148 ゲーム内性能最強の本領発揮
同人女の異世界召喚、実は書籍化しています。
web版とはちょこちょこ違いがあるので是非購入して読んでみて下さい!
感想を書いていただけたらとても喜びます!
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「レイシー!」
私の声にびくりと肩を震わせ、レイシーは私に抱きつく腕に更に力を込める。単に周囲の戦闘音にかき消されないように声を張っただけなのだが、先程怒鳴りつけてしまったせいか、また怒鳴られるのかと怯えているようだ。
その割にはこの中で一番指揮力のある、つまり戦闘慣れしてそうだと判断しているのか、私からは離れようとしないのだが。
「ゴーレムのコアってパッと作れるようなモン!?」
どうして今そんなことを聞くのか分からない、といった様子で目を白黒させるレイシーに「いいから答えて!」と答えを急かすと、どもりながら返事をする。
「か、簡単なの、なら、一応」
「出来るって解釈で良いんだね!? ちなみにオート戦闘とかって出来るやつ作れる!? イエスかノーで答えて!」
「で……きるよ!」
言質は取った。彼女は、この場でゴーレムのコアを作れると言った。
ならば、この状況を突破する可能性はある。
私は銃に使われている火属性の魔石を【複製】し、それをレイシーの手に握らせる。
「これでとりあえずある程度戦えそうなやつ作って!」
「でも、一体だけじゃ」
何の役にも立たないよ、というレイシーの言葉に被せて言う。
「作った後は私が何とかするから、とにかくまずは一体作って! コマンド入れるとしたら人族とは別にセレナと私に味方識別、後はオート戦闘だけでとりあえずいい! なる早で頼むぞ!」
「わ、分かった! 開始、設定入力……」
レイシーはようやく私に抱きつく腕を離し、両手で魔石を包むように握り締め、即席の回路を作り始める。
彼女がそちらに集中している間に、私は次の一手をためにユリストさんに声をかける。
「ユリストさんちょっとこっち来て!」
「ふぇっ!? でも」
「ディープワン達は巻き添え喰らうから今はこっち近づけないし、ちょっとくらいヘレンから目離しても大丈夫! 何ならセレナが居る!」
ユリストさんは真っ青な顔のまま何度もヘレンと私を――正確には、ヘーゼルと私を――交互に見やりながらも、私に促されるままにふらついた足取りで私の側に来る。
「確かあんな距離から聖女の声が聞こえたのって、風属性のスペルがどうこうって言ってたよね!?」
「ひゃ、ひゃい……」
「この状況で尻尾を股に挟むな! 大和男児のプライドと武士の心はどうした! 日本人だろ!」
「今は可愛い犬耳デカパイ美少女のお嬢様ですぅ……!」
「自己肯定感が高くて凄い! その調子で股から尻尾を引き剥がせ!」
「おんちゃん、情けなか」
「ほら何回りも年下の子供にも言われてんぞしっかりしろ! 中身の年齢は前世今世合計すると私より年上でしょ! 頑張れ年配者!」
「アーゥ……ユリストヲイジメヌンデ……!」
「ネットミームを言えるなら余裕があるな、ヨシッ!」
今にも精神的ダメージで気絶してしまいそうなユリストさんに檄を入れつつ、続ける。
「ユリストさんは複合属性の雷属性使い、つまり複合元の火属性と風属性が使えるって事だよね!?」
「使えなくはないですけど、その二つは攻撃系があんまり得意じゃなくってぇ……」
「聖女にこっちの声聞かせるだけなら出来る!?」
「そのくらいならお茶の子さいさいですぅ……」
「よっしゃ出来るんならレイシーのゴーレム制作終わったらよろしく!」
「――自律人形組立・戦闘式! 起動!」
ゲーム内で何度も聞いたレイシーによるゴーレム起動時のボイスに、短い時間だったというのに、内心ようやくかと思った。
振り返れば、そこには親の顔より見たかもしれない、卵形の胴体にウサギのような長い耳と体躯に対し巨大で丸っこい手、そして段差が苦手そうな短い足のついた、どう見ても戦闘用には見えない可愛らしいフォルムのゴーレムがそこに佇んでいた。
心臓部たるコアは左胸に埋まっていて、鈍く赤く光っていた。
「出来たよ!」
「おっしゃ後は任せろ!」
ここからは、私の十八番の出番だ。
ゴーレムに意識を集中し、その存在を【記憶】し、それを元に全く同一のゴーレムを【複製】する。
「【記憶】&【複製】!」
音も無くゴーレムが増え、二体が並ぶ。どちらが元からあったゴーレムなのかは位置でしか判別つかない。
増えたゴーレムをまとめて【記憶】し再び【複製】。それを何度も、何度も、何度も繰り返す。
【複製】の力によりねずみ算式に増えていくゴーレム達は、ものの数秒のうちに、数を把握しきれない程に増えていた。
「オラーッどんどん戦えゴーレム共! これぞ環境トップの無限ゴーレム戦法じゃー!」
私の掛け声をきっかけにか、それともたまたまか、全てのゴーレムが動き始める。レイシーが作った奴らしい個体が最初に動き、ほんの数瞬遅れて次の個体が動く。複製順にか、波打つように全てのゴーレムが起動し、左胸のコアから放たれる光が強くなった。
そしてレイシーが指示するまでもなくゴーレム達は、その丸っこくも頑強で質量のある腕でディープワン達に襲いかかった。
「な、な、な……何これーっ!?」
一体しか作ってないはずのゴーレムが瞬く間に軍勢と化した光景に、レイシーは悲鳴のような声を上げる。
最早チート能力を隠す余裕も無いのでモロ出ししていたつもりだったが、彼女からしたら、今までのやり方的に私の能力は「相手の攻撃を吸収してそのまま返す」ような術に見えていたのだろう。
実際はこんな感じでコピー&ペーストが本質なのだが。
動きは鈍いものの、ゴーレム達は聖女の攻撃の巻き添えを喰らっても怯みすらしない。コアと足さえ破壊されなければ動き、プログラムされた通りにディープワン達を殴り飛ばし、叩き潰す。
段差を登れなさそうな短い足は意外にも跳躍力に関しては非常に優秀で、設定集にはアンテナだと書かれていたうさ耳パーツと併せて見ると、兎モチーフなのだとよく分かる。
その質量と重量の合わさったストンピングは兎らしい可愛さの欠片も無いし、いくら丸っこくて愛らしいフォルムでも、返り血まみれになるとホラーゲームに出てきそうな見た目になるのだが。
いやゲーム内だとアクションエフェクトしか無かったから普通に見てたけど、現実だとめっちゃミンチ肉量産するじゃん。ホラーってよりスプラッターだよこれ。CEROがZになっちゃうやつだよ。
気持ち悪くなってきた。私はグロ耐性高いけど、創作物と現実じゃ別モンなんだよ。
キッツ。
しかし圧倒的物量はディープワン達を蹴散らす武器であると同時に、彼らの攻撃を阻む盾となっている。現に、苦し紛れにか槍を投擲するディープワンも居たが、ゴーレムがそれを検知すると跳躍して叩き落としていた。
「な、何この……何なのこれ!? どうやってんのこれ!?」
「驚いてるところ悪いんだけどそれどころじゃなくて、まだやって欲しい仕事があるんだよ!」
未だに混乱から抜け出せていないレイシーに声をかける。声を張り上げると腹に力が入った勢いでせり上がってきた胃液がマーライオンしそうだが、グッとこらえる。
「これ以上あたしがやることある!? あんた一人いれば良くない!?」
「私じゃ聖女止めらんないんで! ゴーレム軍団でディープワンは何とかするから、こっちを攻撃しないよう聖女を説得してくんない!? 通信役にユリストさん付けるから!」
「あ、うん。そりゃあたしじゃないと無理なやつだ……」
「そういう訳だからユリストさん、後はよろしく!」
「ふえぇぇぇ……!」
言動だけで言うならウン十年前くらい昔に流行ったふえぇ系ヒロイン、中身は9割方腐女子にしか需要の無い幼女系おじさんの気の抜ける悲鳴を聞き流す。
聖女に関しては他に手の打ちようが無いし、後はレイシーの説得でどうにかするしかない。というか、どうにかしてもらわないと困る。ついでに胃痛の元をユリストさんに押し付けられるから一石二鳥だ。
ああ、口の中が酸っぱいなぁ。
ご清覧いただきありがとうございました!
色々落ち着きました。送ってきました。
という訳なので更新再開です!
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※2026/03/22 追記
書き忘れていましたが、オフイベにサークル参加しているため、本日の更新はお休みです。
来週の更新をお楽しみに!




