第32話 女性が王様で大丈夫?
「というわけだから、俺から君たちに何か言うことはない。妖怪たちを正しく統治し、生きやすいようにしてくれればいいんだ。今までは俺がのほほんとしていても、それでどうにかなったけれども、それじゃあどうにもならなくなったと言うのならば、俺はとっとと退くまでさ」
月読命は何か文句あるかと、堂々と言い切ってくれた。すごい、ここまできっぱりしていると清々しい。
「一任して頂くのはいいですけれどもね。今や適当な半妖の姫が現われたんです。譲位でいいんじゃないですか?」
にやっと笑って健星は意地悪く言う。それでは誰も納得しないことを解っていて試すのだから、本当に質の悪い男だ。顔は良くても性格最悪。
「無理だね。俺はもう煩わしいのは嫌」
そして月読命、譲位の場合は自分があれこれやらなきゃいけなるなるだろと、きっぱり拒否してくれた。しかも笑顔で。本当に清々しいまでに徹底して手抜きをしたい人であるらしい。
「解ってますよ。ともかく、反対勢力の鎮圧。同時にこの半妖の姫がいかに優秀かの宣伝。そして、自らが王と選んだこの人の言うことならば従うと思わせる。これが選挙の意義です」
でもって健星、あっさりと選挙を行う意義を説いてみせた。それに王も紅葉もそのとおりと大きく頷く。
「あの、一つ質問していいですか?」
しかし、このままでは鈴音はあれよあれよと選挙活動に巻き込まれ、最終的には王になってしまう。それを承知するしかないとしても、質問くらいはさせてもらいたい。
「何かな?」
月読命、何でも答えるよとにこにこ。本当にイケメンが台無しになるのほほんキャラだ。顔に締まりがない。
「女性が王になることに対して反対ってないんですか?」
一先ず、鈴音はそこから訊いてみることにした。ほら、今の世の中、女性の社会進出とか言いつつ、会社も政治家も男ばかりじゃん。それを考えての質問だった。しかし、全員がぽかんとした顔をしている。いや、健星に至っては何を言ってるんだって顔をしている。
「だ、だって」
「お前の耳はただの節穴か? 初代の王はイザナミ様だったんだぞ」
「え? ん?」
イザナミ様だったんだぞと言われましても。鈴音は首を傾げるしかない。すると健星はマジかと呆れ顔だ。
「そこから教えなきゃならねえのかよ。お前、国生み神話くらい知らないのか?」
「国生み? ああ、神様が日本列島をポコポコ作ったっていう」
「雑。認識が恐ろしく雑」
知ってるよと答えた鈴音に、健星は力一杯雑と言ってくれる。そんな雑に力を入れなくても。鈴音は助けを求めるようにユキを見たが、ユキも額を押えていた。あれ、駄目だったらしい。
「まあいい。その国を作った神様がイザナギとイザナミだ。イザナギが男でイザナミが女。ここまではいいな」
「は、はい。ん? ということは初代の王様は」
「女性だ。よって何の問題もない。むしろ女性がなってくれた方がいいんじゃないか、くらいなもんだ」
「ま、マジか」
「マジです」
現世より冥界の方が女性の社会進出は進んでいるのか。鈴音はびっくりしてしまうのだった。




