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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
いざ、神獣巡りの旅へ!
34/45

譲れないこと




「えっと、宝玉を強化します!」


アリアが巨大なタンザナイトの前に行き、両手を合わせて祈るとクリスタルとタンザナイトが光輝く。



「これで、たぶん大丈夫だと思います。マナの女神様の言うとおりにやったので…」



タンザナイトからウンディーネが姿を現すと、アリアのクリスタルへ額を付ける。



「え?力を貸してくれるの?」


にこっと微笑むウンディーネ。

そのままアリアのクリスタルの中へ…。


【ウンディーネが召喚できます】

【新たなスキルが一部解放されました】


のテロップとステータス画面が。


「えーと、、ウンディーネをアリアのスキルバレットにセット、と」


【水源の歌声】

水属性攻撃

回避アップLV2

敵にスロウ付与(継続10ターン)


「……スロウって何?」


「…は?マジか、めっちゃええやん」


「え?そうなの?」


「……なーるほど。苦労して先に来た理由はあるってことか」



そのままファストトラベルで王の間へ


「空のクリスタル。貸してよ」


「え?良いけど…、どうぞ」


アリアからクリスタルを受けとるトリトル。

そのやり取りをみながら、凍慈がシゲにささやく。


「………まぁ、ウンディーネがアリアについた時点で」


「あー、なるほどね」


クリスタルは、何の反応も見せなかった。


「……勇者の仲間に入るほど、暇じゃないんで良かったよ」


そのあとの言葉は、たぶん聞き流せばよかった。



光らなかったクリスタルを投げて返す、子供っぽいとこも、まだ16歳と少しだと思えば気にならなかった。


「クリスタルの騎士は、聖女から修復を受けた者しか選ばれない。トリトル、貴方もそれは知っているはずよ」


セピアからの言葉も、あーハイハイと煩わしそうに聞き流している。


それも、選ばれなくて残念だと素直に言葉にすれば良いのに、くらいなものだった。


「オレはジェダを超える為に修行しなきゃなんないんだ」


その言葉が、、何故か引っ掛かった……。


「……ジェダを、、超える?」


俺は、本来はトリトルの倍くらいある大人なんだから。

反抗期の子供をマジで相手にするのは違うよね、そう言い聞かせるけれど…。


「そうだよ。()()()()()、オレくらいになればささっと超えちゃうもんね」


ネプチューンが「またそんな事を」と溜め息をついていた。


他の皆も、また何か言っている、みたいな。


だから、俺も無視したら良かったんだ。


なのに、あの日の、ジェダの姿がフラッシュバックする。


「やはり、卿が勇者だったか」

「それは聖剣。勇者にしか抜けない」


あのシーンが、聖剣を手にした時の、、


あの瞬間のジェダの顔が……頭から離れてくれない。



「そういう事は、もう少し実力が足元に及んでから言うべきだと思うよ」



ジェダ、君は……、、本当はあの時……。



「…………オレが、ジェダの足元に及んでいないって言いたいのか、勇者シゲ」


はじめて、彼の口から俺の名前が出た気がした。


「……申し訳ないけど、足元どころか。君がジェダの名前を口にするのは、彼に失礼だ」


志も行動も言葉使いも何もかも……。

どうしてトリトルはそんな軽口が叩けるんだろう?


「……」


その場がシーンと静まりかえる。

図星なのかトリトルの減らず口は鳴りを潜める。


しかし、それも一瞬。


ネプチューンはシゲに拍手を送り、ゆっくりと口を開いた。


「トリトル。勇者の言うとおりだ。最年少騎士として選ばれたからと、少し甘やかし過ぎた」


“ウンディーネ様も見栄をはった事、反省していただきたい”、その言葉は、再びトリトルの瞳に激情を灯した。


「…………」


ぎゅっと唇を噛み締め、ギッとシゲを睨み付ける。


「アトランティスは意見の相違が起こった時」


「……トリトル!!」


「決闘で決める。それがアトランティスのやり方だ」


「いい加減にしないか!!!」


「今ここで、オレと戦え、勇者」




「本当に大丈夫?」


アトランティスの決闘用装備に袖を通すシゲを、アリアが心配そうに見つめる。


「うん、これだけは譲れないから」


「イベントバトルやから、まぁ通常の体力とかではないと思うで」


「………」


「あと……、試合前にこんなん言うのもあれやけど、、これは別に、勝…」


「凍慈、俺、負けるつもりはない」


「…………せやな、悪い」


準備を終わらせたトリトルがトライデントを手にしようとした瞬間。


「このトライデントは王である私の槍だ。わかるな?」


ちっと舌打ちするトリトル。


「本来の自分の持てる力を使って闘いなさい、海の子よ」


「………!!」


その誇りだけは、譲ってはならん。

ネプチューンのその言葉の重みから、ふいっと視線をそらしたトリトル。


「わかってるよ、冗談だろ」


トリトルが取り出した武器。真っ青の槍だ。


その槍は、、見覚えがあった。


ジェダの槍と見た目がそっくりだったから。


「その槍、ジェダの意識して……」


「たまたま勇者に選ばれただけで偉そうに…、わかったこと言うんだな」


結構痛いとこ突いてくるな、この坊や。


ちょっと傷付いたぞ、、ちょっとだけな……。


別に気にしてなんてないんだから……。


「開始」


の、合図と同時にバトルフィールドが展開される。


「海流一閃!!」


ザポンと水の音と、それに合わせて足元から水が溢れて槍ごと突っ込んで来る。


「(大人気ないとは思うけど……)」


多分、勝てるならこの作戦。

ウンディーネの加護で新たに手に入れた新スキル。


「カウンター」


まるで長年やっていたかのように体が勝手に動く。

剣の腹で槍の先を受け、そのまま反して横へと流す。


「(ジェダも、、転がって来た鉄球をこうやって反らしてたっけ……)」


態勢が崩れたトリトルに一撃が入り、HPが5分の1程ぐんと減る。

なるほど、イベントバトルってそういうことか。



「…………シゲだって」



トリトルの打ち込みを捌きながら反撃、ゲージが半分以下になった瞬間だった。



「ジェダの事、なんにも知らない癖に!!」



ガッッと大きな音、後退りするシゲの目にうつるトリトルは……



「みんなだってそうだ!!勝手に、、越えられないと決めつけてっ!!」



もう、問題児ではなかった。



「誰も何にも知らない癖に!!!」



等身大の、、一人の騎士に憧れ追い付こうとしてもがく、、年相応の少年の姿だった。



「うん。全然知らない。でも、少し一緒にいただけで、どんな人かわかる、そういう男だったよ」



あの日、彼との会話で少しだけ本当の勇者に近付いた気がした。



「でも、俺が彼を語る事だって、烏滸がましいと思ってる」



苔むした聖剣が、光る。



「  」



その技は、知らない技だった。


なんて名前を言ったかも正直覚えていない。


「!!?」


いつものように放った凪払い。のような……。

自分で放ったはずだけど、本当に自分で放ったのか…。


突風のような、、光を纏った一撃。


気が付いた時にはトリトルが宙を舞っていた。


「勝負あり」


ネプチューンの声が響き渡った。


「トリトル。無理に背伸びして歩き続けると、しんどいんじゃない?」


トリトルに背を向け、アリア達の待つ方へと向き直る。


手の中の聖剣は急速に光を失っていく。


「……今の、なんだったんだろう」


答えは、まだ出なかった。


もう、聖剣は抜いた時とかわらない、苔と錆にまみれていた。




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