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序節 ― 死者を抱く水
川へ落ちた葉は、やがて沈む。
流れの底で色を失い、柔らかく崩れ、泥に混じる。その欠片を小さな虫が食み、菌糸が抱き、目には見えないほど細かな命が受け取っていく。
腹を上にして流れてきた魚も、岸へ辿り着いた獣も同じだった。
肉はほどける。
骨は残り、それもいつか砕ける。
血は水へ、花粉は風へ、腐ったものは泥へ渡り、そこからまた根が伸びる。
わたしは、それをずっと見てきた。
死んだものは、どこかへ消えるのではない。
ほどけて、
次の命へ渡る。
だから、それを「帰ること」と呼んできた。
水は死者を拒まない。
泥も、根も、虫も、花も、死んだものを穢れとは呼ばない。
ただ受け取り、ほどき、別の命へ渡していく。
けれど。
もし、その流れの途中で止められたなら。
肉もほどけず。
骨も眠れず。
死んだというのに、次の命へ渡ることさえできなかったなら。
その者は、いったいどこにいるのだろう。
ほどけることを許されなかった死者は、
どこへ帰ればいいのだろう。




