聖剣と、これからの行方
『勇者よ』
一連の流れのあと、重たく冷たい空気漂う中、フェンリルがシゲのもとへ
『……こちらへ』
言われるがまま、フェンリルの後ろをついていく
フェンリルがいた高台の台座の背後には洞窟の入り口
『…………アイスランドには、大神殿と呼ばれる場所がなくてな』
氷のような、氷柱にもみえる鍾乳洞があちらこちらにある神秘的な洞窟を歩いて行く
『この国の大神官も、あてにならん』
奥、唯一陽の光が差し込む場所に氷の台が置かれていた
その背後にサファイアの宝玉を大事そうに置くと、シゲへと振り返った
『……聖剣を、ここに』
氷の台と、よく見れば剣を嵌め込むような窪みがある
「…………え!?あ、はい」
すっと台に【錆だらけの聖剣】を置けば、ぴったりとハマる
『聖剣を磨ぐ』
そういえばこの聖剣、アトランティスで一回鍛えたっきり、一切合切ふれられてなかったけど、、良かった。
『…………何をしている』
洞窟にフェンリルの声が響く
「へ?」
フェンリルの鼻筋に皺が刻まれ、その視線はギロリとセピアとガルーダへ。
『ここまでしてわからんのならこの旅の終わりに始末してやる。さっさと出てこい、怠け者ども』
いや、睨み付けたのは二人が所持しているクリスタルだ
セピアとガルーダのクリスタルがカッと光り、ファフニールとサンダーバードが姿を見せる。
『戦いのあとだというに、ゆっくりとしたら良かろう。あと、こうみえて、俺様はお前達より年上だぞ、もう少し敬意のある呼び方をだな』
『怠け飛龍に敬意など不要、怠惰ついでに年上なのも忘れてしまえ』
出てくるなり文句を言えど、にべもなく痛い所を言われたのか、むすっと口をつぐむファフニール
『……この、堅苦しい感じ…。おお嫌だ。バハムートやオーディンのようで我は遠慮したい』
『遠慮する前に仕事をしろ、さすれば我こそ貴様になど用はない。遠慮するなど選べる立場かこの怠け鳥め』
こちらも言い返す言葉が思い付かなかったのか、むすっと口をつぐんだ
『して勇者』
「はい」
何故かシゲも背筋がビシッと伸びる
「(うわ、苦虫を噛み潰したような顔してる……)」
フェンリルの背後の二体は、、ひそひそと「堅苦しい」「怖い」「そこまで言わなくても」と、こんな時だけ意気投合したかのように文句を垂れている。
『モンスターの心核はどれくらいあるのだ』
「…………えーと」
フォレストドラゴンの心核
ワイバーンの心核
ミノタウロスの心核
ゴールドゴーストの心核
『……ならば、大丈夫そうだな』
心核を聖剣の上へ
すっと染み込むように聖剣へと入っていく
『どけ、勇者よ』
ファフニールがカッと口から炎を吐き出し、聖剣は真っ赤に染まる
そこへサンダーバードが雷を落とせば、錆びが一気に弾けとぶ
そして、、そこへフェンリルが冷えた風を吹き込む
「おお、、凄い……」
【錆だらけの聖剣】は【古い聖剣】になりました
の、テロップと。
「…………」
え?待って?なんだって?
「…………古い、聖剣……?」
古い聖剣って、、なに???
「完成じゃないの!?」
『当たり前だ、我々は鍛冶職人ではない』
いや、まあそれは見たらわかったけど!
『…………次は、、ああそうだ、次はオーディンにすると良い』
『げ、、オーディンか』
ファフニールは再び嫌そうな顔をし、サンダーバードは欠伸を一つすると、無言でさっとガルーダのクリスタルの中へ。
「…オーディンって事は、、オルブラッド?」
「まぁ、元々、オルブラッド行く予定でアイスランドに来とるしな」
「それもそうか」
聖剣を鞘へとしまうと、フェンリルは何かを考え、、そしてポツリと言葉を発した。
『…………この裏手を行けば、、オルブラッドの国境へはすぐだ。街に戻って、そこからの正規ルートよりはだいぶ近かろう』
「それはありがたいな」
しかし、フェンリルの表情は曇ったままだ
「フェンリ…」
『…………………街に、、戻らなくて良いか?』
あっ、と全員が凍慈へと視線をうつした
「…………」
『……誤解を、解くのもまた良かろう』
石盤が偽物だとフェンリルが言えば、彼らへの誤解は解けるんじゃないだろうか?
「街に、戻るとして……。そのあと、この先の道は……通じてへんのやろ?」
『………そうだ。この場所へは、、もう入る事は出来ない』
「なら、答え出たやん」
進むで、と言った凍慈とは反対に……
「と、凍慈!?」
「回り道だろうが、街に戻って誤解を…」
皆の反対の声
それは、凍慈が悪い事にされたままなのが…皆嫌だから
「気持ちだけ、もろとくわ」
『良き仲間を持ったな』
そう小さな声で凍慈に呟くフェンリル
「凍慈兄さん、言ってたよね?いつか、街に入れるようになるんだって…」
「さぁ、どうやったかな」
「誤解、されたままなの、、悔しいよ」
しゅんとうなだれたアリアに、流石の凍慈もうっと言葉をつまらせた。
「…………戻って……、偽物や言うてやで。誤解が解けました!はい、解決!とはならんやろ?雪月花を奪った疫病神!言われるんが関の山や」
その時間が無駄やと、少し無理に笑って言う凍慈
「わざわざ回り道する必要はないやろ?」
「わかった」
全員が一気にシゲへ視線をうつす
「凍慈の意思を尊重しよう」
凍慈の言ってることは、、正直同意見だ。
戻りたくないという理由の一つとしては、だけど。
「……シゲ!?」
それに、人の考え方なんてそうかわるもんじゃない
ここがゲームだとか、そんなのは関係ない
だから、物語的に、、これが正しいのかはわからない
「じゃ、決まり……」
「…でも、せめて雪月花の事とかは……誰かに伝えて貰おう」
凍慈の視線がずっと雪月花の方へ向いていたことに
気付かない程俺は鈍感じゃないよ…
そう思ったけど。言うのは憚られた。
かわりに、アリアが皆を安心させる時にするような、にこっとした笑顔をしてみせた。
「…………せやな」
『しばし、ここで待て』
少し先の近くで待機していた雪月花の部隊に…
フェンリルが事の顛末を伝え…、崩れ落ちる部隊に胸が痛んだ…
そして再び戻って来たフェンリルは凍慈のクリスタルへ
「…よし、、行こう。オルブラッドへ」
冷たい北風は
少しだけ、、追い風となって背中を押してくれてる気がした




