表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/72

第61話 鵺とは?

 鵺。それは猿の頭に狸の胴、尾が蛇で両手足が虎の化け物だという。

「ええっと、キメラ?」

 その説明を受けて、鈴音は思わずそう訊いてしまう。にしては継ぎ接ぎだけど。

「キメラとは違うが、まあ、見た目だけで言えばそうだな」

 これだよと、健星がスマホで鵺の絵を見せてくれる。浮世絵に描かれたそれは、確かに説明されたとおりの風体をしていた。

「これ、実際にいたの?」

 鈴音は画像を見て思わず確認。すると、この姿になったのは江戸時代くらいだろうと言い出す。

「え?」

 また解らないことをと、鈴音は顔を顰めた。ああもう、妖怪って本当に解らないことばっかり。なんでこんなにややこしいんだろう。

「最初、鵺というのは声の妖怪だった」

 そんな鈴音に、健星は仕方ないなあとばかりに説明を始める。が、立ち止まったままやっていると時間が掛かるからと移動しながらとなった。東山を目指すという。晴明神社から八坂神社にワープ。そこから徒歩で山歩きだという。

 鈴音はブーツだから山歩きは嫌だなあともう一度顔を顰めたが、無視された。しかも袴に振り袖姿。どう考えても山歩き向きではない。

「鈴音様、輿を用意させましょう。すぐに伏見稲荷の狐たちに声を掛けます」

 するとユキが輿を用意すると言い出し、そんな大仰なと驚いてしまった。

「それがいい」

 だが、健星が真っ先に賛成。

「そうだな。これから主上となる者が徒歩というのは格好が付かない」

 でもって晴明まで賛成する。どうやら受け入れるしかないらしい。

「声の妖怪ってどういうこと? はじめっからこの姿じゃなかったわけ?」

 移動方法が決まったところで鈴音は質問。ともかくこれから会う鵺に関して知らなきゃ始まらない。

「そう。初めは夜の森で不気味に鳴く声の妖怪だった。山に住む凶鳥だったんだ」

「鳥。さっきの絵には鳥の要素なんてなかったよね」

 それは原型からずいぶんと変化しすぎじゃないと鈴音は苦笑してしまう。

「まあな。ちなみに不気味な声で鳴く鳥というのは、現代ではトラツグミだと解っている」

「えっ、へえ」

 そんな不気味な声の鳥が実際にいるんだ。妖怪よりそっちがビックリしてしまう。

「それはいいとして、そんな鵺だが、まず平義家(たいらのよしいえ)という男が不気味な声に対抗して弓を鳴らして追い払ったという事例がある。弓を鳴らすのは魔を払う呪いとして一般的なものだから、効果はともかく、方法としては間違っていない」

「ほ、ほう」

 いや、そもそもそんな呪いがあることにもビックリなんだけど。世の中、知らないことが多いなあと鈴音は痛感させられる。この間の河童が現代科学を知って驚いていた気持ちが、今、めちゃくちゃよく解る。

「そこまではまだ声の妖怪なんだが『平家物語』によって、鵺は先ほどのような奇妙な姿の生き物へと変化した」

「い、いきなりなのね。って、鵺って平安時代の話なの? 平義家って、日本史で習ったよ。たしか後三年の役を平定した人じゃ」

「合っている。まあ、武勇伝の一つとして妖怪退治が加わるのはよくあるパターンだ。金太郎のモデルである坂田金時しかりだ。こちらは酒呑童子を倒したとされている」

「ああ。それでこの間、鬼退治の話が出て来た時に坂田金時がどうとか言ってたのか」

 なるほどねえと鈴音は感心。ってか、平安時代って一体どんな時代だったんだ。よく解らなくなってくる。

「で、問題は『平家物語』だ。この『平家物語』は琵琶法師によって平曲として広まった。となると、物語が途中で盛られても仕方がない部分がある」

「あっ」

「そう。声の妖怪を退治したというのは解りにくいから、奇妙なルックスの化け物に変化させたんだろう。退治したのは源頼政だけどな。平治(へいじ)の乱では平清盛(たいらのきよもり)に味方した武将だ。だから『平家物語』に出てくるのは不思議じゃない」

「なるほど」

 意外と歴史に繋がっている妖怪なんだ。鈴音はもうビックリしか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ