満月の都 後編
都に足を踏み入れる
真上には巨大にも見える満月が街を明るく照らす
そして……、あ、和風だ、、一目でわかる家並み
「あ、着物」
リアが振り返る。一瞬、目を大きくした。
「………珍しいね。着物を知ってるなんて」
「え、ま、まぁ、うん」
そう思うと、リアの格好も着物をモチーフにしたような見た目だ。
「着物、俺は結構好きだよ」
子供の時とか、、最後は大学の友達と行った夏祭りが最後かな。
もう、夏祭りとかに行くこともなくなって着なくなったけど…。
「………嫌がる人が多いよ。観光に来て着た人からは軒並み不評さ」
「嫌なら着なきゃ良いだけなのにな」
わざわざもてなしてもらって、そんな事言わなくても。
そう言ったシゲからふいと視線を反らす。
「変なやつ」
「え?」
さっと前に歩いて行き、セピアの隣でスピードを落とした。
「…さっきは、気が立っていた。悪かったな」
セピアをチラッと見て、ボソッと言うと再びスタスタと先頭を歩いて行く。
「仕方ないわ、彼は“月の民”で、優秀な騎士だもの」
肩をすくめ、やれやれと溜め息をつくセピアとガルーダ。
「(根は良いやつ、なのかな?)」
街は忙しそうに大人があちこち走り回っている
「リア~!お疲れ様~!」
無言で手を上げ、少しキリッとした表情で微笑む。
「長老はどこか?」
心なしか、やや声も低めに感じる……。
「今日は家からは出られてないはず」
「ありがとう」
少し離れた場所に佇む日本家屋。
「長老!」
ガラッとなんのアクションもなく開かれた玄関の扉
「!?」
え?ノック的なのは……??
ここ、長老の家じゃなかったか??
「………田舎ってこんな感じやでな」
「じ、実は自分の家、、なわけないか」
家族を“長老”とは呼ばないもんな…。
「………」
スタスタと奥の間へと行くリアの背から、、ムービーははじまっていた。
[長老、勇者が来られました。呼んで参ります]
襖が開き、そのままリアは家中の戸を開いて月の光を居間へと取り入れる
[…奥の間へ]
開いた戸から取り入れた風が、軒にかかる風鈴を鳴らす
[………リア]
[ここに]
清んだ声がリアを呼ぶ
リアと同じく、尖った耳に満月のピアスが光った
その耳の少し上からは鹿の角のようなものが生えていて、それはまるで…
[“龍神王様”にご挨拶申し上げます]
ガルーダ、セピアが深々と頭を下げる
つられるように、シゲたちも……
[良いのです、楽にして。“短き民”よ]
[ルナソル・アルヴィー・オルライン様だ]
チラッと一瞬凍慈へ視線を投げたリアだったが、、再び長老へと向き直る。
「やっぱり」
その言葉と同時、、凍慈がルナソルを見た。
あ、ムービー終わってるんだ……と思ったのと。
少しだけ嬉そうに笑った凍慈を不思議そうに見つめた。
「明日の、満月祭の準備は?」
「滞りなく。一日に一度は必ず月の光を浴びて下さいと何度も…」
はいはいと笑って、シゲたちの方へ少しだけ顔を動かす。
「勇者様がいらっしゃったと言うことは…」
「………語り部なら、僕が引き継ぎます。長老は……無理はなさらず」
「そう。そう言われてしまうと、なんだか寂しいわ」
「勇者達を、、宝玉のある月の神殿へ連れていき、叩き出します」
ん?今なんだか物騒なセリフが聞こえた気がしたけど…気のせいだよな?
「リア。そんな事言わないで。満月祭も一緒に…」
「勇者一行に祭りなど不要です」
「もう、リアったら。ごめんなさいね、楽しんで行ってくれると嬉しいわ」
「僕は楽しくない」
やっぱり、良いやつじゃないかも知れない……
長老の家から出て、再び準備を整えに向かう。
「月の民とか、短き民って?」
「ああ、あまり知られてなかったかな。月の民は龍神族とも呼ばれる長寿の一族なんだ。って言っても、一般人は2倍程度。龍神王様で2,5倍くらいだけど」
「龍神王様は、前の邪神退治を成し遂げられたクリスタルの騎士の一人よ」
目を輝かせるセピアと、うんうんと大きく頷く凍慈。
「龍神王様は、クリスタルの騎士から選ばれる。まぁ、僕が選ばれることは絶対にないから。長老にはもっと長生きして貰わないとね」
すっと、耳の上を触って、、そして少しだけ寂しさのある横顔。
「じゃ、さっさと準備済ませて来てよ。僕忙しいんだ」
すぐにツンツンするの、なんとかならないか?
「アルヴィーに会えるとか感無量やわ」
あ、だから嬉しそうだったのか…。なるほど?
でもそれ人の家のクローゼット開けながら言うセリフじゃないよな?
「龍神王様は、知ってる人?」
「当たり前や。前作の一番人気やで。俺のメインパーティーやったからな~」
「ちょっと凍慈!声がでかいよ!」
「なんでや?」
「いや、聞かれてたら……」
その言葉に、「あー、気付いてへんかったかー」と呟く。
「ま、人の話は目をみて、って真面目やもんな」
だから、知らなかった。
「なんや知らんけど、、システムとか過去作関連の話は何故か聞こえてへんみたいやで」
「え!?」
「今まで一回も、誰もなんも突っ込んでこうへんかったやろ?」
言われて見れば……。
今までの会話も誰も何も突っ込んで来なかったのはそういう事……?
「クローゼット開けてるのと一緒や。認知されへんみたいやな」
空き巣強盗と同じにされるのは納得出来ないけど、、でも、今までの違和感は少しだけ解消された気がした。
「どうりでひそひそ話とった訳や」
「当たり前だろ!ヒヤヒヤしてたんだからな!」
━━━それが、理不尽な理由だと知るのはまだ先の話━━




