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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
邪神へ続く道
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アザリアスと勇者 ㊦



「開始」


の、瞬間。

バトルフィールドと特殊なHPが表示される。


「(タイマンバトル、、トリトルの時以来だな…)」


一歩、踏み込むアザリアスの動きに連動するように、シゲは中盾を構える。


「(実力差があるなら、方法は一つ…)」


来ないならこちらから行くぞと声が聞こえた瞬間だった


「ダークセイバー」


その言葉を発したアザリアス


透明な剣が、、一気に真っ黒に染まっていく


 

「闇哭き」

 


一瞬で間を詰められ、振り下ろされる剣を見ながら……


体は勝手に動くかのように盾で剣を受け流し……


「カウンター!!」

 


バシッと音を立ててアザリアスの胴体へ


周囲からはどよめきが起きる


「アザリアス様から…先に……」


少しだけびっくりした顔をしているアザリアスと、勿論オルブラッドの騎士たち


「余裕ぶっこいとるからや!」


凍慈は背後で行け行けー!と応援に熱が入っている


それとは裏腹に、シゲの背中は…尋常ではない量の汗が吹き出していた


「(……受け流しは、、もう使えない……)」


左腕の痛みと、、中盾に入った明らかな亀裂と


そして、アザリアスと同程度減ったHPと

 


「……少し、なめていた事は詫びよう」

 


右の腰から引き抜かれた剣に、右手は汗が滴る


「………あはは、そういや二刀流だった」


 

聖剣に手をかける


二刀流には二刀流!なんて言うつもりはないけれど…


「(せめて、、必殺技で削れれば……)」


再びアザリアスが踏み込む


右上段から振り下ろされる一撃


剣を中盾のかわりにして受け流し、カッと光る聖剣


辻切りの文字には亀裂が入り、、そして別の文字へ


 

「竜巻剣!!」

 


突風が巻き起こり、アザリアスを少しだけ後退させた



【辻切り】は【竜巻剣】にランクアップしました!のテロップを見てられる程の余裕はない

 


アザリアスの真っ黒い瞳は静かに揺らめき、、再び透明な剣へと姿を変える


「………ジェダを選ばぬ剣などいらぬ」



背後のオーディンの腰の剣が連動するようにカッと光る


 

「全てを切り裂け、、━斬鉄剣━」

 


その聞き覚えのあるような、、そんな単語と同時に目に見える斬撃がシゲへと飛んで来る


  

「………アカン!!避けろ!!!」


 

「(無理だ、、)」



その直後だった


見覚えのある黄金の槍が二人の間に突き刺さる


斬撃は黄金の槍を弾き飛ばしはしたけれど、シゲに当たることはなく

 


「アザリアス!!」

 


聞き覚えのある声が響き渡り、振り返るとそこには……


 

「ネル」

 


アザリアスの短い声と、ネプチューンがそこには立っていた。


「……大丈夫か、シゲ殿」


完全に腰が抜けたシゲに手を差し出して起こす、その背後。


「決闘の邪魔をするとは、野暮な男になったな」


「それを私に言うのか、アザリアス。勇者を殺そうとするなど、、騎士の風上にも置けぬ男になったのはどちらだ」


咎めるでもない、諭すような、そんなトーンでアザリアスに言葉をかけるが、彼の耳には響かない。


「……勇者ではない。私に勝てぬ勇者など、認めない」


そして、小さく“ジェダなら私などには負けない”と。


「………………目を覚ませ」


ゆっくりと立ち上がったシゲが、アザリアスを見て口を開いた。

 


「ジェダから、貴方に伝言」


「………?」


「我が心は歌を歌っていた頃のまま」

 


どういう意味かはわからないし、本当はジェダの力を借りては違うかなーと思ったけれど…。


「(ジェダが歌を…、、あんま想像出来ないな……)」


カンっという、、アザリアスの手から剣が滑り落ちた音が響いた。


目を見開いたまま、でも確かに……アザリアスの瞳には小さな少年が歌を口ずさみながら走り抜けた…

 


「(アザリアスには、、この言葉が必要だったんだな……)」


 

ネプチューンがほっと溜め息を吐き、アザリアスに何かを渡す。


『✕◯◯▲✕………』


「…………無理だ、私には出来ない、、フアンを、、討つなど……」


アザリアスのその小さな呟きと同時。


『ならばアザリアス、しばしの別れだ』


突如として流れ込む男性の声に……


『我、オーディンは、今これより勇者と共に邪神討伐へと向かう』


シゲのクリスタルへとオーディンが入って行く


そしてそのクリスタルは、、黒曜石へと姿を変え、剣と騎士の模様が刻まれた。



【黒曜石の加護】

【加護によるステータス上昇】

【オーディンが召喚出来ます】


そのテロップと。

 


「すまない、オーディン。私は、、騎士失格だ……」


『我は、我の前に現れた騎士が…お主で良かった』


アザリアスはシゲの聖剣に視線を流す。


「……歌か。いつかまた、聴きたいものだ。なぁ、ジェダ……」


「聴けるさ、役目が終わればな」


ネプチューンのその寂しげな声音は、、あの日トリトルを叱りつけ腰を抜かしそうになるほどの威厳はなかった。


「………探し物だ」


引き出しから取り出された砥石が手渡される。



「オーディンの斬鉄剣をも研ぐ、マナの砥石だ。ワンダのガルリーに頼むと良い」



入り口まで一緒に歩くネプチューンがぽつりと話す。



「私と、アザリアス、そしてフアンは…、同期の騎士生であり、皇太子であり、そして親友だった」


「……皇国の王様は、、」


「私とアザリアスのかわりに、シゲ殿。目を覚まさせてくれ」



ムービーでしか知らないあの冷たい王と、彼らの口から出る王がまだ一致しないけれど……。


「できる限りの事は、やってみます」




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