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閑話 天使の楽園

第三者視点の閑話です。

 

  ~天使(エンジェル)楽園(パラダイス)


 ここは、天使の楽園、正大陸と魔大陸の北部に位置する小さな島、そして天使達が住まうとされている地。

 島の周りには常に渦潮が発生しており、船が近付こうとすれば間違いなく沈むと言われる魔の海峡だ。

 また、空からの侵入もある一定地点から通常の数倍の重力がかかり叶わない。


 そんな島の様子だが、草や木が生い茂り、近付けるギリギリの距離からでも天使の姿をとらえることは出来ない。


 島の中央地点、自然がそのまま残っているこの島には似つかわしくない建物が建っている。

 それはまるで教会のような真白な建物。円形のその建物は中央部分が盛り上がっており、それは例えるなら小さな塔のようだった。建物が建っているその周囲は方々に好きに生えている草木も存在せず、建物自体もまるで新築のような美しさを保っている。


 その建物の中は建物の円形をやや狭めた形で廊下が円を描いており、そこから外側へ向けていくつもの部屋が存在している。そして内側はいくつも扉が存在しているがそのすべてが同じ部屋へ続いている。

 中央の間。廊下から内へ繋がる扉の全てがこの部屋にたどり着く。中央には螺旋階段が存在し、そこから盛り上がっている部分にはステンドグラスが張られ、絶え間ない日差しが不思議な色合いを醸し出している。


 中央の螺旋階段は表から見た部分よりも明らかに上まで続いており、ここがただの建物では無いことを示している。


 その螺旋階段の初めの部分。その前には一脚のテーブル。そしてそこには端正な顔立ちの男性が座っていた。赤い髪を腰まで伸ばしたその男性は背中に羽が生えており、見たものはきっと彼が天使なのだと思うことだろう。


 しかし螺旋階段の真ん中をゆっくりと降りてくる女性を見たならばその判断は間違いだったのだとわかるだろう。

 その透き通った金の髪は肩口ほどの長さで纏められており、もはや作り物のような完成された美しい顔立ち、そして男性の少し煤けた羽は偽物なのだと示すような純白の羽。


「首尾はいかがですか?イカロス」


 その女性は座っていた男性、イカロスに話しかけると彼の向かいに腰掛ける。


「中々上手くはいかないね。探し人は未だ沙汰なく。って感じかな」


 飄々と返すイカロス。しかし本から女性へと向けられた視線は険しい。


「それにしてもいつもの人はどうしたんだい?」


「前任は処罰されました。それ以上の事は貴方にお伝えする必要はありません」


「そうか…では貴女の事はなんと呼べば?」


「私達に個体名はありません。ただ天使と呼べばそれで問題はありません」


 淡々と受け答えをする女性。イカロスはアモルと名付けた前任の天使に心の中で謝罪する。


(きっと僕と話してる内に自我が芽生えてしまったんだね…そのため処罰された…ごめんよアモル。僕がもっと早くレイシアを見つけていられれば…)


「そうかい、まぁ進展が有ればこちらから連絡するよ。だから今日のところはこれでお引き取りいただきたいものだね」


「かしこまりました。それではまた一月後に降りて来ますので。次は進展が有ることを願います」


 そうして羽を羽ばたかせることもなく天使は天に帰っていった。イカロスもまた本に視線を落とす。

 その本は今尚、文字が浮き出てきているので読み終わることはない。

 見聞の魔道書(グリモア)、イカロスの指定した人物が見聞きしたものを書物として知ることのできる魔道書。

 そして彼が今見聞の対象にしているのは勇者ボレアス。勇者が目当ての人物に出会えるまで、彼の仕事は終わらないのだった。

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