古き知識と因縁との邂逅
『やはり、消し炭にしてやる』
アジ・ダハーカの不気味なうなり声と、カッと開かれた口
それをすっと手で制すると、ジェファンはゆっくりとジェダの元へと近付いていく。
「愛しの甥っ子はうっかり屋さんだったか。国王の命を忘れてしまうとは」
「……叔父上」
「私が来て良かったな。危うく国王の逆鱗に触れるところだった。私が良いように報告を…」
「……叔父上!!」
ジェダが大声を張り上げたのが余程びっくりだったのか…
いや、他のメンバーも生唾を飲み込んでいるところを見れば、間違いなく珍しい場面なのだろう
「ここは我の持ち場。早々にお引き取り願う」
すっと構えた槍に、ジェファンはまるでダダをこねる親戚の子供をあやすかのように、ジェダの肩をポンポンと叩いた。
「そう怖い顔をするな、我が愛しの金竜よ」
そのジェファンの一言に……
「金竜銀竜…、、あっ、オルラインの系譜はこっちに来とったんか」
そう言って反応した、凍慈を見るシゲの背後
『あの小僧、今なんと?』
シゲ達の耳にはバハムートの「グルル」という呻き声のような、喉なりの声が響く。
「……どうした?」
ジェダはバハムートへと視線をうつし、しかし、ジェファンは固まって凍慈を見つめていた。
「……そこの銀髪」
「?」
それは、“勇者以外”への認識
「門外不出の伝承を、何故貴様が知っている」
━━過去作関連の話は何故か聞こえてへんみたいや━━
凍慈が言っていた言葉が、シゲの頭の中で一気にフラッシュバックする
「……聞こえた?何で?」
しかし、ジェダはバハムートに、「彼はなにか言ったのか?」と尋ねている。
そして、ジェファンの隣にいるアジ・ダハーカも…、『あの小僧がどうかしたか?』と聞き返していた。
「(聞こえた人と聞こえてない人がいる…?つまり、凍慈の話は間違ってなかった…?)」
シゲと凍慈が顔を見合せて、そして何かを発するよりも速く…
「なるほど…。一旦下がるぞ、ダハーカ」
『何?今度こそ、、』
「不足の事態が起きた時、無闇に行動するものではない」
『ち、あの狼が自国民以外から選ぶだけはある。まぁ良い』
「…………クリスタルに狼の模様。貴様、フェンリルの騎士だな」
アジ・ダハーカは既に踵を返し、飛び立つ準備を整えている
「凍慈、だったか。覚えたぞ」
その一言に、今度は凍慈が反応した
「覚えて貰わんで結構や」
さっと弓を構える凍慈をちらっと見て…
「時期尚早だ、フェンリルの騎士よ(あの緑銀の髪……どこかで……)」
「お引き取りを、叔父上」
シゲ一行の前に立ったジェダ。
やれやれとだけ言うと、ジェファンはふいっと視線を切ってアジ・ダハーカの元へと歩いていく。
「俺の顔見てもなんともないってか…。雪月花の事は、もう覚えてへんのか」
立ち去ろうとしていた歩みは一旦、、不自然に止まった
が、背中しか見えない騎士は何事もなかったかのように…
抱えていた兜を被り、アジ・ダハーカへと跨がった
「…………補食者は、、狩った獲物をいちいち覚えていない」
そう言って飛び立ったジェファンとアジ・ダハーカ。
「……凍慈」
ふっと息を吐き出して、弓を背中にしまう
「本当に覚えていないなら、、獲物だったという認識すら、されないだろう」
ジェダは皇国方面へ飛び立つ黒龍を見つめながらそう言うと、開門された扉を先に進んで行く。
「我も、隊へと戻る…」
そう言い終わると、近くに来たバハムートに跨がろうとして…
そしてジェダは、その歩みを止めた。
「アザリアス殿には“我が心は歌を歌っていた頃のまま”と、伝えてくれ」
その言葉を発したジェダは、先ほどの緊張とはうって変わったような、穏やかな笑顔をみせた
「……わかった」
「さすれば、力を、貸して下さるだろう」
ジェダもまた、オルブラッドの南方面へと飛び立った。
その後ろ姿を見送りながら、シゲは知り合いだったであろう他のメンバーをちらりと見る。
「………歌を、、か。知ってる?」
「さぁ。でも、ジェダが……アザリアス殿の元で修行したってことは有名だよ」
リアの言葉に、セピアとガルーダも頷く
「そうなんだ…」
それが、あの日ジェダに聞かれた事に関係していたのをシゲは知る由もなかった




