凍結船・オクタビウス 前編
沖へと出た船内は賑わいをみせていた。
そう、、初日は……
「…今日、静かだね」
乗り込んだ初日の賑やかさが嘘のように、、翌日は物音一つ聞こえない。
廊下へ出たリアの足が止まる。
「………寒っ!?」
暖炉のある部屋から一歩でれば、吐いた息が白く凍りついて落ちていく。
慌ててリアは部屋に引き返す。
「………みんな寒くて部屋にこもってるのかな?」
暖炉の火はパチパチと音を立てて部屋を暖める。
「あれ?この船、フライング・ダッチマンやなかったか」
部屋の机の引き出しにある誰かが書き残したメモ帳を見つめる凍慈。
「フライング・ダッチマン!?」
その名前に、シゲのテンションは少し上がった。
「なんやテンションあげよって。てか、気にし過ぎたか?」
「いやいや、ダッチマンでしょ?みたかったな~~」
「はぁぁ!?絶対イヤや!!あのくそエピソード、どんだけ酷かったと……」
凍慈から受け取ったメモを読むセピアの声が響く……
「……………オクタビウス号、、これよりアイスランドへ向かう」
「オクタビウス号?知らない名前だね」
アリアの不思議そうな声とは裏腹に、シゲの顔は何かを察したのかわずかに青ざめる。
「待っ、待って……。オクタビウス?」
その船の名前は、、知っている人の間では……
あまりにも有名な船の名前だったから。
大学の【伝承・神話好きサークル】でも取り扱った事があるくらいだ。
「なんや、知ってるんか?」
ゲームの世界以外の、、歴史と神話と伝承はシゲの得意分野だ。
「幽霊船で有名な……船だけど……」
その言葉に、、凍慈は再びかたまる事になる。
「………え?幽霊せ…」
━━━━━ぎゃァァァァ!!━━━━━
外から聞こえた耳をつんざく声に、全員がビクッと震える。
「オクタビウスって幽霊船なんか!??」
「めちゃくちゃ有名な幽霊船だよ。250年前に、船員が全員瞬間凍結され、13年間も北の海を彷徨った…」
「待て!ストップストップ!!俺はゲーマーやけどっっ、ホラーだけはアカンねん!!!」
あ、、なるほど………。
だからあんなに嫌がってたのか……。
流石にもうわかったぞ。
って事は、、幽霊船パート的な…?
「………嫌、でもまさか幽霊とかそんなさぁ…」
━━━━ぎゃァァァァァァァァ!!!!━━━━
再び、、謎の耳をつんざく声が廊下に鳴り響き、ガタン!と大きな音が廊下に響き渡る……
「ね、ねぇ……。アイスランドに着くまで、、ここに籠城しようよ」
「無理に出て寒さにやられる必要はない」
もうアリアとセピアは腰が引けてる。
「せや、部屋から出んかったらええやん!」
凍慈……。気持ちはわかる。
でもゲームは進まないと終わらないって知ってるだろ……。
「………ぼ、僕は、、どっちでも……」
暖炉に新たな薪を抱えるリアは、心なしか廊下から遠い。
「みんなさ、幽霊なんて非科学的な事が……」
━━━あああああ!!オォオォオォ!!━━━━
不気味な声は大きく、、そして足音は近付いて来ているようだった
「この世界が既に、非科学的やろ!!!」
うん。まぁ、確かに……。
「…………私が廊下を確認して来ます」
ハルバードをくるっと回して手にするガルーダ。
「だ、ダメだよ!」
せっせと薪を入れるリアは、、あ、絶対ビビってるな……。
「部屋の温度が下がっちゃう!!」
再び廊下から、、
━━ガタ、、ズルッズルッ━━
という、、不気味な音がこの部屋へ近付く……
「………あー!無理!外出てオルへに移動や!もう帰りたい!!」
背筋が少し寒くなる……。
背後は暖房だというのに……。
はぁ、と溜め息を一つ吐いたガルーダがスタスタと出入り口へ
「騎士学校で肝試しも追加してもらうとします」
冗談なのなかなんなのか。
ガルーダが言うとなんだか本気にも聞こえるけど…。
「とりあえず、俺とガルーダで外をみてくるよ」
一瞬。そう、一瞬振り返ってガルーダから目を離しただけ。
━━━ガルーダが仲間から一時離脱しました━━
そのテロップと、、出入り口を開けたであろうガルーダは、、再度振り返ったときには既に…忽然と姿を消していた……
「………あれ、これもしかして本当にヤバいやつ?」
残るメンバーは、もう完全に気持ちは凍えて小さくなっていた…




