いつかの花園
昔々、仲の良い蜂鳥とお花の妖精がいました。蜂鳥の名前はフェザー、お花の妖精の名前はプリムラです。
二人は今日もお喋りに夢中、湖を眺めながら、一日中お喋りしていました。でも、それを寂しそうに眺める湖の妖精がひとり。彼女の名前はフリージア、彼女は優しい湖の妖精だけど、恥ずかしがり屋さんで素直ではありません。それに湖から離れることができないから、いつもいつも遠くから、仲の良い二人のことを羨ましそうに眺めていたのでした。
見てない振りをして湖に波を立てたり、水玉を作ったり、湖で泳いだりして、一人で遊んでいました。よし、今日こそ話しかけようと思っても、中々勇気が出ません。そんなフリージアが、今日もやっぱりダメだったと落ち込んでいると「やあ、こんにちは」 と一人の男の子がやって来ました。フリージアは素直じゃないから、ぷいっと横を向いて知らん振りします。でも、その男の子はめげずに言いました。
「僕はお友達が欲しいんだ。良かったら、お友達になってくれないかな」
彼女はとても迷ったけれど、一人は寂しいし、ずっとお友達が欲しかったので「いいわよ。お友達になってあげる」と、内心はとても嬉しいのに、ぶっきらぼうに言いました。
その日から、彼女と男の子はたくさんお喋りをしました。空のこと、風のこと、山のこと、海のこと、たくさんたくさん、お喋りしました。でも、ある日から男の子は来なくなりました。フリージアは心配して何度も名前を呼びました。でも、男の子は来ません。とても寂しくて泣いていると、それに気付いた蜂鳥のフェザーが、心配して飛んで来ました。
「あなたは湖のフリージアね? どうして泣いているの?」
フリージアは言いました。
「あの男の子が来ないの、お願い、フェザー、あの子を探して来て。お願い」
するとフェザーはどんと胸を叩いて、男の子を探しに行きました。怪我をしていたらどうしよう、病気になっていたらどうしよう、フリージアは心配でした。でも、それからすぐに、フェザーに連れられて男の子がやって来ました。
「フリージア、君が彼女たちと一緒にいられないか、ずっと調べていたんだよ」
男の子は知っていました。フリージアが彼女たちと一緒にいたいこと、本当は寂しいこと、湖から離れられないこと。フェザーとプリムラも本当はフリージアと友達になりたかったけど、フリージアは一人が好きな変わった子だと思って声をかけられなかったのです。男の子はそれが分かって、三人が一緒にいられる方法を探していたと言います。
その方法はとても簡単でした。まん丸のお月様が明るい夜、湖の傍でお願いすると音もなく木菟がやってきて、お願いを叶えてくれるというのです。男の子は夜まで待って、木菟にお願いをしました。すると木菟はフリージアの傍までやってきて、やさしい翼で彼女を包んで、プリムラたちの所まで連れて行ってくれたのです。
「初めましてフリージア、私は花の妖精プリムラ、私とお友達になって欲しいの。きっと、三人でお喋りするのは楽しいよ?」
「私は蜂鳥のフェザー、あなたのことがずっと気になっていたの、あなたのことを教えてくれない?」
二人はフリージアが中々言い出せずにいるのが分かって、自分たちから言いました。フリージアにもそれが分かって、勇気を出して言いました。
「私は湖の妖精フリージア、私とお友達になって欲しいの。二人のことが前から好きだったの」
フリージアの気持ちは二人にしっかり届いて、こうして三人はお友達になりました。そのあと、不思議なことが起きました。願いを叶えた木菟が湖へと飛んで行って、男の子を連れて戻って来たのです。
何と実は、その男の子はお空の向こうからやって来た心優しい天使なのでした。天使の男の子はフリージアの想いを知って、心配して、お空から駆け付けて来てくれたのです。天使の男の子は言います。
「僕もお友達が出来て嬉しかったよ、フリージア。でもね、お願いを叶えたら僕は帰らないといけないんだ」
「次はいつ来るの?」
と、フリージア。すると天使の男の子は笑って言いました。
「同じ日の夜に、必ず来るよ」
天使の男の子がそう言うと、木菟は彼の翼になって、遠い遠いお空の向こうへと帰って行きました。
その夜から、三人はずっと一緒でした。雨の日も、風の日も、暑い日も、寒い日も、そして、まあるい地球がぐるっと回って同じ日の夜になった時、
「やあ、みんな、遊びに来たよ!」
「やったあ! わあい! お喋りしよう!」
三人は天使の男の子とまた会えたのが嬉しくて、まん丸のお月様を見上げながら、フリージアが作ったきれいな湖の、柔らかい水の絨毯の上で、たくさんお喋りをしました。天使の男の子とその翼の木菟は、三人が見たことのないお空の向こうのお話をたくさんたくさんしてあげました。
するとそこへ、天使の男の子のお話が聞きたくて、たくさんの動物たちがやって来ました。大きな優しい熊さんは焼き菓子を作って来てくれて、さあ、みんなで食べよう! と言ってくれました。
あまくておいしいお菓子は、たくさんたくさん、ありました。たくさんの動物たち、たくさんのお花たち、きれいな湖の上、楽しい楽しいお茶会は、まん丸のお月様が眠るまで続きましたとさ。
おしまい




