アザリアスと勇者 ㊥
「ガルーダ殿、少しだけよろしいか」
途中、軍馬の休憩を挟んだおりだった。
少し離れた場所へと誘導するような動きに…
「ここで聞こう、バルドル殿」
「………いや、出来れば…」
「私にしか話さなくとも、私はすぐに仲間に伝える。二度手間になるだけだ」
「相も変わらずお堅い方だ」
少しだけシゲをチラリと見つめて、、再び言葉を発した。
「ガルーダ殿が、伝えるかご判断を」
溜め息一つ吐き出してガルーダはバルドルと少し離れた場所へ。
「バルドルも大変だね、若い内にストレスでハゲそう」
リアが二人の背中を見つめて溜め息を。
「…もしかして、、知り合いだったりする?」
「まぁねぇ~~。バルドルは時期オーディンの騎士候補で皇太子だよ。アザリアス殿が長いけどね」
「ああ見えて彼、シゲ殿と同い年くらいよ?」
「………え!?さんじゅ……じゃなかった……」
30代には勿論見えないが、、あれ、待って。
俺は今何歳の設定だったっけ?
「20代後半に見えたけど、、16歳なの?」
凄いしっかりしてるねと感心するアリア。
なにげに老け顔だねって言ってるぞ…!
「めっちゃ老け顔やないか」
待て、失礼だぞ凍慈!
俺もてっきり20代半ば~後半かと思ったけど!!
「バルドルは、アザリアス殿の甥っ子で、現状王位継承権第一位。アザリアス殿がご結婚されて子供が産まれたら変わるけどね」
リアがそう言ってから、「僕も王子みたいなもんなんだけど」と、ぶーぶー言っているのは一旦聞かなかった事にして……。
「あ、戻って来た」
「顔怖ぁ」
リアの言うとおり戻って来たガルーダは眉間にやや皺を作り、、「伝える程の事では」と言葉を濁した。
「………気になるんだけど」
「アザリアス殿は、、心を病んでおられるようだ」
「………???」
その言葉の意味は、すぐにはわからなかったけれど…。
「シゲ殿は、事実を話せば良いかと」
話しがわからない方ではない、その言葉は……酷く胸をザワつかせた。
「どうぞ、こちらへ」
王の間に通されたシゲたち。
お尻のダメージは中々だけれど、なんとか耐えた。
もう馬車には乗るまい……。
そんな無駄な事を考えながら巨大な扉の先へ。
「アザリアス・オルブラッド陛下にご挨拶申し上げます」
全員がアザリアスに頭を下げると、アザリアスは楽にと声をかける。
高台から遠目で見たよりも大きく見える。
真っ黒い髪、真っ黒い瞳、整った顔立ちと通る低い声。
「………クリスタルの騎士一行、よくぞここまで来た。我がオルブラッドには何用か」
すっと前に出たシゲをチラリと見る。
「聖剣を、本来の姿に戻す方法をご存知だと……」
その言葉を聞いたアザリアスは、眉間に皺を寄せギロリとシゲを睨み付けた。
「アザリアス殿。シゲ殿は勇者に選ばれました」
すっとシゲの前へ出たのはガルーダだ。
「……勇者、だと?騎士でもない、その小僧がか?」
しかし、アザリアスのその漆黒の瞳は…疑心に満ちていた。
「聖剣を抜いたという意味は、ご存知のはず」
そのまま視線はシゲの腰へとすっと移動する。
「…………抜いたのか、、貴様が」
「……」
「邪神眠る神殿に向かった、、あの子を差し置いて……」
━━あ、ダメかも知れない━━
はじめて感じた感覚だった。
ただ、まだそれが何かはわからない。
『✕◯△✕』
アザリアスの隣に立つ騎士があの平野に居た神獣だと気付く。
「オーディンや」
何か言葉を交わすがアザリアスの耳には届かない
「例え、聖剣を抜いたとしても。認める訳にはいかない」
今までとは、違う反応に……でも、シゲは動じることはない。
というか、今までの皆が簡単に信じ過ぎだったんだ。
「ジェダ殿から…」
その先を言おうとしたセピアの前に立つシゲ。
「どうしたら、認めて頂けますか?」
「…………剣を抜け、勇者」
「なんでジェダの、伝えへんねん!」
準備に取りかかるシゲの隣で凍慈が憤慨している。
「意味がないから」
「意味はある!オーディンの騎士とタイマンイベントなんて絶対にあかん!!」
「……無理だと思うよ、だってアザリアスは…」
ここに来てようやく道中の違和感の正体がわかった。
この国では一度たりとも、勇者一行とは言われなかったのだ。
「勇者はジェダであるべきだと思っているから」
いつか、どこかで思った事がある
━━この聖剣を、ジェダが抜いたら良かったのに━━
「これだけ、皆に…、切望されてるのに」
なぁ、ジェダ
理不尽だよな、、君が……勇者に選ばれないなんて…
「どこの馬の骨ともわからない奴が……ジェダの座を奪ったんだから」
「そんな事ないよ」
「……アリア」
君はそう言うけれど……
「ジェダが勇者だったら、揉めなかったかもね」
心の底から、そう思っている……
「そんな事、絶対にない」
「今、そんな事言うてる場合やない。オーディンの騎士とのタイマンイベントは…」
「負けたら、終わる?」
シゲの返答に、凍慈はぐっと言葉をつまらせる。
「……負けんなや、絶対にや」
「わかった。強そうだ」
あの平野での、ジェダとアザリアスの戦いが脳裏に過る
煌めく透明の剣を手に、既に準備を終わらせているアザリアスを見つめる。
「アザリアス殿に、せめてジェダ殿からの伝言を」
「………俺らが言おうとしても謎の強制がかかって言われへんの、ほんま……」
あー、俺が言わないとダメなのか。
小さく凍慈が「理不尽」と呟いて、なんだか少しだけ緊張が解れた。
「良いんだ、皆。今は……どんな言葉も届かないと思う」
少し戦えば…。
冷静さを取り戻してくれる……。
「決着がついたら、聞いてくれるよね」




