ジェダ・ハンネ・アウゼンハイド EP2 後編
「……前は、知らなかったんだけど」
モンスターの気配のない洞窟を二人歩く
正確には、モンスターが襲う事を諦めている、が、正しい
「騎士学校とかあるんだってね」
「知らなかったのか?」
「全然」
「随分と僻地から出てきたのだな」
学校という言葉をはじめて聞いたのに、それは“騎士になる為だけの学校”だと言う。
「早ければ7歳。だいたい9歳から5年程通う」
「……そんな早くから行くんだ」
小学生に入るくらいの子供じゃないか……
俺のその頃なんて、道端の虫を追いかけてたんだけど?
「我は既に国である程度終わらせていたのと、将軍になる事もあって飛び級で最終学年の1年だけしか通っていないが……」
今、さらっと凄いセリフがそこそこ流れた気がしたが、一旦無視しよう…。
俺の話なんて恥ずかしくて出来ないっ……。
「……成績、一番だった?」
「いや、我の前にはいつも一人いた」
「え?意外……」
「卿も知っているはず。マウィー殿だ」
ああ、そっか、マウィー…。
やっぱり、君は凄かったんだな……。
「我は、、彼女程……全てを犠牲には出来なかった」
その言葉に詰まる意味は、、彼女と過ごした少しだけの間でわかった気がする……。
「…………子供が、そこまで犠牲にしなきゃならないのは、やっぱり変だよ」
少しだけ、何かを思い……再びジェダが口を開く。
「宝玉には…各々と格言がある」
「格言?」
「宝玉が騎士を選ぶ基準のようなものだ」
「じゃあ、ジェダにも?」
「ああ。バハムートは、“揺るがぬ信念と屈強なる騎士”」
「……っぽい」
「そうか?」
「うん、なんか。ブレなさそう」
「……卿に言われると、複雑だな」
壁掛けの松明に灯される炎が辺りを少しだけ明るく照らす。
「その格言に見合う者だけが、宝玉の騎士になれる。ジンの騎士は厳格と威厳を尊ぶ」
我が知る限りでは……そう付け足すと、
「ジンの騎士が、一番基準が難しく厳しい」
その、一番難しい騎士に選ばれたマウィーは………一体、どれくらいの事を犠牲にしたんだろう……。
「それほど、城塞都市が担う役割は大きいのだ」
城塞都市が突破される
それはすなわち、その上の国は逃げ場のない天空…
駆け上がる皇国兵士を思い出すと、その意味の深さはよくわかる
「わかるけど、、この世界はやっぱり理不尽だ」
「…………」
そう言ったシゲを見つめ、思い至ったように言葉を一つ。
「深い意味はない。皇国では…、騎士になる時に必ず聞かれる言葉を思い出した」
「?」
「もし、時間を戻せるならば、いつか?というものだ」
たぶん、深い意味はあるんだろうな。
教えてはくれないだろうけど。
「いつでも?」
「いつでも」
「戻す、それって、そこからやり直すって事であってる?」
そういう質問は、現代でもよくあるけれど、この世界ではきっと意味が違うんだろうな…。そんな事をふと思う。
「そういう意味の質問だろうな」
ジェダもよく知らないのか。
「なら、ないよ」
即答したその言葉はジェダの背中を通り過ぎ流れていく。
ジェダはその言葉の後ろに…立ち尽くしていた。
「ない?」
「あの日とか、あの日とか。思い当たる場面はないわけじゃないよ」
怪我をしたあの日?親と大喧嘩した日?
それとも、ブラック部署に就職する前?
過労死のそれよりもはやく病院にとか?
「でもさ、それって、今までの積み重ねた色んな物を捨てるって事でしょ?勿体ないじゃん」
くるっと振り返ると、、止まっていたジェダは再び歩きはじめた。
「我は……、やはり向いてなかったな」
「え?」
「いや、有意義な意見だった」
歩く先に見える、光りと闇をモチーフにしたのであろう扉と…
《何人たりとも、ここから先へは進ませない》
ドスの聞いた声と同時に、暗がりから現れた……
【邪神の門番・ミノタウルス】
「うわ、、リアルで見ると気持ち悪いっ」
「やはり門番が居たか」
バトルだよな、と、剣を握る。
ジェダはふっと飛び上がり正面から姿を消し、、
しかし、バトルフィールドは展開されない
「………?」
「擊龍槍」
という言葉を残して、、ミノタウルスは消し飛んだ……
「………ひぇ」
シゲたちとはじめて出会ったあの日のように、地面に刺さった槍の上に立つ美青年。
「……………」
心の底から思う
ジェダとは二度と闘うまいと
「ん?」
【ボス早期撃破ボーナス・ミノタウルスの心核】
【ボス早期撃破ボーナス・経験値+5%】
【ボス早期撃破ボーナス・獲得金+5%】
の、文字が踊る。
「え?あれ?赤ゲージは??」
「赤ゲージ?」
「………待って待って待って、今までの苦労ってもしかして」
戻ったら絶対に文句言ってやるー!!
「いや、何でもない…」
「………?」
扉を開けた先は、、洞窟の中なのに差し込む光りと、それに相反するように暗い場所と。
「あった、これか」
キラッと光る、どこか禍々しい龍の見た目のクリスタル
「………箱を、持っているのだろう?」
「あ、」
手に入れた【邪神納める本】を開けば、何かを納める窪みが…。
「………勇者よ」
そこへクリスタルを納めるジェダの瞳がシゲを見つめる。
「必ず、聖女にこれを渡して欲しい」
「………わかったよ、約束する」
パタンと閉じられた本は、もう開くことは出来ない。
「少しだけ調べる事がある」
「忙しいんだな」
そう言ってシゲも部屋を歩く、次の瞬間
「………ん?」
光る円盤の中に既に足を踏み入れていて……
「またか、勇者」
という声を最後に、、シゲは再びその場からワープした。
隊への帰還を遂げたジェダは翌朝、少しだけ異変を察知していた…
「…………筋肉痛か?」
口回りの違和感に、すっと手を添える
「はは、ジェダ様もそんなご冗談を言われる……え?ホントに?」
「……どうも、昨日は喋りすぎた」
「喋りすぎ、、???」
あのお喋り勇者と一緒だったせいだろう……
普段の100倍くらい会話した気がする……
「…………暖かいタオルを、今すぐ!」
副官のアルディンが近くにいた世話役の兵士に指示を出す。
「……次に叔父上が来たら、我はランダム転送装置を踏んだ事にしたら良い」
「……は?ジェダ様が、ランダム転送装置に……?」
「いや、冗談だ」
ジェダから発っされた“冗談”の言葉に…、部隊の兵士達はただただ目を見開くしか出来なかった
「さて、次はどう出るか…」
用意された暖かいコーヒーに口をつけ、既にジェダは、遠くの空を見ながら…自身の役目を終わらせた達成感に少しだけ浸っていた。
第2章
いざ、神獣巡りの旅へ!完




