アウゼンハイド凱旋 後編
━━同刻 城下町━━
「魔法書ってありますか?」
スキルショップへと入ったアリアとセピア。
「あるよ、中級……上級あたりかな?」
「はい」
アリアは聖属性の本を。
セピアは全属性のマルチ書を。
支払いを済ませてセピアが店を出ようとした、その背後でアリアが再びカウンターへ。
「……奥の伝って、、ありますか?」
「あー、聞いたことあるね~。あってライトリアス…。基本的には皇国にしかないんじゃないかな?」
「ありがとうございます」
そのまま近くのテラスで本を読む二人。
暖かな風と、咲き乱れる美しい花と、その花で作られた紅茶とケースに舌鼓をうつ。
祭りで賑わい、静かに読書……という雰囲気ではないけれど……。
「……一緒に行くかと思った」
「えっ!?」
唐突な言葉に、ゴクッと紅茶が喉を鳴らす
「シゲ殿と」
「う、うん。行こうかなぁとか、思ったりはしたんだけど……」
フラワーケーキを一口、頬張る。
「……私で、解決できる事だと良いけど」
「あはは」
視線が泳いで、、そのままアリアは王城を見上げた。
優雅にティーカップを口に運ぶセピアに、アリアは意を決して話しかけた。
「あ、あのね、セピアは……好きな人、いる?」
今度はセピアが紅茶を喉に詰まらせる番となった。
「………ご、ごめんなさい」
「い、いえ、大丈夫です。いるかと言われたら…」
ふっと視線はどこかへ泳ぐ。
「え?パーティーにいる?」
「まさか!」
「そっか、良かった」
良かった、好きな人がかぶってなくて。
ほっと胸を撫で下ろす。
「…………でも、アリア殿は知ってる人かも、なんて」
「え!?」
「たぶん、特別講師として騎士学校でお会いしてるかと…」
そこから盛り上がる恋話。
アリアは勇者の、セピアは気になる人の話を…。
思い出話をする度に、アリアの頭は少しだけ砂嵐が入ったかのような違和感と。
「……シゲ殿は昔からあんな感じ?」
「……うん。そう、昔から………。の、はずなんだけど……」
おかわりの紅茶がカップに注がれる。
おまけです、と、フラワークッキーが2枚。
「はず、ですか?」
サクサクとクッキーを食べる音
そして、意を決したようにセピアを見つめるアリア……
「あのね、セピア。シゲの事なんだけど……」
そして、
【エラーが検出されました】
【レポートを提出しますか?】
という謎のテロップがシゲの目の前に現れ、【イエス】か【ノー】の文字が。
「え?何?」
「どないした?」
「い、いや、なんかエラーが検出だとか、レポートがどうとか……」
「あー、あるある。エラーはヤバいから、ハイにしとけばえーんちゃう?」
言われるがまま、【イエス】ボタンをタップ。
【エラーを修正します】のテロップ、そして……
ザザッと謎の砂嵐のようなものが視界を横切り……
「…………なんで?宿屋の前に?」
秘宝書庫にいたはずの二人は宿屋の前に立っていた
「ほんまや……」
「まぁ、結構調べたし……。続きは明日にするか」
いつの間にか戻る時間となった空の色を見ながら、宿屋へと足を向ける
「晩御飯なんだろね~」
と、宿屋に入って行くシゲのその後ろで……
「…………あれ?エラー修正?なら、再起動は?」
凍慈のその言葉は、シゲの耳には届かない小さな呟きだった……
晩御飯を食べながら、シゲと凍慈は言葉少なめだ。
先ほどの謎の現象にくわえ、何だか少しだけ違和感がある。
「宿屋に戻ったの、再起動されたんかもな」
再起動、修正。そんな話を聞くと、ここがゲームの世界なんだなと再認識させられる。
「まぁ、最近のゲームはようあるで。昔の頃のネットに繋げられへん時代のなんて、一回バグ起こったらおしまいやったんや」
それに比べたら、なんて話をしているがシゲは右から左。
もし襲撃があるとすれば今夜か明日、もし、今夜だったら…。
そんな不安を胸に……、ベッドへ入ると不思議と一瞬で眠りに落ちた。




