オルブラッド散策
「今日と明日はこちらの宿をお使いください」
オルブラッドの騎士に案内された宿
「国から出るのに2日もかかるんか~」
「ワンダの国の場所は極秘だからね。アザリアス殿がやり取りしてくるっていうし、ラッキーだと思うしかないよ」
凍慈とリアの会話を他所に、アリアがシゲのところへ走って来た。
「……ケガ!見せて!」
あ、やっぱりバレてたか…
「二度と、あんなムチャしないでね、お願いだから」
回復魔法がシゲを包む
アリアの瞳には涙がにじんでいて。
「ごめん、もうムチャはしない」
そう言いつつ……
シゲの頭の中は既に、アルヴィーに聞いた話を思い出していた。
━オルブラッドにある、秘宝書庫。ライトリアスにある、マナの全能書簡。そして……皇国のバハムートなら…。何か手がかりを知ることが出来るかも知れません━
「………俺、もう一回だけ……アザリアスのところに行ってくる」
用事は一度に終わらせろと言われそうだけど…。
「流石に、、もう大丈夫だとは思うんだよな、思うだけ…」
「………僕は街をぶらぶらしとくよ、アザリアス殿の印象悪くしたくないし」
なんて奴だ!少しは俺の心配もしろよ!
いや、、そんな「シゲ大丈夫?」みたいなリアは気持ち悪いけどさ!
「あのアザリアス見ても評価下がらんの凄いな…」
呆れたようにそう言った凍慈を見つめるリアは、どこか真剣な顔をしていた。
「…………アザリアス殿の気持ちは、、わかるから」
少し、悩んだのか。
ほんの少しの間のあと、珍しく言葉を選ぶように話し出した。
「今は、、シゲ。僕も君が勇者だと認めてるのはわかって聞いて欲しい」
「認めてくれてたのか……」
「そりゃね。でも、僕もね。ジェダが勇者が良かったと思った事は間違いない。だって、彼には“その素質”があるんだから…」
耳の上をすっと触る仕草と
肩を少しすくめる動作をして、リアは笑ってみせた。
「一度もそう思わなかった人だけが、アザリアス殿を責めて良い」
珍しく、セピアもそっと目線を外した。
そういえばセピアも、初めてあった時に挨拶したのはアリアだったな。
ジェダを知る者たちにとって、彼が勇者になる未来は、それほど自然なものだったのだろう。
「何度も言うのは好きじゃないから、もう一度だけ言うけど。君が勇者なのはもう、わかってるよ」
それだけ聞けたら十分。
なんなら、ちょっと照れ臭い。
「よし、じゃあ俺はアザリアスのところに行くかな」
照れたのをバレたくなくて、話を無理矢理変えるように王城を見つめる。
「俺も一緒に行こか?」
「うん。凍慈は来てくれた方が良いかも」
帰る方法だし、、ゲームの知識は豊富だし……。
「じゃ、僕は少しぶらぶらしてくるかな」
「………あ!ガルーダはリアの見張りしといてや!ほんまアホほどお菓子買いよるからな!」
リアはぴゅ~と口笛を吹いて目線をそらす。
あ、この顔は絶対にまた色々買うつもりだったな。
「承った」
「私とアリア殿は魔術書を買いに行って来るわ」
「そろそろ新しい魔法の呪文、いるもんね」
あ、魔法ってもしや購入システムなのか?
なんだか納得いかないけど、、魔術書を買って強くなって貰おう。
「よし、、散開。晩御飯までに宿に集合で」
全員が3方向へと行動を開始
「………あれ、普通に門開いてる、あれ、普通に通れた」
馬車で来たときはなんか念入りに調べてなかったっけ!?
「まぁ、そんなもんやろ、、ゲームで行き来出来へんとかなるの、ヤバいイベント始まる前くらいなもんやで」
「何それ怖い!いや、それ門の役目果たしてない!」
背後ではすでにリアが3段の丸アイス片手にワッフルを購入している。
「ガルーダも食べる?」
リアは相変わらず甘くて丸いものが好きなんだな
「私が甘いものはそんなに得意じゃないのは知っているだろ…?」
コーヒー片手にリアの後ろを歩くガルーダ。
あの二人同期で仲良いんだった、、じゃない!!リアの爆買い止めろー!!
「………ガルーダも王子やったって事は…、、金銭感覚もしかしてヤバいんか…?」
「マジかー!!」
よし、、これからはお小遣い制にしよう。
門を歩いて通過する。
城までは更に長い跳ね橋を歩いて行く。
「………馬車だと一瞬だったのに」
行き来用の歩道と馬車用の道が分けられた、幅の広い橋。
隣を軍馬が走り抜け、遠くでは兵士たちが忙しそうに行き交っている。
そうだ、オルブラッドは戦時中の国。
華やかな街並みの中にも、どこか張り詰めた空気が残っていた。
「ゲームプレイやと更に一瞬やで」
ダッシュボタンで~と話す凍慈の話しを聴きながら、橋から見える景色やオルブラッド城を見上げる。
実際は200メートルくらいを歩くのだけど、、こんな景色を堪能しないなんてちょっと勿体ない。
「馬車って、あんなにお尻痛いと思わなかった」
馬車がガタガタと音を立てて通り過ぎ、ふとそんな感想がぽつりと出た。
「それな」
そして、跳ね橋を通り過ぎると、簡単に入れた城の中。
本当に警備事情不安になるんだけど!?
「………聞き忘れか?しばし待て」
真っ黒い大きな鳥を腕に
大鷲サイズのカラスというのか……
兎に角、その鳥の首にあるケースに手紙をくるっと丸めて入れると、窓から放した。
「…………ああ、そうか。秘宝書庫か」
「え?」
「アルヴィー殿から連絡は受けている」
目当ての物が有れば良いが…
その呟きは、シゲたちには届くことのない小さな囁きだった




