招かれざる客
「………謎の、一行?」
その報告がアザリアスの耳に入るのは、当たり前の事だった
「若い男女6人、、国章はバラバラでしたが…どこかの騎士かと」
「………クリスタルを、持っていたか?」
鎧を脱ぐアザリアスは、報告に訪れた小隊の将軍と部下をチラリと見た。
「クリスタル、ですか?」
「、、そう言われますと…。一人だけ…あったような……」
彼らの脳裏には、弓を構える銀髪の青年と、、その首から下げた碧いクリスタルが過っていた。
「非礼を働いていないだろうな?」
その言葉に、数人がさっと地面を向いた
アザリアスは小さな溜め息を一つ吐き出し、しかし、この国の緊急事態を加味して咎める事はしなかった
「早馬を出せ。客人として招く。一目、会っておきたい」
ペンを手にしたアザリアスへ、紙と封筒を隣にいた騎士が手渡す。
「………粗相のないようにな」
手渡された封筒を受け取ると、さっと行動にうつす
その姿を横目に……、、
「……会って、どうする?」
小さな呟きは、暗がりへと吸い込まれていった…
平野へと続く道を降りて、近くの街に寄ったシゲたち
買い物を済ませ、宿に一泊する事になった
「……リアって、、わかりやすい奴だったんだな」
男女別の部屋
窓際で月明かりに照らされる中、刀の手入れをするリアに…
「はぁ?」
うん、いや、、わかりやすい。
満月の街でガルーダが言った通りだ……。
「いや、、アザリアスさん?のこと、めちゃくちゃ好きなんだなと…」
昼間の事を思いだして、そんな感想が口から出た
「ああ、アザリアス殿ね。当たり前だろ?騎士たるもの、目指す頂さ」
先ほど、アザリアスを指差した時のように目を輝かせるリア。
「そんなに凄いんだ……」
きょとんとしているシゲに…
「……ケルベロス、ウロボロス、ヒュドラ、リンドヴルム、ユルルングル。あの方がお一人で倒された名のある邪神の使いさ」
その名だたる名前は現代でも有名だし、、なんならシゲにしたら興味のあるモンスターだらけだ。
「出てこんなー思ってたら、既にやられとったんか……」
ぼそっとシゲの隣のベッドの凍慈が呟いて、リアは何かの本を取り出して眺める。
「アルヴィーが…、、追加で書いた本だよ。アザリアス殿の冒険譚さ」
リアの隣のベッドのガルーダは小さく「ジェダ殿のもあります」と言うが、右から左。
「邪神の手先を国政をしながらお一人で!凄いよ」
この世界の本、その中でも冒険譚は“全てが龍王が書いた物語”だという。
ふんふんと鼻歌交じりに毎日つけている日記帳へペンを走らせるリア。
「………なら、この旅の事も……いつか、リアが…」
その言葉にピクッと反応すると、本と日記帳をさっと直す。
「やだね。僕はそんなの書かないよ」
この話は終わり!と、再び剣の手入れに勤しむ
「ごめん、、今のは失言だった……」
「お気になさらず」
ガルーダがやれやれと肩をすくめてそう言う。
外の空気でも吸いに行くかな、と、部屋を出ると凍慈もついてきた。
もう宿屋の部屋は全部チェックしたから、、何か話でもあるのだろうか。
「売店、寄ろっか」
「…おう」
宿屋の売店で買ったコーヒーを片手に、併設されているバルコニーへ。
「………昼間、ジェファンと話したやろ」
「あ、それ、ちょっと聞きたかったんだよね」
凍慈はどこから話そうかな、なんて呟きながら。
「勇者1~3には、女神の系譜ってのがあってな。ようは、勇者の子孫や。前回はアルヴィー・オルラインが勇者の血筋やったんや」
風を受けながら、コーヒー片手にシゲは【名物・オルブまんじゅう】を一口かじる。
「(あ、リアの時に呟いてたやつか……)」
━━そっか、リアちゃうんか━━
「その系譜が今回はオルブラッドに来てるんやろなって、気が付いたから、そんな感じの事を言うてもうたわけよ」
凍慈は【オルル丸餅】という、みたらし団子っぽいものを食べている。
そっちも良さそうだから、あとでお詫びも兼ねてリアに買っていってあげよう。リア、丸いの好きだもんな。
前も思ったけど、スイーツの美味さ半端ないんだが……。
「………あれ、じゃあなんで皇国側が反応したの?」
「たぶん、反応したのは金竜銀竜のワードのほうやと思う」
「金竜銀竜?」
「………前回のラスボスの呼ばれ方や。超天才の金髪の兄、平凡な銀髪の弟。でも、選ばれたのは銀髪の弟の方で…。兄貴が邪神に魂売ったってのが大まかなストーリーやな」
よくそんな事覚えてるよなぁと感心しつつ。
「で、でもさ、、ラスボスならみんな知って……」
━━門外不出の伝承━━
勇者、ラスボス、、150年前の伝承は、どこから……?
「………思ったんやけど」
━━この世界の冒険譚は━━
「俺も…、なんとなく察した」
━━龍王が書き記した本のみ━━
「やっぱり?アルヴィー、、その部分……伝えてへんっぽいよな」
そこまで考察した凍慈が、、もしこの時……
もっと重大な事を思いだして気が付いていたなら……
この後の旅は………少しだけ………
変わってしまったかもしれない………
「結局、何で聞こえたかはわからんけど…」
「ジェファンと、バハムートが反応してたような感じだったよね」
「んーー、、って事は…知識があるかないか、って事になるんか?」
そんな話をしながら部屋の扉を開ける。
「あ、帰って来た」
部屋にはアリアとセピアも既に集まっていて、そして見慣れぬ男性も立っていた
「宵闇が王、アザリアス・オルブラッド様が、クリスタルの騎士一行を王城に招きたいと」
すっと手渡された封筒には、オルブラッドの紋章が。
「会いに行く方法が見つかって良かったね」
彼の言葉に少しだけ、、胸がざわっとした。
それが何かはわからなかったけれど……。
「それな~」
皆で安堵したように雑談する、その隣
「………謁見、、許可書?」
一人だけ、手にした書類を見て眉間に皺を寄せ険しい顔を見せたのはガルーダだ。
「………招きたいと言ったな」
「ガルーダ?」
「オルブラッドは、招く客人を列に並ばせるのか」
ガルーダはシゲからすっと書類を取ると封筒へ入れ直し、書類を渡してきた男性へ突き返した。
「………調子に乗るなよ、余所者。列に並べるだけ、マシだとなぜ思わないのだ」
「が、ガルーダ。大丈夫だよ。謁見でも…」
シゲをすっと手で制し、ガルーダは前へ出る。
「招く気がないのなら、招くという言葉は使わぬことだ」
「オルブラッドは今、戦時中。敵か味方か、どこの馬の骨かもわからぬ輩が謁見出来るだけでも…」
その言葉を発した直後だった
すっと踵を返し、机に紙を置いてペンを走らせて封筒へしまう
そして、ガルーダはアイテムボックスから何かを取り出し、、
「セピア殿。火をお借りしたい」
赤い蝋燭を取り出し、何かを察したセピアがそこに火をつける
「ええ、どうぞ」
「………玉璽、だと?なぜ、それを……」
ドン!と、わざとだろう。音を立てて押せば、大鷲とサンダーバードを足したようなデザインの印が押されていた。
「私は天空王国第一皇太子、ガルーダ・ウィングバード。相手を見て物を言うのはどちらか良く考えると良い」
その印が本物であることに気が付いたのか。
真っ青になったまま、男性はすごすごと部屋を出て行った。
「明日の朝には本物の書類が届くかな?」
リアはあくびを一つして、「怒らせると怖いよ~」とガルーダをちらりと見た。
「ほ、本物の書類?」
「恐らくは…、良く思っていない者が先回りして、かと」
「…まぁ、ちょっ~とお粗末だったけどね~」
そしてガルーダはシゲの方へと向き直る
「………出過ぎた真似をしました」
「いや、ありがとう。ちょっとスッキリ」
ガルーダは、騎士に誇りを持ってるから、、それ以外の立場を使うのはあまり好きじゃないだろうに…。
そう思うと、少しの申し訳なさと…。
「辛気臭いのはお仕舞いや。売店でえーもん買って来たで」
そのあとに皆で食べたスイーツと雑談は、少しだけ殺伐とした気持ちを和ませてくれた
夜の闇が背後に迫るのを、見なかった事にして……




