クリスタルの騎士になる前に 前編
━━ある日の天空は、、大騒ぎだった━━
「産まれました!角の子です、龍神王様!!」
「………」
満月祭時のようなお祭り騒ぎを横目に、、ルナソル・アルヴィー・オルラインは、、悲しい目を向けた。
「邪神が、、復活するのですね」
クリスタルの騎士が誕生する。
それは、、邪神がこの世に現れるということ。
「この子の名前はリアです、龍神王様」
元気に泣いている男児に、、その後訪れるであろう重責を思うと。
アルヴィーはただただ、微笑むしかなかった。
「では、“龍神王になった時”の名を……、、ルナオルを授けましょう」
ピシッという、、不吉な音と。
「ルナ、、もう少し耐えて……。もうじき、、聖女も現れる…。そうすればきっと……」
無邪気な赤子に、、その運命を背負わせる。
『大丈夫よ、、次代の騎士が産まれたのだから。アルヴィー。貴女の重責も、ようやく……』
「私の責務より、、平和な世が続く方が……、私はずっとずっと嬉しかったわ…」
━━それよりほどなく━━
『邪神復活の気配あり』
いつだってその凶報は、、月の民からもたらされる
『宝玉を死守せよ』
バハムートの伝言は、、各地をめぐる。
『狙わるるはクリスタルに選らばれし騎士たち。次の騎士を早急に整えよ』
神獣達は珍しく宝玉を出て自分たちが治める地に赴く
『あの子に、、あっちの子供も候補だ』
ある所は一人だけであり、複数人だったり
そうして選ばれる子供たちは、、【クリスタル候補生】として一斉に各地の騎士学校へ集結しはじめる。
少し前は、、宝玉の騎士に選ばれた者のみだった学校。
「どうせ行かせるなら…、、城塞都市の騎士学校が……」
3大騎士学校の一つに数えられる城塞都市の騎士学校は入試試験まであるほど希望者が多い。
━━━そんな中、ある神獣は寝て過ごしていた━━━
「ファフニール様!いい加減、次をお選び下さい!!」
大きなあくびを一つ。
煮えたぎる火山とは裏腹に、かの火竜は今一つ煮え切らない。
『そう急かすな、、』
火山灰の積もる翼をバタバタとさせ、、ようやく重い腰をあげて飛び上がる。
「はぁ。お願いですよ。ウンディーネ様はもう次代の子を見つけたと聞きます」
今のままでもまだ良いだろうに…
少し真面目過ぎる奴をえらんでしまったか……
『あの“新人”の見栄っ張り女か。バハムートに張り合ってどうする』
久しぶりに飛んだ世界は様変わりしていた
『……あそこはオアシスになったか。ああ、あっちが干からびたのか』
ぐるっと自分の治める地を飛び回れば、ファフニール様と人は有り難そうに拝んでくる
『何が有り難いのかさっぱりわからん』
そうして目に留まったのは、5歳のセピアだった。
砂漠の商人たちの子供たちを集め、既に絵本の読み聞かせをしたり遊んであげたり。
『よし、あの娘にするぞ。騎士として立派に育ちそうだ』
そして、ファフニールのその言葉は……神託となる
「選ばれた!!」
神獣たちは有り難がらない言葉を、人は有り難いと言う
『人とは変な生き物だ。死出の旅になるというのに』
わからなくて結構、と、ピシャリと言うガーネットの騎士
「ファフニール様はしっかり者を選ばれますので、今回も安心ですね」
『どういう意味だ』
「そのままでございます。もう少し速く動いて下さい。せめてあと候補を2人くらいは…」
『ふぁぁ、、仕事は終わり。さて、俺様は寝るぞ』
「……………」
そこからは、もうファフニールの仕事ではなかった
騎士から告げれられた神殿の神官が大慌てで街へと走り出す
「私は、、運が良かった…。次の騎士の……重責を思えば……」
━━━今日も向かい風だと呟くのは金色の鳥━━
サンダーバードが見つめる先には、、一人の少年がいた。
「ガルーダ様!流石です」
わずか7歳。巨大なハルバードを大人顔負けで扱い、10代前半の騎士見習い達は手も足も出ない。
「サンダーバード様だ!!」
祈りを捧げる子供たち。
ガルーダも、、その一人だ。
『ウィングバード家の秘蔵っ子よ、大きくなったな』
人は適度に姿をみせないと、不安になるらしい
『長く短い付き合いだが、未だによくわからん』
「?」
ガルーダは、、彼が産まれた時から目を付けていた
直感は正しく、きっと素晴らしい騎士になるだろう
『……いや、ダメだ。他を、、当たろう』
つい先日、サンダーバードの騎士は命を落としたばかり
『……ウィングバードの血を絶やすこともあるまい』
「サンダーバード様、私はもう少ししたら騎士学校へ行きます。そして、帰って来たら…必ずサンダーバード様の騎士になります」
山岳に風が、、いや、突風が吹く
迷うサンダーバードの背後から強烈な追い風が吹けば、、かの雷鳥は巨大な4つの翼を広げる。
『そなたを、我がサンダーバードの次代の騎士とする』
ガルーダが9歳の時だった
はじめてリアと出会ったのは…
リアが7歳の歳だった
「今年の首席は二人。ガルーダ・ウィングバード、リア・ムーンサイド」
二人が出会ったのは、騎士学校の入学式の壇上だった
一人は屈強な天空の大鷲一族の皇太子で騎士
一人は美しい琥珀の髪を揺らし、“ルナティック唯一”の騎士
「知ってるか?あの二人、、もう“神獣の信託”を賜ってるって」
「ひゃー、そんなの勝てるわけないじゃん。わざわざ騎士学校に来る必要あんのか?」
数少ない候補の枠をかけた騎士見習いたちは、、いかにライバルを蹴落とすか…。そんな段階へと突入していた。
何故なら、、神獣は「候補の中から一番優秀な人間」を選ぶ傾向にあり、“任命されるまで”はどうなるかわからないからだ。
「お前らさ、ビビり過ぎ。“天空の民”なんて、、難攻不落の城塞都市、つまり俺様たちに守って貰ってるような軟弱一族だぞ?」
リアは、その言葉に少しだけ反応し、、その言葉を発した人物を上から下まで一瞥し、腰の太刀にすっと手を……。
「弱いゴブリンほど、よく騒ぐ」
「……ぷっ、、なにそれ?」
ゴブリンがギャーギャー跳ねる姿を想像し、リアは思わず吹き出した。
「サンダーバード様のかくも由緒あるお言葉だ」
「……サンダーバードって、面白いんだね?」
「もう一回言ってみろ!俺様だってジンの騎士になる男だぞ!そんな態度で良いと思ってるのか!?」
ガルーダの黄金の瞳は騒がしいゴブリン、、もとい、オルイルを見つめてため息を一つ吐いた。
「……貴方が、、次のジンの騎士に?」
困惑した顔のガルーダと、もはや興味の欠片もなくなったリアはオルイルに「寝言は寝てからにしてよ」と言って背を向ける。
「おい!まだ話が……」
「あのさぁ、ゴブリン君。僕とガルーダには、選ばれてから話しかけてくれないかな?じゃあね」
オルイルが悔しがる隙すらないほどに、ガルーダとリアは別格、、そう言われるほどの隔たりがあった
━━━2年後までは━━━
「首席、マウィー・オルゴール」
座学、歴代最高得点を叩き出し、武術も学年トップ5に入る程の文武両道の秀才だった
「新1年のマウィー知ってる?」
「知ってる知ってる。めちゃくちゃ優秀な。マウィーってオルイルの従兄妹だって話、本当かな?」
だから、この話題が出るのは当たり前だったのかも知れない
「え?オルイルってマウィーの従兄妹なの?」
いつも大した成績でもないのに「俺はジンの騎士だ」と、ふんぞりかえっていたオルイル
彼がもし、騎士見習いの模範生であれば…その声はそこまで大きくならなかっただろう……
もしかしたら、「従兄妹もオルイルを見習って優秀だね」と言われていたかも知れない
「全然似てないよね、あっちが本家とかマジ?」
「ジンの騎士って毎回本家から選ばれるみたいよ。マウィーが可哀想」
その声が大きくなればなるほど、オルイルからマウィーへの当たりが強くなり、攻撃的な言葉となる。
「分家は騎士になれないのに!!俺に嫌がらせするならどっか行けよ!!」
オルイルにぶつかられ、手に持っていた教科書が床に散乱する。
「マウィー…、大丈夫?」
「セピア。ありがとう、、ごめんね」
同じく、セピアは武術で学年トップ5に入るほどの手練れに成長していて、マウィーと同じクラスだった。
「気にしないで。なにあの人…上級生の癖に信じられない……」
「……私と、オルイルの事……知ってる?」
「そんな無駄話を覚える暇があるなら、私は魔術の一つ覚えるわ」
二人顔を見合せると、クスッと笑った
そして、教科書を拾う…その先で、、琥珀色の髪が揺れた
「……なんだ、こっちじゃないか」
リンッと両耳の三日月のピアスが揺れる
騎士の心得という本を拾いあげてじっと見ながら、「真面目なやつ」と呟いて手渡す。
「リア、ぶしつけだぞ」
「……はいはーい。じゃーね、未来の騎士さん」
この4人がはじめて接点をもったのは、この日が最初だった
マウィー外伝を今さらですが載せ忘れていたので、こちらもアップしています(汗)
48話と49話、、本当に今さら気づきました。
この話の前に読んだ方が繋がるかも、、すみません。




