女神EP
「あの、穀潰しの初代が……、はじめて仕事をしたらしいぞ」
「大丈夫なの?色々とやらかしてそう……」
「むしろ、地球が滅亡するのでは……」
聞こえておるぞ、そんな事を思いながら……
テレビ画面へと視線をうつした
「妾が操作出来ないのは、確かにやらかしたやも知れんなぁ」
それは、一体いつだったのか……
「転生の女神?面倒くさいのぅ」
どこから来たのか
誰から生まれたのか
その謎は解明されぬまま
「転生の方法……」
己の気に入った人間を
己の好きな場所へ転生させる
「気に入った人間って、これか?」
積み上がる、今後亡くなるであろう沢山の人の書類の山
一枚、手にしたが……開かれることはなく山へと戻る
「気に入った世界とはなんじゃ」
小説、漫画、アニメ、携帯ゲーム、そして不思議な物体が目に留まる
「これは、ゲームというのか……」
画面に齧り付くように1つのゲームに没頭し…、そしてクリアして
また一つ、更に次、次、次……
無限のようにあるゲームにのめり込む
『女神よ……そろそろ仕事を……』
どこからか聞こえた声に耳を傾ける
(傾けただけ)
「妾は今忙しい。これをクリアしたら考える」
(考えるだけ)
そうこうしているうちに、また一人…転生の神が誕生した
妾の事は諦めたのだろう、それで良い
「仕事してる時間が勿体無いでな、引き継ぎなどないぞ。なんせ妾は一人だって転生させた事がないのだから」
「威張って仰られる事ではないかと…」
転生の書類を新人に押し付けると、今手にした新たなゲームの攻略本を片手に……再びゲームの世界へ。
「………お気に入りのゲームに転生はさせないのですか?」
「話し掛けるな馬鹿者。気が散る。あと、ゲームは自らの手でクリアするから楽しいのだ」
「はぁ……。そんな物ですか」
後任の神はあまりゲームには興味がないとみえる。
まぁ、思わなかった事も……ないと言ったら嘘になるが……。
「お主もやってみたらわかる」
そしてそこから…、気が付くと更に何年か…いやもっとか。
ざっくりとだが……
まぁ、それなりに経過した頃だろう
後輩の転生の神は更に増えていた
「………穀潰しの初代。ふむ、悪くないアダナじゃ」
そしてあの日も、発売よりも先に手にした新作のソフト【勇者とクリスタル4】
もちろん、前作3つは完全に網羅したし、やり残しはない程やりつくした、5年ぶりの待望の新作だ。
「ふっ、神特典じゃ」
1ヶ月も速く手に入れてやったわ!凄かろう!
「しかも最新機種。映像が神!」
女神が言うのだから間違いない!
ん?金はどこから?野暮な事を聞くでない
何の為に後輩がせっせと仕事を…それ以上は言うまい
そんな事を少しばかり思ったが…
本格的にプレイする事、5周目。
「やはり、龍騎士回りが…。不本意だが仕方あるまい」
机から攻略本を確認もせずに手にした、その瞬間。
「………なんじゃ、攻略本ではないではないか」
一人の男のプロフィールが書かれた書類だった。
普段であれば、机に投げたであろう、、転生者リスト。
「………ゲームを生まれてこの方知らず、ブラック企業で働き過労死」
そんな人生、実に勿体無い!!
なになに、、親がゲームは害だと言ってたのを鵜呑み!?
なんとそんな生き物がこの世に存在しておったのか!?
全く、ゲームはそもそも害のあるものではないというのに
「なんじゃ、二枚も書類を取っておったか」
そして、その下にあったもう一つの書類
「ゲーマーで、、勇者4を購入した帰り道に交通事故死、なんと不憫な……」
なんの因果か、歯車は噛み合った
ほんの少しの興味
あの日の事実は……そんな些細な出来事だった……
「転生など妾もはじめてやったのじゃ。多少の、こう、、なんやかんやは大目に見てもらうとして……」
すでに思い当たる事がないわけではないが、今さらどうにも出来ない。
「元の主人公がどうなるとか、そんなの説明書にはなかったではないか…」
ボソッと呟くその文句も、誰かが聞いているわけでも咎められるわけでもない。
なので、深くも考えない。次の教訓にするだけ。
「さて。あの二人は、どんなラストを妾に見せてくれるのか、楽しみだのぅ」
そう言って女神は再び…、テレビの前に座った




