氷狼・フェンリル ㊥
「あかん、侵食された宝玉のせいで……。完全に暴走や」
そうなると、一度倒して目を覚まさせなければならない。
凍慈がシゲを、またシゲも凍慈をみて頷く。
「全員……、、戦闘準備!!」
「ダメだ!フェンリル様は危険な状態なんだぞ!?」
「雪月花」
止めに入ろうとした雪月花へ…凍慈が向き直る。
「……嫌なら、、離れといてくれ」
少し複雑そうに雪月花を見つめて笑ってみせると、弓をくるくるっと回して構えた。
「いや、私も一緒に戦う」
「なら、足ひっぱんなや」
「こう見えて、私はフェンリルの騎士だぞ?」
ふっと笑う雪月花
弓を構える凍慈と、、そしてまた雪月花も弓を構える
その姿は…11年も離れていたとは思えない程そっくりで…
「後ろはよろしく~、双子の騎士さん」
リアは二人を横目に…、そう言ってガルーダと前線へ
無言で巨大な盾を構える、その隣
シゲは定位置となりつつある、その二人の後ろへ
「よし、フェンリルの目を覚まさせよう!」
引き抜いた剣は、、いつも以上に冷たく……そして重たく感じた
「カーバンクル!」
「ドリアード」
「ルナ」
いつも通り一気に全員が開幕の詠唱へ
【カーバンクルの奇跡】
プロテクト
HP継続回復
一撃死1度だけ耐える
【森林の息吹き】
木属性攻撃
シェル全
リーフセイバー付与
【月の導き】
月属性攻撃
魔防アップ
ムーンセイバー付与
「お覚悟を、フェンリル様」
セピアのその声と……
【火竜のブレス】
炎属性攻撃
のテロップと同時に出現した、巨大な火竜
真っ赤な火を口から吐き、炎の光線はフェンリルへ
『○○✕■■!!』
唸り声、怒号、なんとも形容しがたい声と同時に、氷の光線が吐き出されてぶつかり合う
『神獣の言葉を忘れたか、フェンリル』
ガルーダの背後からくるっと回転しながら姿を見せたサンダーバード
4枚の巨大な翼を広げて、フェンリルを見つめる
【雷の鉄槌】
雷属性攻撃
そのテロップに合わせるように、雷の光線が炎の光線と重なり【雷炎の道標】という表記へ
一気に氷の光線を押しきるように、フェンリルへと直撃し、、もうもうと雪煙が舞う
「届いた!!」
魔攻アップ
敵にやけど付与(継続10ターンダメージ)
物理攻撃アップ
素早さアップ
そのテロップと、、ギラリと光るフェンリルの真紫の瞳
「……調べる!!」
かっと光るアリアの杖と…
「HP、30000/40000!!」
「めちゃくちゃあるじゃん」
ふっと息を吐き出す
「必殺技で一気に削ろう!」
光る剣に合わせるように、シゲは必殺技の辻斬りを。
アリアのセイントライトから、セピア、ガルーダ、リア、そして最後に凍慈と雪月花の弓が光る。
「……合体技」
ボソッと呟く凍慈と
少しだけ嬉しそうに笑う雪月花と
「「双弓の花」」
二人の声が重なり、放たれた弓は1つの軌道となり、フェンリルの体を確かに揺らした
『ググ、、』
唸り声と確かに削れたHPと
「各自、いつも通りに……!」
『……』
後ろに飛び退き、再び元の寝転んでいた場所へ
前衛と中衛の武器では攻撃が届かない
「フェンリルは石橋を叩いても渡らん奴や、戦うとなったら遠距離がメインになると思っとったけど…」
後衛の凍慈、雪月花、セピア、アリアの攻撃は当たってはいるが、灰色のダメージ減少
「ごめんなさい。まだ、雷属性の攻撃魔法が覚えれてなくて…」
セピアの魔法も届いてはいるが、やはりあの高台までは距離があるからか、ダメージが落ちる
「リア、盾を頼んだ」
「OK~」
巨大な盾をその場に
バサッとガルーダの翼が音を立てる
一気に飛び上がり、フェンリルの鎮座するその場所へ
「雷鳴突……」
フェンリルはその様子を静かに見つめ、そしてウォーと遠吠えがエリアに響き渡る
「ガルーダ!!!」
遠吠えで吹き飛ばされたガルーダが雪をパンパンと払いながら立ち上がった
「……結構ぶっ飛んだけど、大丈夫?」
すっと手を出すリア
「問題ない」
ゆっくりと立ち上がり、盾を手にしたその直後だった
「何か、来る…」
パキンパキンパキンと辺りに響く甲高い音と、正面から吹く強い北風がシゲたちの顔面を襲う
「か、風がっ!?」
ドン!とフェンリルが前足を地面に叩きつけた瞬間
━━絶氷乃風━━
フェンリルの背後から前が見えない程の吹雪がシゲたちを襲う
周囲は一瞬にして氷付け、足元もスケートリンクのように凍り付く
「……サンダーウォール!!」
背後からセピアが防壁魔法を叫ぶ声と、、全員を覆うように金色の丸い球体の中へ
「氷耐性と地形ダメージ無効がなかったら危なかった」
防壁が氷りつき、パリンと音を立てて割れる
「覚えたてだけど……、なんとか耐えて良かった」
セピアが安堵し、アリアが「ウォール系助かる」と笑っている
シゲたちの足元は完全に氷ついてはいるが、滑ることなく歩けるのは地形ダメージ無効のおかげだろう
「……凄い必殺技だったね」
と、アリアが言った瞬間、、凍慈の記憶に砂嵐が入ったような、、何か大事なことを思い出しそうな…そんな状態
「今のが、フェンリルの必殺技……」
「しっかし、あの岩の上から降りてこないね」
前衛のリアがそう言って、ガルーダはハルバードをくるくると回して「引きずり下ろすしかないか」と相槌を。
「……あれ、ブリザードは、、確か……、、積雪を……増やす為………」
「……そうだ、よく覚えていたな、凍慈」
雪月花の声は…、どこか他人事のように耳をすり抜け……
━━━我の必殺技は、雪のない場所では威力が落ちるでな━━
その言葉を発したフェンリルとの記憶は、誰とのものなのか…
「山全体の、、積雪量を増やすだけやなかったか……?」
背後から聞こえたその不吉な文言に、シゲは「え?」と振り返る
「凍慈!悠長な事を言ってる場合じゃ…」
雪月花の声を遮るかのように…
タンッタンッと軽快な音と、そしてフェンリルが左右に飛びはねながらステップを踏む姿が目に入る
「増やした雪は、、小高い上に降り積もる……」
『……』
フェンリルは一度だけ背後の山を見つめた
「……待って、、それって」
シゲが前を振り向いた先では既に
フェンリルは、、高く飛び上がり、小高い上からドスンと地面に着地
その振動はシゲたちの足下を揺らし足元に亀裂が入る程の大きなものだった
「アカン!!二段式や!!」
「……フェンリル様の必殺技です!!」
凍慈と雪月花の声が再び重なって聞こえた直後
『□●*△◆』
シゲたちの背後、その遥か上で
何かが爆発したような音が聞こえ……
そして
━━大雪崩━━
の文字は、目の前を真っ白に埋め尽くした




