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序節 ― 罪は、消えない
人は、罪を消したがる。
誰かを傷つければ、謝る。奪ったものがあれば返し、壊したものがあれば償おうとする。それはきっと、必要なことなのだろう。
けれど、どれほど深く頭を垂れても、起きたことそのものは消えない。傷つけた日も、流れた血も、泣いた者がいたことも、なかったことにはならない。
忘れてしまえば、罪はまた同じ場所に根を下ろす。抱えたまま潰れてしまえば、その先へ運ぶ命まで失われる。
ならば、消えない罪は、どこへ行けばよいのだろう。
土へ還すのか。血の中に残すのか。それとも、別の何かへ変えて、生きていくのか。
その答えを、わたしはまだ語らない。
ただ、ひとつだけ知っている。
あの白い獣は、
赦すために生まれたのではなかった。




