恋多きドリアードの騎士
「…さてと、樹海か」
世界地図を見ると大陸の左端の下に位置する場所。
「……なーるほどな。最初苦労するけど、、ほんまゲーマーやな」
「???」
凍慈が指さす樹海には「エントの国」
その上に位置する国は「城塞都市・トルネード」
そこから「天空都市・ウィングバード」と「満月の都・ルナティック」が左にズラリと並ぶ。
「なるほど…、一気に左側攻略ってわけか」
「まぁ、やや不安のあるルート臭いけどな…」
「しかし、樹海か。困ったな」
そう呟いたのはセピアだ。
あまりそういう言葉を聞かないので少し新鮮。
「困った?」
「樹海は“エントの案内人”が居ないと、侵入者防衛システムが働き、1ヶ月は迷うと言われる場所なの」
今セピアはさらっと凄い事言ったけど……
え?なんて?
侵入者防衛システム?1ヶ月は迷う?
「………俺たち、勇者一行なのに?」
海底神殿といい、ちょっとどうなってんの?
何がなんでもダンジョン攻略しなきゃならんの?
「まぁ、防衛システムに勇者かどうかはわからないからな…」
いや、まぁそうなんだけどね??
「俺らが入ってすぐに敵が入って来るかもしれんやろ?」
なんでいきなり“かもしれない運転”なんだよ…
俺たちの後ろから防衛システム発動したら良いだけじゃないのかっ!
「ちょっと、、良いかな?」
アリアが樹海の入り口を指さす
「…?」
そっちを全員が見ると……
「……えっ、こっち見てる?ニャ!?」
頭に尖った耳
細長いうねる猫のような尻尾
ヘソだしの今までのお堅い衣装とはうってかわり、結構フランクな見た目の………女性?女の子??
「彼女は、確か……」
「セピたん久しぶり~!!」
にゃはっ!と笑って木の影からぴょんとひとっ飛びでシゲたちの前にやって来た。
「………ええ、貴女とは騎士会議の場以来、これで二回目ね、ニャウィー殿」
そして【恋多き騎士・猫亜人ニャウィー】の文字が踊る
「特段、そのような名前で呼ばれる仲では…」
「硬いこと言わないにゃんにゃん!」
人差し指を立てて左右にちっちと揺らす。
「本当、今回の年少組最悪だわ」
待って、誰も猫亜人とやらに何も言わないけど、、普通の事なのか?
猫亜人ってなんだ…。いや、知識として亜人が何かはあるけど。
「………って、問題児しかいないのかよっっ」
じーっとシゲを見つめるニャウィー。
「問題児だなんて、そんな事ないよ~。この人が勇者さま?」
「ええ、そうよ」
その場でくるっと回転し、腰にさしてある鉄扇を広げてみせる。
「私はドリアードの騎士のニャウィー、17歳。職業は踊り子~!よろしくね、勇者さま!」
はぁ、と隣のセピアから深い溜め息が漏れる。
ニャウィーはそのままシゲの手を取り「エントの国に案内するにゃ!」と笑顔を爆発させた。
「………まぁ、、ジェダとかトリトルとかよりは、、年相応?」
そう言ってからふと思う。
ジェダ18歳、ニャウィー17歳、トリトル16歳、、アリアは15歳……。
「若いっ、、何歳に旅させてんだこの世界は…」
「世代交代が近年急速に起きたのよ。理由はまぁ、今ならわかるわ」
邪神復活の影響でって事なのか…。
だとしても…、やっぱりこの世界は理不尽だ…。
「勇者さま、お優しいんだね……」
ちょっとだけ頬を赤くしてシゲを見つめるニャウィー。
「………勇者に選ばれるくらいだから!」
シゲとニャウィーの間にアリアが割り込む。
「(あ、これは……)」
隣の凍慈が急にニヤつきだした。いきなりどうした?
「いや、勇者とか関係なく理不尽だなーって」
「ちょっと、ごめんやでーー!」
慌てて凍慈がシゲの腕を掴んで二人から遠ざかる。
「どあほ!」
「はぁ???」
「アリアに嫌われる事は言うたらあかんからな!」
「………なんでだよ!?」
「なんで、やと?」
ヒロインやからや!!
と、言われたが…凍慈は一体全体何の話をしているんだ……。
「シ、、シゲは…その、ああいう子がタイプだったりする?」
再び戻った時、アリアがモゴモゴとシゲに質問してきた。
「タイプ…?」
この場面でいきなり何を聞くんだ、とは思ったが…。
ニャウィーがタイプかとか言われても俺は本来は30越えてるし、、どう考えても対象外だしな……。
もちろん、リアルの世界にタイプの女性はいるけれど……。
「雑談はここまでにゃー!エントの国にしゅっぱーつ!」
にこっと微笑んで、近道があるから!と、シゲの手を引くニャウィー。
一同は樹海へ足を踏み入れた、その瞬間。
“ここから先は物語が大きく進みます。それでも前へ進みますか?”の、テロップが。
「…え?このタイミングで…?」
「あー、まぁそうか。次で神獣4体目やもんな」
中盤最初の山場やろな、と言う凍慈。
【はい】を押した瞬間…もう慣れたがムービーがスタートする。
[なんだろ、この臭い……]
ニャウィーが空を見上げて、鼻をひくひくとさせる。
直後、シゲたちの鼻にも……その香りが到達した。
[………燃えてる、臭いだ……]
カメラのアングルは樹海の上空へと舞い上がり、その先の巨大な木とその下の木々を家にした、緑豊かなエントの国……
[皇国兵……?]
シゲたちの近くを見知った鎧が通りすぎ…
そして、その映像はゆらっと揺れ、、真っ赤に燃え盛る映像へ
[どうして…]
━━あの日の、シゲたちの村のように━━
[皇国に仇なす国め!!]
国に雪崩れ込む皇国兵
[急ぐぞ!!!]




