質も固いものが多く、食べるにはじっくり煮込むなどしなければいけません。普通の人間が食べれるようにするには最低でも三日は必要だと言われます。
そして私も食べるものに関しては普通の人間と変わりませんので、竜を食べるには適していないわけです。だから影蜘蛛達は肉質の柔らかい生き物を探してくれていると。感謝しなければいけませんね。
周囲に気を配りながらジャンと話をしているとこちらに向けて近づいてくる気配がありました。
足音からして二本足、そして6人程ですね。影蜘蛛達は人化出来ませんので私達の既知の人物ではないでしょう。
その気配は精霊の森の木に身を隠しこちらを伺っているようです。自分達が既に気づかれているとは思っていないのでしょう。
意識には捉えつつジャンとの会話を続けていると魔法が飛んできました。速度に優れた雷光系の魔法ですね。完全な不意打ちであれば避けるのは難しかったでしょう。
しかし既に気づいていた私達には当たりません。避けられたことにより驚愕の声が聞こえてきます。
「あれを避けるのかよ!」
「驚いてる場合じゃねぇ!相手は二人だ!やっちまうぞ!」
そういって男達が出てきました。その姿は魔大陸には居ないはずの人間のもの。これが亜人等の野盗崩れであれば気にしなかったのですが人間となれば話は別です。死なないように捕らえなければいけませんね。
「ジャン、殺さないようにお願いしますね。何か私達を狙った理由が有るかもしれませんから」
「あぁ、とりあえず無力化してから糸での捕縛でいこう」




