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姫様の不調と精霊の森

 

 獣王領から戻ってきて一週間、姫様が高熱を出してしまい、他の5大家長と会うどころでは無くなってしまいました。


 最初はヴァンプロード家のお抱えの医師に見せていたのですが原因の特定には至らず、別の医師の見解を聞くためにラスト様の所から派遣していただきました。


「これは…獣王領に行くと発症するといわれる病ですな」


 その老医師の言うところによれば、獣王領に行くとごくごく稀にこの病を発症するそうです。自然治癒はほぼしないらしく、数年かけて魔力が減少。いずれは死に至るそうです。

 姫様が死んでしまうときいて慌てた私ですが、老医師は直ぐに治療法を示してくださいました。


「まぁ落ち着きなされ、この病の治療には古代精霊様の宿られている眠り木と呼ばれる木の枝が必要なのです。争っている頃で有ればいざ知れず、今なら頼めば枝の一本二本はいただけるでしょう」


 こうして図らずも次の行き先は精霊の森へと決まったのでした。




 侍従の私が姫様を置いていって良いものかと悩みましたが、これも老医師の言葉により選択の余地が無くなってしまいました。


「眠り木の枝は精霊と同じで移り気でしてな。折ってから1時間もすると効力が無くなってしまうのですよ。昔はこの病を発症すると精霊様に好かれているのだと言って、精霊の森まで出向くのが普通でしたからな。行かずに愛想をつかれると死んでしまうと」


 精霊の森までは片道5日はかかります。どれだけ急いでも1時間以内に戻ってくるのは不可能でしょう。調子の悪い姫様を連れていくのもそれで辛いものが有りますがどうしようもありません。



 出発前夜。明日の朝早くに出発してどれだけ急いでも3日から4日はかかるでしょう。であれば今日の内に会いに行くことを伝えておこうと私は魔力探知をおこなっていました。

 しかし古代精霊様の魔力が見つかりません。何かが起きているのでしょうか…結局古代精霊様の魔力を見つけることはできず、ヴァンプロード家の使い魔の蝙蝠に書簡を持たせ出発することになりました。




 精霊の森へはヴァンプロード領からであれば西の竜帝領を北西に突っ切るのが一番速いです。普通の馬車で有れば竜が跋扈する竜帝領は避けて通るのですが、姫様が不調の現在、竜ごときに構ってはいられません。

 近づいてこようとする竜に目で退くよう語りかけます。


(邪魔をするのなら殺す!)


 それだけで中位以上の竜は察してくれたのか襲っては来ません。しかし知能が低い下位の竜はこちらの意図を汲んではくれず襲いかかってきます。


「邪魔だあぁぁぁぁぁぁ!」


 叫んだのは私ではありませんよ?普段はヴァンプロード領内を巡回している影蜘蛛隊に竜帝領の露払いをお願いしたのです。

 流石に全員は領内の自治のためにも連れてこられませんでしたが影蜘蛛隊こら10匹(人形に成れないものは匹で数えるそうです)更に隊長のジャントゥも付いてきてくれています。影蜘蛛は喋ることも出来ませんので先程の声は隊長のジャンのものですね。


 こうして強行軍で突き進んだ私たちは3日目の夕方。竜帝領と精霊の森の領境に着いたのでした。

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