闇夜の攻防 ㊤
━━━ああ、今…夢を見ている━━━
そう思う程、身に覚えのない場面だった
後ろ姿から始まるその景色
「“ぼくはゆーしゃ、ゆーしゃ”」
差し込む陽の光に照らされ、後ろ姿と揺れる髪
金とも銀ともとれる色は太陽に透けてすら見える
歩く速度にしては速く、長い廊下を走っていた
「“じゃしんたいじへたびにでる~♪”」
幼い声、小さな背中、大人ではない、小さな子供
「もんすた~なんてこわくない~」
左右には美しい薄桃色の花畑が広がっている
「“だって、ぼくはゆーしゃ♪”」
見目麗しい、男女どちらともわからない子供はバルコニーへ
薄桃色の花を摘むと、子供はにこやかに微笑む
その瞬間、場面が暗転し……
その花はハラハラと散って落ち……
水色の瞳から大きな涙が床に落ち波紋のように広がった…
「…………!!?」
朝の日差しで目を覚ましたシゲ。
「今の、、何?」
ふと周りを見ると、部屋には誰も居ない
時計の針は8時半を指していた
「まだ寝とったんか」
ガチャっと扉が開くと、凍慈とアリアが立っていた。
「もう!ほんと寝坊助なんだから!」
ああ、なんだかそのセリフ懐かしいな…
初めてアリアと出会った日の事を、ふと思い出した
「ね、今日は皆で王城に行こうって話してたの」
「え?良いの?」
「何を調べてるのかは知らないけど…、私も魔術に関して珍しい本があったらって思って」
流石に異世界へ帰る本を探してます!とは言えないけど…。
「助かるよ」
朝ご飯のサンドイッチを食べながら王城へと向かう。
セピア、ガルーダ、リアも今日は一緒だ。
「秘宝書庫に入れるなんて凄い事よ」
「アルヴィーも僕に言ってくれたらよかったのに~」
そんな和気あいあいとした会話の中
「…………」
凍慈は無言のまま、「全員一緒か」と、少しだけ険しい顔をした。
「あ、あの花!シャイニングって花だよ、春先にしか咲かないのに、珍しいね」
アリアが指差すバルコニーのその先には……
「夢で見た花………」
薄桃色の、日本の桜のような見た目の花が王城の庭一面に咲き乱れていた。
「…オルブラッドにしか、咲かない花なんだって……」
「………え?」
「勇者の眠る地にのみ咲く花、やっけ」
そう言った直後、アザリアスが正面から現れる。
「今日も調べ物か?」
「入っても良いなら……」
「どうせ私以外見る事もない場所だ。好きに調べたら良い」
再び秘宝書庫へと案内されると、シゲたちはバラけて各々本を探しはじめた。
「…………アカン、やっぱ無いか…」
「だよね」
陽も落ちるかという夕暮れ。
シゲと凍慈だけは肩を落としていた。
「夕飯を一緒にどうか?だって!」
そんな二人の気持ちを知ってか知らずか、リアはアザリアスに招待されたー!と、目を輝かせていた。
「いや、待て、一旦帰ってやな」
「王様のご飯、どんなだろうね?」
アリアはワクワクしながらセピアと話をしている。
「そういやお昼食べてないから、お腹めちゃくちゃ空いてる」
よし、行こう!なんて呑気なシゲの首根っこを掴む凍慈。
「…………どあほ!先に買い物や!」
「えー、お腹空いた~」
城下町へと買い物へ向かう。
武器防具を見に行けば、更に表示が細分化されていた。
「こっちがクラス3の装備や」
性能の異なる2種類の装備が並ぶ。
「なんで2種類?」
知らなかったら間違って買ってしまうところだった…。
「クラスチェンジ終わってない人向けや」
「あ~、なるほど……」
購入していけば……相変わらずの金欠だ。
いや、6人分のフル装備ってちょっと大変なんだけど!?
「いや、なんならちょっと足りない!」
「しゃーない。これ、換金アイテムな」
フェンリル戦で手に入れた【大きなサファイア】を売って揃えたが…。
毎回毎回思うんだけど、大きな宝石の癖に6万ルートっておかしくないか!?
「現実だったら100万くらいは余裕でするだろ!!」
「そんなもんや、なれろ」
「やっぱり理不尽!!」
王城へと戻ると、料理の並ぶ部屋へと案内される。
サラダ、肉料理、スープ、飲み物。
【宵闇のおもてなし】のテロップを他所に食べれば、美味し過ぎて皆無言で食べ進める。
「なにこの肉…美味すぎる…」
牛?豚?どちらとも言い難いステーキはほどよい脂とほどよい柔らかさ。
「…アンドラカウラーの肉だ」
「え?」
アン…?なんだって?
「えー!?あのモンスターこんな美味しいんだ」
あ、、モンスターのお肉なのね。
まぁ倒した時にたまに肉とか卵とか手に入るけどさ。
「この味はどうやって再現しとるんや……」
デザートのアイスを食べ終わると、アリアがすっと近くへ
「ね、シゲ。ご飯食べたし、バルコニーに一緒に行かない?」
いつものように、ニコッと笑うアリア。
「花火が、上がるんだって。一緒に見ようよ」
ふっと切り替わる場面
[花火か。良いね、行こうか]
[うん!]
夜の月明かりに照らされた廊下を歩き、バルコニーへ
バルコニーへ出たと同時
[わぁ!綺麗!]
ドーンと花火がうち上がる
色とりどりの花火が夜空を彩り、バルコニーからの風にアリアの髪は靡く
[でも、不思議。この花火は…なんだか寂しい]
[……何事にも意味はある。この花火も祭りも…。僕らが知る由のないだけで、ね]
にこっと笑うと、アリアもそうだね、と笑った
[貴方との旅も……あと少しになっちゃったね……]
[………寂しい?]
[わからない。世界が平和になることを、寂しいとは思わないし]
[僕は、寂しいよ]
その言葉に合わせるように、背後ではドーン!と大きな花火が花を咲かす
キラキラと花火の明かりに照されながら、肩をすくめて笑った
[だって、僕はこの瞬間でしか……]
その言葉を言いきるよりも早く……
アリアの顔がアップになり、、そのアリアの瞳には……
[……え?あれ、なに?]
巨大な飛龍が映し出された………
100話までお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございます。
100話記念だというのに、今回はやや重たい話になりました( ̄▽ ̄;)
オルブラッド編には、まだまだ多くの謎が残されています。
その答えとなる物語は、本編終了後の外伝にて、皆様へお届けする予定です。
ちなみに外伝は、すでに全て製作済みです。
「いつか書けたら」ではなく、ちゃんと皆様にお届けできるところまで準備しておりますので、そこも楽しみにしていただけたら嬉しいです。
そして、3章も残り僅かとなりました。
4章が、いよいよ物語のラストとなります。
最終話、そこへ至るまでの流れ、重大EP、そしてエピローグまで、すでに作成済みです。
ここまで一緒に旅をしてくださった皆様に、最後までこの物語を見届けていただけたら幸いです。
100話という一つの節目を迎えられたことに、改めて感謝を。
これからも最後まで、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m




