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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
いざ、神獣巡りの旅へ!
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ニャウィー外伝




私の心臓(ハート)を初めて射ぬいたのは、皇国の皇太子さまだった



「はわわ、カッコいい、にゃ」


「………やめなさいよ」


4歳上の姉はいつだって眉間に皺をよせて、頭には角を生やしている。


「カッコいいからカッコいいって言って何がダメなの~」


「あんたねぇ………」


何人目よ、という言葉は一旦聞かなかったことにして。



次のドリアードの騎士として、14歳の時に城塞都市から隣の国・平和の民の住む樹海(エント)へ移り住んだ。

みんな陽気で、そして優しくて、ちょっとだけルーズ。

何より私のふわふわした性格には凄く合っていた。


「……樹海には、いざという時の魔法がかけてります」


大神官からの小難しい説明は、あまり頭には入って来なかったけど……。


「はにゃー、つまり邪神が現れたり、危機が訪れたら守護魔法が発動する?」


「はい、そんな感じです」


大神官がクスッと笑って、ニャウィーへドリアードの騎士の証を手渡した。


「少し速いですが、ニャウィー。貴女をドリアードの騎士として引き継ぎます」


17歳の誕生日プレゼントは、とても重たいものだった。

大神官の体からドリアード様が出て来て、、「よ、よろしくね」とお辞儀して来た。


「よろしくニャ!」



空気は澄んでいて、陽だまりの花畑は心地よい


「ニャウィーさま~!」


種族の違う私に偏見はなく、みんな気さくに話しかけてくれる。


「私はこの国が大好きニャ!騎士として、、ドリアード様とエントを守ってみせる」



日々のんびり特訓!

踊り子のやれることは……正直少ない…。


来る日の勇者さまを思い描きながら……それでもまだふわふわなニャウィーは、“騎士”と“邪神復活”の重大さを真剣に考えずに過ごす。




「海底王国より、勇者一行がこちらに」


国王さまへの報告を聞いて、いてもたってもいられなくなって。


「私、迎えに行ってきます!」


どんな人だろう?

見た目は?歳は?性別は?

性格は私と合うだろうか?優しいかな?


「……ドリアードさま、まだお戻りにならないのかな」


そして、一抹の不安と。

沢山のぐるぐるを抱きながら、、海外沿いへ…。


「……あ、いた」


木の影から見る勇者一行は、、輝いて見えた。


「あの子が聖女さまで、あ、セピたん。ってことはあの二人のどっちかが…」


そんな事を考えていたら、、4人の視線は既にこちらに…。


「……えっ、こっち見てる?ニャ!?」


思っていたよりかなり速く見つかっちゃった…。


「彼女は、確か……」


「セピたん久しぶり~!!」


にゃはっ!と笑って木の影からぴょんとひとっ飛びで勇者一行の前に飛び出す。


「………ええ、貴女とは騎士会議の場以来、これで二回目ね、ニャウィー殿」


セピたんって、お姉ちゃんみたいに硬いんだよね。

みんなもう少しふわっとしたら良いのに…。


「特段、そのような名前で呼ばれる仲では…」


「硬いこと言わないにゃんにゃん!」


人差し指を立てて左右にちっちと揺らす。


「本当、今回の年少組最悪だわ」


「………って、問題児しかいないのかよっっ」


そう言った青年をニャウィーは見つめる。

なんか、ビビっと来た気がする…。

あの皇太子さまには、、ちょっとだけ負けるけど…。


「問題児だなんて、そんな事ないよ~。この人が勇者さま?」


「ええ、そうよ」


その場でくるっと回転し、腰にさしてある鉄扇を広げてみせる。


「私はドリアードの騎士のニャウィー、17歳。職業(ジョブ)は踊り子~!よろしくね、勇者さま!」


はぁ、と隣のセピアから深い溜め息が漏れる。


ニャウィーはそのままシゲの手を取り「エントの国に案内するにゃ!」と笑顔を爆発させた。


「………まぁ、、ジェダとかトリトルとかよりは、、年相応?」


ちょっとおしゃべりな勇者さま。

私もおしゃべりだから、きっと気が合うにゃ。


「若いっ、、何歳に旅させてんだこの世界は…」


「世代交代が近年急速に起きたのよ。理由はまぁ、今ならわかるわ」



その一言は、少しだけ胸に刺さった。

エントに移り住んだ時、ニャウィーはまだ…14歳だったから。


泣いてごねて、、行きたくない!

そう言って何かが変わる世界じゃないから。


「勇者さま、お優しいんだね……」


ちょっとだけ頬を赤くしてシゲを見つめるニャウィー。


「………勇者に選ばれるくらいだから!」


シゲとニャウィーの間にアリアが割り込む。


何やら遠くで男二人話をしているけれど、、ニャウィーの頭の中は既に“エントの観光ルート”とかを考えてウキウキしていた。


それが絶望に変わったのは、、もう思い出したくもない。

でも、あの瞬間、私は本当のドリアードの騎士になったんだと思う。


初めてだらけの短い旅。

モルボルも、フォレストドラゴンも。

ドリアードさまを助けて貰ったことも、、感謝しかない。


だけど…。


「……エントは、今どうなってるのかにゃ」


姉であるマウィーへの経緯の引き継ぎをすればするほど、エントがどうなったのか、それしか考えられなくて…。


「諦めなさい」


姉の刺さるような一言と…


「ニャウィー。選ばれようと選ばれなかろうと。貴女は勇者一行に必要な能力を持っているの」


私なんかより、ずっとね。

マウィーはそう言って勇者一行へと歩き出す。


「……選ばれなかったら、、帰れる………?」


そうだ、さっさと儀式を済ませちゃえばあとはエントに戻るだけ!

様子をみて、安心して、、追いかけたら良いんだにゃ!


「勇者さま!あ、あのね……」


だけど、、もし、選ばれたら?


「本当は、、儀式的にクリスタルを持って確認しなきゃなんだけど」


「あ、そうなんだ。はい」


すっと差し出されたクリスタル。

今まで戦ったどのモンスターよりも恐ろしいものに見えた。


「違うの、、私、持てないニャ」


差し出そうとした手は胸元へ。

そのまま握りしめた手は、少しだけ震える。


「選ばれないって、わかってるニャ。だけど、、だけどもし…」


「ニャウィー、貴女なにを」


追い付いた姉が驚いた顔をしてニャウィーを見つめる。


「あのね、マウィー。私、本当に……ついて行きたい気持ちはあるの。例え、選ばれなくたって!」


もし、光ったら……。

そう呟いたニャウィーの手のひらに道標の花がふわりと落ちる。


「エント、速く戻ってあげなよ」


シゲのその一言に…ニャウィーの瞳が大きく見開かれた。


「あ、あのね、クリスタルに選ばれなくても、、持つ事で騎士の」


「ニャウィー、そんな事気にすんな。君は君がやりたいようにやれば良い、だろ?」


大粒の涙が一つこぼれた。


「ありがとう、ニャウィーが道中で沢山助けてくれたこと…忘れないよ」


「私も、、勇者シゲの事、絶対に忘れないニャ!」


そう言ったニャウィーは、再び樹海へと走りだしていた。




城塞都市を飛び出した瞬間は無我夢中で…、、確かに足取りは軽かった。



「勇者さま、ありがとう、、ありがとう!!」



何度もお礼を口にしながら…走って走って走って、、だけど……近付くにつれ、、焼けた臭いが濃くなるにつれ…足取りは重たくなっていた。



「……ただいま」



焼けた大地は黒く


辛うじてエントの心臓である大樹は無事だったが…


「……ニャウィーさま!」


小さな子供たちがニャウィーへ駆け寄る。


「…………あんたが、ニャウィー?」


見慣れない青年。

色黒の、、同い年か少し下に見える青年がたっていた。


「……?」


「………………アトランティスのトリトル」


ぶっきらぼうにそう言って、ふいっと視線をそらした。

うーん、どっっっかで聞いた名前だにゃー。


「あの方がすっごい水魔法で火を消してくださって…」


ありがとうございます!とトリトルに頭を下げる人々に……。


「勇者一行を送った帰り道で、たまたま居合わせただけだ」


少し照れて、ふいっと顔を横に。あれま、可愛いにゃ!!


「はわわ、、きゅんだニャ」


「……??」


トリトルの頭の中は違う事で埋め尽くされていた為、ニャウィーの熱視線は頭に入って行かなかった。


「あ!勇者さまが名前出してた!」


「…………アホ面勇者が?」


「あの、改めて…お礼をしに行っても…?」


もじもじと照れるニャウィーを不思議そうにトリトルは見る。


「……まぁ、好きにしたら良いんじゃない?」


「ありがとニャ!」



選ばれなかった二人の、、

もしかしたらあり得たルートの物語



「あのアホ面勇者、死んでないよな?」


私や騎士達がいるんだから、そんな事あるわけないのに。


「お顔は良かったと思うけどにゃぁ~」


トリトルは帰らずに、、エントの復興の手伝いをしてくれて。


「………俺の方が良いだろ」


「ニャ!?ヤキモチかにゃ?」


「はぁ!?俺が!?誰に!?」


誰にだろう?

……もしかして私かにゃ!?


「やっぱり、可愛にゃ!!」



復興の道のりはとても長いけれど、、シゲに渡された道標(オルリンドウ)の花を耳にかけて城塞都市の方角の空を見上げた。



ニャウィーがトリトルとネプチューンの関係を修復させる事になるとは、、この時はまだ誰も知らない。




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