雪月花と凍慈とフェンリル ㊦
「まず、謎を解決させないと」
こそっと凍慈へシゲが近寄る。
「……氷壁は前回の知識じゃないよね」
「………ちゃうな。フェンリルの試練、毎回ちゃうんや」
「防犯意識高いな……」
「ルナティックも見習ったほうがええレベルやけど、これ毎回難しいねん」
━━4の壁はフェンリルへと続く道━━
━━獲物を追いしはフェンリル、右へ追い込め━━
「まず、初っぱなから既にないよね……」
「獲物追いしは、、獲物追いかけてるフェンリル様は……」
「それな、過ぎる…」
シゲ、ガルーダ、リアは氷癖周りをうろついてみるもそれらしいものは発見出来ない。
━━穴蔵へと向かうは太陽の光、獲物は帰る道を失う━━
アリアとセピアは太陽の光を見上げながら、しかし、氷壁は太陽の光があたる場所にはない。
「太陽の光があたる位置まで動かせそうにもないし……」
魔力操作的なものではない、ということは……?
「で、でも、最後だけはわかるよ!」
頑張ってみんなをフォローするアリア
━━疲れ果てたなら仕留めよ━━
━━右へは行かせるな、左へ追い込め━━
「最初が肝心なんだよぉ…」
冷たい風が頬を撫でて、はぁという溜め息も凍って落ちた。
「……ジェファンはどうして壁の文字が読めたんだろ?」
シゲのその一言に、シゲと凍慈以外は固まった。
「ジェファン王弟殿下は……、先のフェンリルの騎士だ」
その言葉は、アイスランドの北風よりも冷たい現実だった。
「フェンリルの……騎士だったんだ……」
騎士である事もそうだけれど、フェンリルや他の騎士と関わりがあったであろう人物が……。
「だから、氷癖の文を知ってたんだ……」
すっとガルーダのクリスタルから姿を見せるサンダーバードが、重たい空気の中欠伸をしながら口を開いた。
『奴の言葉を少し思い出したぞ、ガルーダ。獲物を確実にしとめるならば、走らせよ…とかなんとか』
その言葉を聞いた凍慈が、再び氷の壁へと振り返る。
「右へ追い込め、で?右の壁はアカンってどういう事や?」
「そもそも、右の道とか左の道が…」
その言葉は凍慈の耳には入らない。
周りを見渡しながら、しかし、何か確信があるかのような足取り。
「………太陽はフェンリルの穴蔵。太陽の光はあたらん。不自然に止んだ吹雪」
すっと太陽を見上げて、再び地面を見ながら来た道へと戻るように歩きだす。
「………………」
そして、その足取りは反対側へ
それはジェファンが来た道
「あいつ、なんて言うとったっけ」
「鬼ごっこが、どうとか…」
「そう、その鬼ごっこって言い方が妙に引っ掛かってたんや」
ジェファンの足跡を辿るように、凍慈はゆっくりと下って行く。
彼が来たのはシゲ達とは別の道なので、恐らくは雪月花の言っていた、上級者の道からだろう。
「あの壁の文言を最初から知ってた?いや、、鬼ごっこ……何かを追いかけてたか、追われてたか… 」
「……凍慈って勇者より凄いね」
推理している凍慈の背中とシゲを交互に見るリア。
そんな事言われましてもねっ!!
「ま、まぁまぁ、凍慈殿は色々旅をされていたみたいですし、洞察力があるのでは…」
と、セピアがなけなしのフォローを入れてくれる。
そんな話も凍慈には右から左。
「そもそも、鬼ごっことかこの山走り回ってたんなら雪月花と遭遇してるはずや。そんな気配はなし。ん?」
そして、その足は……、何かを見つけたのかピタリと止まった。
「なんかあった~?」
凍慈の背中へ声をかけるシゲ
そこは唯一、太陽の光が差し込む場所だ
その下に立った凍慈が何かに気付いた
「………あー、、なるほど?全員、、そこ離れろ!!」
バキッ!!という木々が折れたりする音と。
凍慈はその場から飛び退き、そして巨大な何かが姿を見せる。
「え!??」
巨大な鹿のような、真っ青の氷のような何かがシゲ達へと突進して来る。
「左側や!全員左に集まれ!!」
言われるまま左へと全員が移動すれば、鹿は右端の氷の壁へと突進し……
「危な…、、えっ?」
その氷の壁の中へと吸い込まれるように姿を消した
「追いかけるで!!」
「え?追いかける?壁に突っ込むって事??」
ちょっと心の準備が、、とか言う間もなく、弓を片手に躊躇なく氷の壁へと飛び込む凍慈。
「なるほど、氷の壁に入れるのは盲点だった」
「確かに、“4の壁はフェンリルへと続く道”と、ちゃんと書かれていたわね」
とか言って、他のみんなも壁へどんどん入っていく。
待って、、一般人は氷の壁に突進するには心の準備がいるんだよ、「入れますよ!」「なるほどわかりました!」とか、、
「そうはならんやろっ!!」
と、渾身のツッコミを入れたシゲをリアは溜め息交じりに壁から顔を出して…。
「もう、仕方ない奴」
と、首根っこを掴むかのようにグイと引っ張り、、絶叫だけがその場に残って勇者たちはその場から姿を消した……。




