アリアEP
「アリアって何の料理が好きだっけ?」
その一言は……
私の意識を覚醒させるに十分な言葉だった
「ねぇ、シゲ。貴方は誰?」
ほんの小さな小さな小さな、、そう。すごく些細な違和感だった。
私の勘違いだよね?そう思う程のこともないような…、ほんの些細な違和感。
「アリア」
そんな呼び方だったかな……。
「でさ」
そんな笑い方をしただろうか?
「…高い!」
そんな事を言う人だっただろうか?
「俺が勇者…」
貴方は、そんな一人称だったかな?
モンスター、そんなに怖がる人だったかな?
そんなに……お喋りだったかな……?
「いらん武器防具は売れるで」
「え!そうなの!?」
「ダメ!!この杖は…、思い入れが…」
「じゃあ、やめとく」
ああ、忘れちゃったのか。そうだよね。
ちょっとショックだったけど昔の事だし仕方ないよね。
でも、そう思えば思うだけ、貴方への違和感は増えて行ったんだよ…。
━━“騎士となるべく”学んだ私たちは魔力操作が簡単だけど、一般のお二人は苦手なのかも知れないわね━━
「(魔力操作が、出来ない?どうして?)」
だって……、貴方は…
「学んだ……。騎士学校みたいなのあるの?」
私が1年居なくなるの、寂しいねって…言ってくれたのに……
それに、、騎士学校を…知らない訳ないじゃない……。
だって、貴方のお母さんは……。
「うわ、何あの凄いデカイ木……」
ねぇ?どうして知らないの??
「マナの木……?」
貴方が、、私に、マナの木の絵本を読んでくれたんだよ……
「……シゲ殿は昔からあんな感じ?」
あの日、そうセピアに聞かれて……
「……うん。そう、昔から………。の、はずなんだけど……」
砂嵐のような…、貴方との記憶が…言葉にならなくて…
「はず、ですか?」
「あのね、セピア。シゲの事なんだけど……」
あれ?私、貴方の事は…シゲって呼んでなかったよね?
だけど、あの後すぐに目の前が……暗くなって
気がついた時には……もうその事は気にならなくなってた……
「へえ~、美味しいね」
頭の中を砂嵐のような、わからないけれど……
「…………あれ…、ドラゴンの、、肉?」
そんな感覚が襲って来たの
わからない、不快感…
それが何だったのか、さっき全部思い出したよ……
「ドラゴン…シチュー?」
頭の中のモヤモヤが、急速になくなって……
在りし日の記憶が蘇ったの…
『皇国にはドラゴンシチューって料理があるんだって~』
だって貴方は…、、
『どう?無理?』
『え?僕に聞いてる?』
ドラゴンが大嫌いだったじゃない!!!
『無理無理。僕、竜種の肉は苦手なんだ』
ねえ?
貴方は誰なの?
シゲは動きを完全に止め、隣の凍慈からは生唾を飲み込む音が響いた
「……」
その背中は静寂を保ったまま、でもそんなに長い時間ではなく。
振り返った時、[貴方]はそこにいた。
ああ、あの、いつも感じる違和感
[……アリア、どうしたの?“僕”は“ここに居る”よ]
雷が落ちたようだった。
そっか。そうだよね、、貴方はいつもそこにいたんだね。
[ほら、覚えてる?君がお転婆で。6歳の時にウルフの子供を村に連れて帰ってこっそり育ててた事があったの]
[覚えてるよ。大騒ぎになっちゃったよね。貴方が、、間に入って……]
あのウルフは今でも村の近くでゴブリン退治してくれてるんだよ、、私、知ってるんだから…。
[10歳の誕生日に、君が杖を欲しがった時のおばさんの顔ときたらさ。私は冒険者になるの!って、箒を振り回してたよね]
[うん。うん]
貴方はこっそりとなり町に行って…。
私にこの木の杖を買って来てくれたんだよね…。
[売りたくないって言ってくれて、嬉しかったよ]
そっか、貴方はちゃんと、、覚えてたんだね。
[騎士学校行くのは凄いゴネて、大神官様が困り果ててたよね]
[…………貴方と、、離れたくなかったから]
[でもね、僕は…誇らしかった。僕の母の後を引き継ぐ君が…とてもね…]
[……うん]
[マナの木を君と見れて良かった。絵本より、立派だったね]
ぎゅっと唇を結んだアリアに微笑みかけた彼は、アリアが知っている勇者だった。
[貴方が、いつも読んでくれたでしょう?楽しみにしてたんだよ、本物を……貴方と見るのを……]
風が二人の合間を縫うように吹き、少しの沈黙が流れる
[まぁ、ドラゴンの肉は、口にしないに越したことはないけどね]
[やっぱり、まだダメ?]
[うーん。まぁ、僕の口には合わないかな]
あはは、と笑い合う二人
ああ、私が好きな…貴方の笑顔だ……
[アリア。まだ…、ルビーのタルトは好き?]
[うん、大好き!]
貴方が……私の好きな食べ物を…忘れるわけないよね
[大丈夫だよ。僕はいつだって君の側で君の事をみてる]
[うん]
[僕は、この瞬間だけは……君と一緒だから]
[そっか、そうだったんだね]
帰らないで…。その一言は飲み込んだ。
「アリア」
だから、シゲ。
そして凍慈兄さんも、だよね?
知ってたよ、凍慈兄さんも、、違う人だって…。
思い出したの、、そんな口調じゃなかった事を…。
どうしてこんな大事なこと、忘れちゃってたのかな…
カーバンクルと契約したあの日
『なんだ、あの異物は』
そう呟いたカーバンクルの言葉の意味が……、今わかったよ。
「ごめんね、シゲ、変なこときいちゃって」
ごめんなさい。
二人とも、、そんな顔しないで。
もう、意地悪な事聞いたりしないから。
━だって、シゲの中に貴方はちゃんと居るってわかったから━
「旅の終わりが近いのかなぁ、ちょっと不安になっちゃって!」
ねぇ、邪神が消えたら…。
この旅の終わりが訪れたら…。
どうなっちゃうんだろうね。
12話、29話、45話、54話、99話、100話、115話
この辺りの伏線回収話となります。
また、ムービー内での一人称「僕」は、変換ミスではありませんm(__)m
この辺りは頑張って設定考えて、初期に作ったエピソードなので、ようやく辿り着いたなぁ~と、感慨深いです。
残された未回収の大きな爆弾エピソードは残り2つかな、そろそろ最後が見えて参りましたが、ラストまでよろしくお願いいたしますm(__)m




