マウィー 外伝 後編
時を少しして、ニャウィーが勇者と共に訪れた
良かった、無事で。その一言は、喉を通過することはなかった
「踊り子?」
ニャウィーのジョブは、希少なものだった。
努力って、なんなのかしら?
そんな事を今思っても仕方ないのだけれど。
「……エントは、今どうなってるのかにゃ」
ニャウィーの経緯の引き継ぎを聴きながら、誇らしい気持ちと。どうして私じゃないのという気持ちと。
「諦めなさい」
大丈夫よ、無事よ、なんて言ったら…貴女はエントに戻ってしまうでしょう?
「ニャウィー。選ばれようと選ばれなかろうと。貴女は勇者一行に必要な能力を持っているの」
━━私なんかより、ずっとね━━
「(エントよりは、今は勇者様と一緒の方が安心だわ)」
マウィーは勇者一行へと歩き出す
その隣を、ニャウィーは走り抜けて行った
「勇者さま!あ、あのね……。本当は、、儀式的にクリスタルを持って確認しなきゃなんだけど」
「あ、そうなんだ。はい」
「違うの、、私、持てないニャ」
その声を聞いて、マウィーは慌てて二人の元へと走り寄る。
「選ばれないって、わかってるニャ。だけど、、だけどもし…」
「ニャウィー、貴女なにを」
「あのね、マウィー。私、本当に……ついて行きたい気持ちはあるの。例え、選ばれなくたって!」
何も言葉が出てこなかった。
「エント、速く戻ってあげなよ」
シゲのその一言に…ニャウィーの瞳が大きく見開かれた。
「あ、あのね、クリスタルに選ばれなくても、、持つ事で騎士の」
「ニャウィー、そんな事気にすんな。君は君がやりたいようにやれば良い、だろ?」
ニャウィーの瞳から、大粒の涙が一つこぼれる。
「ありがとう、ニャウィーが道中で沢山助けてくれたこと…忘れないよ」
「私も、、勇者シゲの事、絶対に忘れないニャ!」
どんな時も、笑っていたニャウィーが
大喧嘩したあの日も、エントへ行く日も…決して泣かなかった
そんなニャウィーが、はじめて泣いたのを見た
━━騎士は涙を見せるべからず━━
「……貴女は、騎士になりきれなかったのね」
マウィーは残念そうにニャウィーの後ろ姿を見つめる
━━違うわ、、私、貴女がまた遠くに行くのが寂しいの━━
「(エントがなくなったのなら、、ここに帰って来たら良いじゃない……)」
━━どうして、それを言えないのかしら━━
それでも一瞬だけ表情が緩む。
「(貴女はもう、、エントの騎士なのね…)」
なら、もう私が何か言える立場ではない。できる事は一つだけ。
「選んだ道を、頑張りなさい」と小さくエールを送り、、再び騎士の顔へと戻っていった。
勇者は、なんと言うか……変わった人だった
あの仕掛け岩を回せない。
本当に、“一般人”から選ばれたとわかる。
「オルイル…、やはり貴方だったか」
裏切り者がオルイルだとわかった時、出たのはため息一つ
「……貴方、本当にくだらないのね」
それ以外、なんの感情もわかなかった
知り合い?と聞いて来た勇者に、「従兄弟よ」とマウィーは小さく呟く。
こんなのが私の血縁者だと思われる恥ずかしさに、自然と声は小さくなった。
「お前が!!俺からジンを奪ったんだろ!!」
「貴方が騎士ではなかった。それだけよ」
「うるさいうるさいうるさい!!」
だって、貴方。選ばれる前提でろくに授業にも出てなかったじゃない。
厳格と威厳を尊ぶジン様の騎士に、本気でなれると思っていたのなら片腹痛いわ…。
「俺の騎士の座も!俺の筆頭補佐の座も!!お前が卑怯な手で奪ったんだろ!!どうせ色仕掛けかなにか……」
「……黙りなさい!!」
セピアが大声を張り上げてオルイルを魔法で吹き飛ばした。
「マウィー殿の努力の結果を、騎士を!バカにしないで!!」
でも、、私…。
誰からも、なんて卑屈になっていたけれど…、認めてくれる仲間には…出会えていたのね…。
「ありがとう、セピア殿」
オルイルは邪神に魂を売ってしまった
魔物と同じく消え去ってしまった彼を少しだけ哀れんだけれど、きっと王には淡々と説明してしまうのだろう
「少し休みましょう」
「だね」
「なら、料理を作ります。何かリクエストは?」
そうシゲに尋ねたマウィーに……
「じゃあ、、マウィーの料理、、作って欲しいな」
「……」
「騎士が!とかじゃなくてさ!」
「……私の、料理…」
簡易のキッチンに吸い込まれるように歩き出す。
「城塞都市の郷土料理ではなく?」
「マウィーの得意な料理」
「変な人」
少しだけ声が上擦った。
私が得意なのは、、一つしかないから。
「……美味しくなくても知らないから」
そう言って材料をささっと投入する……
誰かに料理を作るのは…何年ぶりだろうか。
【マウィーのまかない飯】
魚の干物焼き、味噌汁、白ごはん、小鉢にはサラダ。
「……このタイミングでまさかの日本食っっ」
「美味いに決まってるやん…」
「ニャウィーが、好きそうだね」
アリアがふふっと笑うと、マウィーの表情が少し和らぐ。
「あの子、干物が好きだったから…。父の隠していた干物を、よく勝手に食べていたわ」
「あはは、ニャウィーっぽい!」
でしょう?そう微笑んで…
「まだ、好きだと良いけど」
最後にマウィーがこの料理を食べたのは…13歳くらい……
「(きっと、エントでもっと好きな料理が出来てるわよね)」
━━騎士は不要な笑顔を見せるべからず━━
その言葉が去来し、すっと表情を騎士へと戻していた
「さぁ、ウィングバードはもう少しです」
天空都市が無事だった、そう安心したのに
アジ・ダハーカは再び勇者一行もろとも玉砕し、、兵士を引き連れてウィングバードを突破した
運び込まれている勇者一行と…何も出来なかった悔しさと。
「……良かった、目覚めて」
運ばれて4時間ほどだろうか。樹海から不眠不休でここまで来たのだもの、勇者になりたての彼には大変だったはず。
「みんなは無事よ。怖い体験をしたから…。まだ眠っているけれど……」
「……怖かった、のか」
すっと剥いたリンゴを。
こういう時、何か甘い物を食べたら落ち着く。
「……こんな時で申し訳ないのだけれど…クリスタルを、勇者様」
「え?あ、うん」
「我、ジンの騎士の加護を勇者へ」
━━せめて、彼らの心の傷が早く癒えますように━━
そんな祈りを…クリスタルに込めて…
「お目覚めになりましたか、勇者様」
背後から聞こえた聞き覚えのある声。
「……ガルーダ殿、ご無事で…」
「マウィー殿。あとは、私が引き継ごう。貴女は、城塞都市へ」
「……そう、ね」
帰ろうとしたマウィーの背後から、ジンの声が聞こえて来る
『もしかしたら、最後の会話になるかも知れない』
だから、聞いて欲しい
「(私は、さよならの言葉なんて、、もう聞きたくないわ)」
『オイラは、マウィー程の騎士道精神をみたことがない』
ジンが笑ってマウィーを誉める
━━騎士とは、誉められる事を望むべからず━━
世のため人のために行動するのは当たり前
誉められる事が当たり前になってこそ、一人前の騎士である
でも、少しくらい「頑張ったね、凄いね」って言われてみたかった
『素晴らしい騎士の一人だ。だから、もう少し自分を甘やかしても良いと思う』
━━騎士は涙を見せるべからず━━
そう教えられてきた
だから私は泣き方を知らない
『だから、オイラは…オイラだけの騎士に君を選んだんだ』
━━騎士は不要な笑顔を見せるべからず━━
本当は、、もっと笑ってみたかった
でも、それは騎士道とは違う、、どうすれば良かったの?
『マウィー、笑顔でさよならと言ってくれないか』
また、ここに戻って来た時…
君からおかえりと言う言葉を聞くために…
「……さよならジン、帰って来るのを…お待ちしております」
この“さよなら”という別れの言葉を…
はじめて好きになった瞬間だった
『ああ、行ってくるよ!』
「……さよなら、勇者一行。皆様に、マナの加護があらんことを」
すみません、外伝アップし忘れていた…。
話微妙に通じてなかったかも、、すみません(汗)




