フェンリルの騎士
その声は……遥か彼方の上空から響いた
その距離からは、到底聞こえるはずもない、その位置
ああ…ムービー中なんだな、なんて他人事のように見上げている自分がいた…
[さらばフェンリル、我が使えし神獣よ]
黒く染まる上空から放たれた一撃
[くそ、、こんな時に限って]
フェンリル戦で全力を出しきった体は重たく、、その光線は一直線に横たわるフェンリルと宝玉、そして全員の視界を黒い光で覆った…
[避けられない!!]
全員の前に……人影がうつる
[凍慈。これを]
銀の髪が揺れ、凍慈に何かを投げて渡す
そして、ふわっと笑って見せた
[……あとは頼んだぞ]
その言葉は何故か鮮明に耳に残った
全員の前に現れた分厚い氷の壁と、、それは一瞬にして粉微塵に吹き飛ばされ、物凄い風が吹き込み視界を真っ白に……。
[雪月花!!!]
奇跡的に全員に攻撃が当たる事はなかったが……
氷の壁の外に立っていた雪月花は……その場に倒れ………
宝玉は、背後で崩れた
[雪月……]
凍慈は雪月花へ走りよる
そして、その場に崩れるように項垂れた………
アリアがサファイアの修復とフェンリルの手当てをしている姿を横目に、どこかその場所だけ切り取られたように静寂が支配する
[三人の騎士が揃えど、残ったのはお前だけか]
そっと雪月花の手を握る凍慈の背後から、雪を踏み締める音が近付く
[…久しいな、凍慈]
こんこんと雪は不都合な物を覆い隠すように真っ白に降り積もる
スポットライトが当たったかのように、一人と一匹、切り取られたような空間
[本当は知っていたんだけどね…、裏切ってなんかなかったって…]
[双子の騎士を期待したんだがなぁ……]
フェンリルがサファイアの宝玉を見つめると、幼き二人がその周りで雪だまを投げ合う景色がぼんやりと浮かび上がる
[どうしてあの日、我を頼らなかったのだ]
フェンリルの見つめる目は先ほどとはうってかわり、親戚の子供を見るような目に変わっていた
[……逃げ出したかったんだよ、こんなくそみたいな所から]
雪月花に渡された、、銀色の龍の胸飾りを手のひらに載せて見つめている
[それは…]
[……雪月花に、最後に渡された]
[…………騎士を全うする、祈りの込められた御守りだ]
フェンリルは、少しだけ言葉を濁した
[……アイスランドは、、灰青銀狼]
銀龍王の紋章は……、そう言って…言葉をつぐんだ
[フェンリルの騎士は…空白になった]
ほんの少しの間のあと
真紫の瞳が凍慈をまっすぐに見つめる
[まだ、逃げたいか?]
手元の銀龍王の紋章は、受け取った時の熱はなく、今はもう冷たい
[……いや、それも良いだろう。この国の為になる事をする義理などないのだから]
[それは、次の騎士は……俺って事?]
ふいと視線を外したフェンリル
凍慈の背後から、静かな声が響く
[我は、生まれ落ちた瞬間、お前たち二人を指名したぞ]
━━フェンリル様、双子の騎士になるから待っててね!━━
北風に消えそうなその記憶は
いつの間にか封印していた遥か昔の記憶
[もう、逃げない。そして、この御守りを……、叩き返す]
ぎゅっと握りしめた御守りを、そっと胸にしまう
[我、フェンリルが命じる。凍慈を我が騎士に命じ、我フェンリルは凍慈のクリスタルに忠誠を誓う]
【凍慈がフェンリルの騎士になりました】
【騎士ボーナスを獲得しました】
【フェンリルを召喚できるようになりました】
その文字は冷たい風にのって流れていった。
ここは楽しいだけの世界じゃないって事を、改めて思いしった。




