第33話 大混乱!?
ともかくこの先は勝手にやってくれていいから、と月読命は笑顔だった。それに、謁見はこれでいいのかと鈴音は頭が痛くなってくる。
「まあ、お前が座る椅子があれだって解っただろ」
それに対し、健星は月読命座る椅子を指差す。
「いや、それが解っても・・・・・・まあ、こんなところに住むことになる、のかあ」
鈴音は改めて清涼殿の昼御座所を見て、はあと嘆息してしまう。つい数日前までただの女子高生だった自分が、これから選挙を乗り越えて王様になってここに住む。もう、何が何やらだ。
「ともかく、まずはこの清涼殿の中から案内が必要よ」
そこに紅葉が次にすべきことを、すかさずアドバイスしてくれた。それに月読命はそうだなと手を打ち、どうぞと立ち上がった。
「健星もついてこいよ。お前だってここに住むことになるんだぞ」
「それは遠慮したいですね。俺はあくまで宰相、つまりは太政大臣であって、後宮に入るわけじゃないですから」
「何を言っている。鈴音と結婚するんだろ?」
「は?」
「へ?」
月読命、一体何を言っているんだ。鈴音は呆気に取られ、ユキは思わずへっと言ってしまった。健星に至ってはゴキブリを見るかのような視線を月読命に送っている。やっぱり一番失礼な男だ。
「ああ、そこの狐君もいるのか。すでに側室まで決定だな」
しかし、月読命はそんな冷たい空気をものともせず、さらなる爆弾を投げ込んでくれる。そ、側室って、えっと、私は女ですって主張すべきと鈴音は大混乱だ。
「わ、私はまあ、側室でも」
が、ユキがぼそっとそんなことを言うので、鈴音は顔がもう真っ赤っかだった。ユキ、なんで受け入れてるの?
「ははっ。じゃあ、狐君は藤壺あたりかなあ。健星が弘徽殿だな」
「だから、俺は後宮に住まない」
勝手に部屋割りを考えている月読命に、ついにブチ切れた健星はずずいっと月読命に詰め寄ると、低い声で静かに告げた。それに、ヤバいと気づいた月読命はカクカクと頷いた。
「じょ、冗談だよ。ほら、ユキ君だっけ。君は確実に住むんだから行くよ」
こうして何だかよく解らない騒ぎはあったものの、清涼殿見学へと出掛けることになる。というより、清涼殿の後ろにある後宮ツアーだ。
「えっと、お母さんもここに住んでるの?」
月読命を先頭に歩きながら、紅葉もここに住んでいるのかと鈴音は確認。それってつまり、さっきのように、月読命とそういう関係にあるってことなのかと、ドキドキしてしまう。
「住んではいるけれども、あくまで住み込みの従業員よ。見て、多くの女官がいるでしょ」
紅葉は心配ないわと鈴音の頭を撫でると、ほらっと近くの部屋を指し示す。確かにそこには女房装束を纏う女性たちがいて、書類整理をしていた。ただし、たまに尻尾があったり獣耳の人がいたりして、ここが冥界の中の後宮なんだなと知ることになる。
「じゃあ、ここって従業員宿舎でもあるってこと?」
「ええ。もちろん王のお渡りを期待する子もいるでしょうけど、月読命様は誰かを妃にすることもないから、まあ、お遊びってことね」
「へ、へえ」
それって大人の危ない遊びってことですねと、鈴音は思わず前を歩く月読命を睨んでしまう。
「ほほっ。恋の駆け引きを楽しみたいだけなのよ。ここを平安京に模して作ったのも、まったりゆっくり過ごしましょうっていう月読命様のご意向だから、そういう文化も取り入れただけよ」
目くじらを立てる鈴音に、紅葉はころころと笑ってくれる。なるほど『源氏物語』の世界というわけか。




