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第62話 この二人、似てる

「ともかく、鵺というのは伝承の過程で出来上がったと考えていいだろう。そもそも、ルックスも書物によっては違う形で描かれてることもある。『源平盛衰記』だと背が虎で手足が狸、尾は狐という具合だ。だから得体の知れない妖怪なんだよ。しかし、江戸時代にはさっき見せたような浮世絵が出てきて、多くの人が鵺はキメラのような姿をしたものだと認識するようになる」

「へえ。イメージしやすくなったんだ」

「そう。妖怪にとってそれが重要だ。発生の原因でもある。つまり、人間に認識される姿を得ると、それで固定される」

「ううん」

 解ったような解らないような、再び。そもそも妖怪って人間が作り出すのか。それが今、人間とトラブルにならないように新しい王様を選出しようってなってるって、何だか皮肉。

「仕方ない。文化の変容と言ってしまえばそれまでだが、妖怪が多く生み出されたのは江戸時代だ。人間はそこから変化していったが、妖怪は江戸文化に置き去りにされている。だからトラブルになるんだ」

「へえ。まあ、そうよね。陰魔羅鬼が学校に現われただけで不良が変になっちゃうんだもん」

 あれは困るかあと鈴音は腕を組む。と、そうしている間に移動が終わって八坂神社に到着した。

「大国主命様に話を通しておいてもらって助かった。俺だと神格が違うから、なかなか通行の許可が出ないんだよ」

 無事に八坂神社に到着して、晴明がよかったとほっとした顔になる。神様の世界にも序列があるらしい。

「それはそうだ。この陰陽頭なんて新参者の下っ端だろうな。八坂神社の祭神は素戔嗚尊すさのおのみことだぞ。大国主命から見たら父親だ。って解ってるか?」

「わ、解りません」

 そんなすらすら神様の名前を言われても、こっちは妖怪すら知らないんだからねと鈴音はきっぱり言い切る。

「清々しいほどにあっさり認めたな」

「まあまあ。いわば俺は平安時代の人だけど、ここの神様は神代、ええっと、現代に合わせると古墳文化の頃の人たちだ」

 晴明が仲裁に入ってくれ、さらにはそう教えてくれる。ああ、なるほど、ここの神様は前方後円墳の時代か。じゃあ、めちゃくちゃ年上だ。

「なんとなく解った」

「今はそれで大丈夫。王となれば教育係の方が一から教えてくれるから」

「うっ、それは嬉しくないんだけど、避けては通れないんだよねえ。今も、妖怪の勉強が進んでいるわけだし」

「仕方がないよ。王とは様々なことを知る義務があるものだ」

 晴明はそう言ってにっこりと笑う。なんだろう、言い方はソフトなんだけど、健星と似たような空気を感じる。

「いいか。俺の元である小野篁も変な奴だったが、こいつの元になってる安倍晴明だってどっこいどっこいだぞ。まあ、こっちは篁と違って政権に取り入るのが上手かったが」

「何を言うのやら。篁さんだってあれだけやんちゃして出世してるんだから、ただ悪口ばっかり言ってたわけじゃないでしょ」

「あのぅ、迎えの狐たちも到着しましたよ」

 バチバチとバトルする歴史上の偉人たちに、ユキが遠慮がちに声を掛ける。

 今は取り敢えず選挙を無事に終えること。そのためには妖怪を説得する、だ。

「そうだった、行くか。陰陽頭、弓を忘れずに」

「解ってるよ」

「はあ」

 この二人に挟まれて、私はどんどん王様にされていくのね。鈴音はそんな二人について行きつつ、溜め息が漏れるのだった。

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